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七夕の夜、 2人の運命を分けたリーチ棒。【シンデレラファイト シーズン5 GroupB #1 担当記者・中島由矩】

七夕の夜、 2人の運命を分けたリーチ棒。【シンデレラファイト シーズン5 GroupB #1 担当記者・中島由矩】

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今大会を黎明期からずっと支えてきた3人のシンデレラが7月7日、最後の舞台…いや最後になるかもしれない舞台に立つことになった。いずれも入会7年目の選手たちだ。

東3局1本場に、頭1つ抜け出したのは、ラストイヤーではない唯一の選手、4年目の鈴木楓。1枚目の[白]ポンから発進してマンズに寄せると、カン[七]待ちから[四][五][八]m待ちに変化させ、下家の廣岡璃奈から打ち取る。7700は8000のロンアガリとなった。

4年目の鈴木楓を走らせ、ラストイヤー3人でラス脱落回避争いをするわけにはいかない。南2局1本場、ラス目の廣岡が8巡目に先制リーチを放つ。

しかし、ここは梶が危険牌を勝負して立ち向かい、廣岡がツモ切ったラス牌のペン[⑦]でロンアガリ。7700は8000を手にし、鈴木楓をかわしてトップ目に立つ。

オーラスは、梶がほぼトップでの通過を手中に収め、廣岡と海保がラス脱落回避争いをする展開になった。

【南4局0本場】

東家・廣岡璃奈 11600
南家・海保さよ 16100
西家・梶梨沙子 47500
北家・鈴木楓 24800

トップ目の梶は、 2着目の鈴木楓に12000以上を放銃すると、トップでの次戦進出ができなくなる。裏を返せば、鈴木楓以外になら12000を放銃してもトップを守れるということだし、鈴木楓に8000を放銃してもトップでこの♯1を終えられるということだ。

2着目の鈴木は、トップでのこの♯1通過のために、三倍満ツモが必要。親の廣岡に4000オールでもツモられようものなら、ラス脱落も見えてくるだけに、ここは軽くアガって2着キープも視野に入るだろう。

3着目の海保とラス目の廣岡は4500点差。

この4500点をめぐって、海保と廣岡の血みどろの戦いが幕を開けた。

廣岡が手にした配牌は上の通り。役牌の[発]がトイツで入っており、ドラの[9]が1枚。できればドラを重ねて打点を見たいところだが、連荘できなければラス脱落は免れない。

果たして、海保の手から[発]が放たれ、運命のルーレットが回り出した。

廣岡は当然のポン。ドラを切り飛ばして、1500のテンパイに構える。一撃でまくれなくとも、海保にプレッシャーを与え、次局以降のどこかで大きく突き放したい。もちろんその先には、トップによる通過も見据えている。

廣岡にとっては最高の、海保にとっては最悪の、直撃があったのは廣岡がドラを切ってから4巡後のことだった。海保の点箱から1500点が支払われ、それが廣岡の点箱に入る。2人の点差は、4500点から1500点に縮んだ。

【南4局1本場】

東家・廣岡璃奈 13100
南家・海保さよ 14600
西家・梶梨沙子 47500
北家・鈴木楓 24800

廣岡は、前局と同じく、[発]トイツ・[北]トイツの配牌をもらう。解説の渡辺太さんは、「前局の再放送ですか?」とコメント。[発]を鳴くことができれば、あとは1500は1800に向かってまっしぐらだ。

二副露目もできて、テンパイ1番乗りを果たした廣岡。

一方海保は、

◾️[中]
◾️イーペーコー
◾️チートイツ

あたりを視野に入れつつ進行。押し返しを目論む。

「勇ましい」と表現すると、海保および海保のファンに怒られるかもしれない。しかし、相手の一挙手一投足を見逃すまいとする鋭い視線は、入場シーン以上に切れ味鋭く、さらに「美しさ」もまとったように見える。

海保はこの後、ツモリ四暗刻のイーシャンテンまでこぎつけ、あわやトップでの♯1通過に手がかかったものの、

最後は、[⑤][⑧]待ちに広げていた廣岡が、ツモアガリ。500は600オールで3着に浮上した。

【南4局2本場】

東家・廣岡璃奈 14900
南家・海保さよ 14000
西家・梶梨沙子 46900
北家・鈴木楓 24200

シンデレラファイトシーズン5は、先週DAY1の♯1〜3までが行われ、これが4試合目になるが、4試合目にして、海保は最もラス脱落回避しやすいポジションのラス目ということになる。理由は、座順と点棒状況にあった。

海保がアガリに向かえば、利害関係が一致する梶と鈴木楓は応援に回るだろう。

唯一海保とライバル関係にあり、なおかつ上家にいて簡単にチーさせるわけにもいかないのは廣岡だが、その廣岡は廣岡で、流局時はテンパイを入れていないと、テンパイ料で着順が変わる。海保に対して牌を絞りつつ、自らはテンパイを入れる。そんな芸当ができるものだろうか。その立ち回りは極めて難しい。

しかし、廣岡にとって白馬の騎士が現れた。鈴木楓に門前でテンパイが入ったのだ。役がなく、ツモった時のみアガれる形ではあるが。ドラもなく、300・500は500・700では、廣岡と海保の900点差がひっくり返るまでには至らない。

