1/30(月)、2/2(木)21:00よりAbemaTV「麻雀チャンネル」にて放送された、RTDリーグ2018 WHITE DIVISION 第1節 1-4回戦の様子をお届けします。
レポートは、鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)がお送りします。
▼▼▼1回戦▼▼▼
やはり、注目は初参戦の和久津だろう。
「超攻撃アマゾネス」というキャッチコピーからもわかるように、和久津の麻雀は攻撃に比重が置かれているように言われる。
競技麻雀の世界では、しばしば攻撃に特化したような選手が現れるが、和久津の攻撃はそういったどの選手とも違うタイプである、と私は思うのである。
その違いが、1回戦の東1局にいきなり表れた。
オヤの平賀がスーアンコのイーシャンテンから、をポンしてタンヤオトイトイのテンパイを組んだ。
この直後に掴むドラの。これをどうするか。
平賀の捨て牌は濃く、タンヤオでないこともしばしばありそうである。
そんな状況下で、このドラをどう扱うかが、その打ち手の攻撃性を表すことになると思われる。
まず最初に考えるべきは、テンパイした場合にを切ってリーチにいく構想があるのかないのかだ。
例えば、昨年までRTDリーグに出場していた滝沢は、テンパイしてもドラを切らない選択も多く持っているため、この時点ではを切らないという選択になりそうだ。
逆に、テンパイ時にを切る腹積もりなのであれば、もうここでツモ切ってしまう手がある。というより、切るならもうここ!という打ち手が多いのではないだろうか。
一方の和久津はというと、打。
いったんドラを手に留める。
局面は進む。
ツモなのだが、その直前に平賀がツモ切ったをチーしてテンパイを組む選択があった。
前巡のチーは難しいとしても、このからならチーしても良さそうだ。
かわしにいきながら加点を目指すのであればチーになる。
例えば、BLACK DIVISIONの小林は、このに食いつくことがありそうな打ち手として名が挙がるだろうか。
しかし、和久津はを鳴いていない。
このを鳴かなかったということは、価値の高いテンパイ(=リーチ+欲を言えばタンヤオ)で初めてドラを打ち出すということである。
では、ツモ。
ここでを切る選択があるのではないか。
例えば、昨年の麻雀駅伝で活躍した園田は、「を切ってリーチにいく気があるのであれば、遅くともここではを切りそう」と言う。
ヤマに残っていそうとはいえが薄くなり始めた今、このを残すとやでも更なる好形+打点(三色やピンフ)が確保できる。
なるほど。攻めっ気の強い園田らしい選択だ。
一方、和久津は、このもツモ切っていく。ここでもを切らない。
最後はこの手牌。
自分の目からが3枚見え、が2枚見えたため、このによるフォローはかなり嬉しい。
よく、和久津を評して「女流ヒサト」と言われることがある。確かに攻撃していることが多い打ち手という意味では同じかもしれないが、私にはこの2人の攻撃性がかなり違うように見えるのである。
例えば、佐々木は、もうを打っているかもしれないし、少なくともこのツモではを打つイメージだ。
それほどに真っすぐで、シンプルに押し続けられる槍のような攻撃性、それが佐々木。
一方の和久津は、それなりに打点が見込める手牌になったときに前に出られるよう、相手との間合いを計っていく。
体勢を入れ替えながら戦況を見続け、はまったときに前に出る。
粘ってファイティングポーズを取り続ける柔軟な体術的攻撃性、それが和久津であるというのが私の見立てである。
すなわち、佐々木と和久津を比較すると、次のようになるのではないだろうか。
【佐々木】 ストレートな手作りであるため、打点は高くなりにくく、終盤に押し返せないことが多くなる。一方で、序盤~中盤の攻撃回数は増える。
【和久津】打点を見ることで相対的に価値の高い手牌を作るため、終盤に押し返せることが多くなる。一方で、序盤~中盤の攻撃回数は減る。
したがって、和久津を観るときには、終盤の深い踏み込みもそうだが、そこに至る打点意識にもぜひ注視していただきたい。
以上のことを踏まえると、あと1枚しかないとはいえ、リーチ高目ツモでマンガンの手牌ができたという事実が和久津にとっては重い。
そのテンパイこそが、和久津がドラを抱えてファイティングポーズを取り続けて迎えた攻め時なのであり、唯一ドラの切り時なのである。
そして、結果は一発ツモ。
最終形が同じになっている打ち手はいるだろう。ところが、和久津のこの捨て牌と同じになっている打ち手は意外と多くない。
それが和久津の個性である。
