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大貝博美プロの麻雀マナー講座 第9回

大貝博美プロの麻雀マナー講座 第9回

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 ~「麻雀界 第12号」より転載~ 

 今号では番外編ということで、麻雀プロに対しての心くばりや、思いやりについて大貝プロに書いていただいた。
 麻雀プロだって人の子、やはり傷ついたり、どんな相手かわからない人の発言は怖いものなのです。

 

 某動画サイトで生中継された女流プロによるビッグタイトル戦決勝で、ある出来事が起こりました。そのシーンをたまたま目にして、黙っていられなくなり、予定していた仕上がり間近の原稿を放り出して急遽書いたのが今回の内容です。表題と内容が一致しないようでもありますが、悪しからずご理解ください。

ミスをしない人間はいない

 その団体における女流プロの頂点を決める全8回戦のこの決勝、6回戦までのスコアをざっと記しておきましょう。

 こうした大舞台は初の経験となるAプロが首位でプラス60ポイント、二番手にはその実力を誰もが認めるBプロがプラス50ポイントで続きます。

 着順ひとつにつき20ポイントの差がつく順位点システムならば、これは「ほぼ並び」と言ってさしつかえない点差。さらに二度目の優出となるCプロがプラスひとケタの三番手、残り2戦の頑張りようによってはまだまだ届く距離にいました。そして意外や最後方に置かれてしまったのは、前年の同タイトルから始まって直近の女流戦を総ナメにしたディフェンディングチャンピオン・Dプロ。

 そんな形で迎えた7回戦、やはりと言うべきか、この一戦も好調者二人が場をリードして進んでいきます。そして南1局、Aプロの親番で事件は起こりました。この局をむかえた時点でBプロがトップでAプロが2着、その差は10000点ほど。供託リーチ棒が2本ある親番となれば、これは疑いなく勝負どころです。 

 ところが初の決勝という大舞台の大詰めで、極度の緊張状態にあったに違いないAプロは、ここでノーテンリーチという大失策を犯してしまったのです。

 すぐ牌姿の勘違いに気づくも後の祭り、不幸にして流局となった時点でチョンボの裁定が下され、この7回戦終了後にマイナス40ポイントのペナルティが課せられることになりました。

 プロといっても一人の人間、ミスをしても不思議はありません。ましてや彼女の場合、①初の檜舞台 ②あと2戦と迫りくるゴール ③実績豊富な対戦相手へのリスペクト ④『勝てるかもしれない』という高揚感 ⑤当面の敵にリードを許してしまった焦り ⑥テレビカメラに囲まれての初対局などなど、心揺さぶられる条件がたくさんあったわけです。

 ⑤までしか知らない私ですが、それでも極度の緊張に陥るものです。加えて⑥では、その苦しさは想像もつきません。そんな中でのミスは、誰が責められるものでしょう。

 ただ残念だったのは裁定が下った直後の局。まだショックから抜け切らない彼女は、Bプロのリーチに対して腰が浮いたような打牌で、致命的とも思える満貫を献上してしまいます。

 表情にも動揺が隠せなかった彼女、『なんとしてもこの半荘をトップで終えなきゃ』という気持ちが先走ったのでしょうか。

 結局この放銃が響き、彼女の7回戦は僅差のラスになりました。残すはあと一戦。ペナルティを受けてやや離れた三番手に後退したAプロでさえ順位差二つプラス10000点余の点差、まだチャンスが潰えたわけではありません。しかし平常心を取り戻すにはあまりに短すぎた休憩時間、最終戦の彼女にほとんど出番はありませんでした。

 彼女が描いた夢は、悲しいことに残酷な形で終わってしまったのです。ちなみに優勝はBプロ。いったんはCプロに逆転を許すも、オーラスの親で差し返した見事な勝利でした。

プロも傷つく心がある

 私はAプロとの面識はほとんどありません。口を利いたことも皆無と言っていいほど。したがってとりわけ彼女に肩入れして観ていたわけではありませんが、こんな形の負け方は観る側にとってもつらいものです。彼女の痛みを共有された方も少なくなかったことでしょう

 では私は何に対して筆をとったのかというと、彼女の失策やその後の打ち方に対するものではありません。彼女は心を乱しながらも顔を上げ胸を張り、今できることを精一杯やったと思っています。私が気になったのは、視聴者からの心ないコメントなのです。

 中継をご覧になった方々はご存じのはずですが、この動画サイトの画面は、視聴者のコメントがリアルタイムで流れます。この内容があまりに冷たかったのです。

 彼女がノーテンリーチをかけてしまった瞬間から流れたコメントのうち、同情的だったものは数えるほど。残りは罵詈雑言や誹謗のたぐいでした。この中継の視聴者であるからには、普段麻雀に勤しんでいることでしょう。そういう人々なら誰しも失敗の苦い経験はあるはず。そんな人が、同じく麻雀を愛する者の失敗を悪しざまに言い立てることはいかがでしょうか

 今度の件で、インターネットを通じての対局を放送することが無くなってしまう可能性を懸念しているのは私だけでしょうか。もし私と同じように不快に思う人たちの声が大きくなり、動画配信サイドの腰が引けてしまったらどうなるでしょう。もし各団体の上層部が「心ない人々の声から選手を守らねば」という結論に達したら、絶対ないとは誰にも言い切れませんよね。

 『いい麻雀を見せたい』とカメラの前に座る対局者が思っているにもかかわらず、結果が逆に出ることはあるでしょう。そんな時に書かれるインターネットの匿名コメントは、発言している人が思っている以上に対象となる人は重く受け止めてしまうのです。なるべく暖かい目で観戦してもらいたいと思うのですが、いかがでしょう。プロであれファンであれ、雀力と人間力をともに伸ばしていってもらいたいものです

Aプロの未来に幸あれ

 その翌日のこと。AプロがあるSNSに『観戦してくださった皆様へ』という表題の文章を載せました。

 その中で彼女は期待にそえなかったことを詫びるとともに、たくさんの誹謗中傷が届いたことを明かし、その後こんなふうに綴っています。

「(『辞めろ』という声があるけれど)諦めたくない。天国のおじいちゃんと最後にした約束だから、簡単に諦めるようなことはしたくない

 ちょっと救われた気分になりました。頑張れAプロ。あなたの今後の麻雀ライフがより豊かなものになりますように。

著者:大貝博美
プロフィール:昭和35年、東京都生まれ。101競技連盟所属。第22・30期王座。ファミレス店店長を経験後、競技麻雀に惚れこみ、麻雀プロの世界に足を踏み入れる。

出展:本ページは(株)日本アミューズメントサービス様からの転載許可に基づいて掲載しております

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