そんな中、親の廣岡にテンパイが入る。ツモれば6000オールとなる大物手を、廣岡は積極的にリーチといった。このリーチ棒で、いったんラス目に落ちることは承知の上。さらに、打ち出された[④]は形上、鈴木楓がロンしうる牌だが、役がないためロンアガリできない。ギリギリの戦いが、ここにはあった。

海保はツモリ四暗刻のイーシャンテンまで歩を進めたが、ここまで。テンパイ・ノーテンで点差が開くのは辛いが、廣岡の出したリーチ棒は次局供託になる。さほど大きな条件にはならないのだ。

最後は廣岡と鈴木楓の二軒テンパイで流局。勝負はさらに続く。

【南4局3本場・供託1本】

東家・廣岡璃奈 15400
南家・海保さよ 12500
西家・梶梨沙子 45400
北家・鈴木楓 25700

海保は、1000は1900に供託1本も入れば、それが梶からでも鈴木楓からでも、廣岡と同点になる。そうなった場合、規定により、東家スタートの海保は♯3に進み、北家スタートの廣岡はラス脱落となる。

海保の配牌は上の通り。仕掛けを考慮するなら、

◾️123や234の三色同順
◾️ソーズの一気通貫
◾️[中]

などがあるだろう。海保はそのどれに対しても不要なオタ風の、そしてライバル廣岡の風牌でもある[東]から切り出していった。いざ、勝負。

一方の廣岡は、[発]を暗刻にした十分形。ドラ[八]の受け入れや[赤⑤]もあり、今後の展開次第では、本当にトップ通過をねらえるかもしれない。

鈴木楓がツモ切ったドラの[八]に、廣岡が機敏な反応。前局のリーチから一貫して、あくまでもトップでの♯1通過を視野に入れる。

廣岡の仕掛けを見て、鈴木楓がツモ切りリーチに踏み切った。

「私がやるから、璃奈ちゃんはオリてて。」

とでも言っているのだろうか。内容や言葉遣いはともかく、牌による会話は2人の間で確実にかわされていた。

さあ、ここでこの観戦記のヒロインに登場してもらおう。海保さよ、その人である。[2]は河に2枚切られており、本来ならばツモ[3]を引き入れて、[6][9]待ちのリーチを打ちたかったところに、メンツができるツモ[1]。嬉しいような、そうでもないような。

[7][8]待ちにしたり、打[8][7]待ちにするくらいなら、いっそ打[9][7][8]の並びシャンポン待ちを選択するだろう。問題はリーチ宣言の有無だ。

現状3着目の廣岡とラス目の海保の点差は2900点。これは、海保・鈴木楓の二軒テンパイで、梶・廣岡がノーテンなら逆転して試合終了となる。野球で言うとサヨナラホームランのようなものだ。

しかし、役がないため、リーチ宣言しないとなると、鈴木楓から[7][8]がツモ切られた場合、ロンアガリができない。

リーチせず、アガリを逃した時に後悔するか、リーチし、流局した時に後悔するか。熟考に熟考を重ねた結果、海保は後者を選んだ。

「リーチ。」

そして流局。

この日たまたま居合わせた麻雀の神様は、海保ではなく廣岡に微笑んだのだった。

こういうことを憶測で語るのは良くないのだが、会場を後にする海保の表情から後悔があまり感じられない。

もしかしたら海保にとって、リーチせずに鈴木楓から出る[7][8]を黙って眺めているのが、本当に心の底から嫌だったんじゃないか。

(私はあの時、なんでリーチしなかったんだ…。)

5年後、10年後、いつまでも引きずってしまう、この試合がそんな敗戦になりえたんじゃないか。だからこそ、流局の場合は舞台を降りる覚悟を決め、リーチ宣言したのでは。そういう感想を、筆者は抱いた。違ってたらごめんなさい。

GroupB♯1で、トップを獲得したのは梶梨沙子。次戦免除でBEST16へと進む。2着の鈴木楓と3着の廣岡璃奈は、♯3でのリベンジを誓う。

無念のラスになってしまった海保さよは、ここまで。苦しい展開にも決して心は折れず、最後まで自分の麻雀を貫き通し、惜しまれつつこの舞台を降りる。

東場はトップ目を直撃して独走を許さず、拮抗した戦いに。南場に入り、やや縦長の展開になると、たった1牌を鳴くか鳴かないかの選択が、リーチと言うか言わないかの判断が、大きな差になってシンデレラたちにのしかかってきた。

海保さよが最後に発した「リーチ。」という言葉が、視聴者の目にどう映り、麻雀愛好家の耳に残り、海保ファンの胸を打ったのか。久々に誰かと麻雀談義がしたくなった、そんな夜だった。

Day2結果レポート

#2,#3観戦記

高津柚那が目指す道〜大本命のラストイヤー〜【シンデレラファイト シーズン5 GroupB #2 担当記者・坪川義昭】

負けたときのほうが、勝ったときより強くなれる【シンデレラファイト シーズン5 GroupB #3 担当記者・神尾美智子】

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