超攻撃アマゾネスが、らしさ全開のマンガンでRTDリーグ2018デビューを果たした。
しかし、和久津はここからRTDリーグの洗礼を受け、3着で初戦を終えた。トップはたろう。
たろうは、345の三色イーシャンテンにを引くと、を打ち出した。
これはたろうらしい柔軟な1打。
この手牌、345の三色に決めてしまうと、かなり融通が利かない。
例えば、やなどを引いたときにツモ切るのかという話である。
それよりは、三色は崩れるが、いったんタンヤオにしておいて、その後の変化という抽選を受ける方がかなり有利だろう。
すると、、と引き、あっという間にこのアガリ。
三色に固執してやを切っていると、拾えていないアガリである。
たろうが見事なアガリで初戦をトップで飾った。
▼▼▼2回戦▼▼▼
2~4回戦では、3回連続でオーラスでの逆転が続いた。
2回戦では、まず勝又。
これは切りリーチで問題ないように見えるが、勝又の選択は切りのダマテン。
が3枚見えた使いにくいで、アガリを取りにいった。
対局後、勝又は「ここで5800でもアガることができればトップの可能性がかなり高くなると思った」と答えたが、その説明では若干足りないのではないかと思われた。
純粋にトップを取りにいくのであれば、やはりリーチの一手だろう。
しかし、例えば暗に「2着以上を確定させながら」トップの可能性を上げるという意味で言ったのであれば確かにその通りで、ダマテンになりそうだ。
結果、2600オールで2着以下を十分に引き離し、目論見通り下位を競らせる点数状況に仕立て、慎重にトップを取り切った。
▼▼▼3回戦▼▼▼
続く3回戦では、石橋がオーラスにツモで逆転トップ。
たろうの2連勝を防ぐと同時に、初戦のラスを帳消しにする。
▼▼▼4回戦▼▼▼
4回戦では、平賀がオーラスでオヤ番を活かした逆転劇。
この点数状況でオーラスを迎えると、3軒リーチを制して佐々木からで2900。
すると、次局に興味深い手順が出る。
勝又がをポンしたところなのだが、みなさんならここから何を切るだろうか。
ホンイツを狙うならソウズかピンズ、真っすぐに打つとしてもといったところか。
平賀の選択は打。
平賀「あの点数状況込みで、この手はホンイツでは間に合わない。とすると、切るのはかになるが、が2枚切れで薄くなっているため、役牌をポンしたらどうせを外すことを考慮し、無理なく345の三色を狙える可能性を残して打とした」
これは面白い選択である。
まず、選択肢にが入っていること自体が面白い。
現状が薄いとはいえ、今後やも薄くなる可能性があり、その場合にを活かすことも考えれば、しか選択肢に挙がらない。
しかし、接戦という点数状況込みで、鳴き三色による1翻アップの価値を高く評価したのである。
その点が素晴らしい。
結果、三色にはならなかったが、達也のテンパイ打牌を捕えた。
確かに、あそこでホンイツに大振りしていては、間に合わなかっただろう。
高打点の印象が強い平賀だが、実はオヤ権をつなぐ1500の作り方が非常にうまい。
そんな一面にも注目だ。
対局後、トップの平賀が私のところにやってきて一言。
平賀「メガチェン(※平賀はラスを引いたら気持ちを切り替えるためにメガネをチェンジする)忘れたのにトップ取っちゃった」
知ったことか。
笑顔でスルーを決め込んだ。
RTDリーグ2018がついに開幕。
初参戦の和久津にとっては厳しいスタートとなったが、この最高峰の舞台でも全く動じないのはさすが。アマゾネスの体術に見惚れよ。
■2/5(月)21:00からWHITE DIVISION 5、6回戦、2/8(木)21:00からBLACK DIVISION1、2回戦をAbemaTV 麻雀チャンネルにて放送予定
https://abema.tv/channels/mahjong/slots/9XBk5WcHqJb8vb
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藤田晋invitational RTDリーグとは
2014年に麻雀最強位を獲得した藤田晋が、団体の垣根を超え、今最も強いと言われている麻雀プロを招いて開催される長期リーグ戦。
予選ではBLACK DIVISION・WHITE DIVISIONそれぞれ8名ずつの選手が出場し、各ブロック予選全54回戦をすべて放送する。
前代未聞のスケールで開催される今大会は、名実共に最強の雀士を決める戦いと言っても過言ではない。
毎週月曜日・木曜日の午後21時から最新対局を放送!!
(日曜日のお昼に、その週の最新対局をまとめて放送)
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