麻雀卓を販売する株式会社アルバンが2015年12月に、『デイサービス ラスベガス板橋店』をオープンしました。デイサービスとは、介護を必要とする人が、昼間に日帰りで利用できる通所介護サービスのこと。『デイサービス ラスベガス』は、その名の通り、ラスベガスをイメージした新しいデイサービスとして注目を集めています。
店舗の中には、本場さながらのバカラテーブルやカジノチップはもちろん、麻雀やパチンコ、カラオケルームなど、日本人に人気のゲームも設置しています。
どうですか。店内はとても高齢者施設に見えませんね。
「あえてそうしているんですよ」
そう語るのは、今回、横浜築地店でお話を伺った『デイサービス・ラスベガス』を運営する日本エルダリーケアサービス取締役会長、森薫さん。
「デイサービスを利用している方の8~9割が女性です。なぜかというと男性は切り絵、塗り絵、貼り絵をレクレーションでやるのは受け入れがたいという方が多いんです。そこで男性が自発的にお店に来ていただけるような施設、私自身も高齢者になった時に行きたいと思える施設を作ろうと思いました。」
「高齢者の方は特に、病気だったり介護が必要であることを『近所の人に知られたくない』と思ってしまう。その結果、適切な介護サービスが受けられないという状況がありました。」
「介護保険が始まった当初からデイサービスをやっていて、従来型のデイサービスも運営していく中で、どうしたら楽しんでもらえるかを10年以上前から考えていました。2011年にアメリカの高齢者の暮らしを視察に行ったときに、『楽しむことは平等だ』というアメリカの文化に触れたんですね。『バリアフリー』って言葉自体が無いんです。スーパーには電動車いすが5、6台置いてあって、日本ではあまりないような光景ですよね。日本は介護保険があって介護先進国だと言われたりしますが、アメリカは介護保険が無くて、すべて自己責任で、社会もそれを認めているという点で日本よりもはるかに進んでいて。それを見て凄い気づかされて、日本だと『高齢者だからこういう施設に行かなきゃ行けない』という固定観念があったのですが。高齢者自身が個人の趣向に合わせて、受けたいサービスを選択出来るべきですよね。」
-----施設ではどのようなサービスが行われているのでしょうか?
「名前は『ラスベガス』ですが、カードゲームだけでなく、パチンコ・麻雀など、多くの方が楽しいと思われているゲームを取りいれています。施設内では『ベガス』という仮想通貨を使用し、体操を行うことで獲得することができます。このベガスはもちろん換金できません。毎日一番ベガスを獲得した方を決めて表彰するので、皆さん真剣勝負されています。表彰されることが家族との会話のきっかけになればいいなと思っています。」
確かに、男性が多くいらっしゃる『ラスベガス』は、女性中心でにぎやかなイメージの『健康麻雀』とは少し違った真剣な空気があるのです。各種ゲームの中で麻雀は一番人気があって、この日は4卓満卓でした。
「高齢者施設っぽい名前だと行きたくないと思いますし、お迎えの車も、従来の白いワンボックスカーではなく、黒塗りの高級車を用意してお迎えにあがります。そうすると大変喜ばれますね。」
「ラスベガスという刺激的な空間を楽しみにして、本場のようにおしゃれをして来られる方もいらっしゃいます。週1回いらっしゃる方が多いのですが、その日が楽しみで、また気持ちが高まってくるのですね。」
介護プランはケアマネージャー(介護支援専門員)と呼ばれる方が利用者やご家族と相談して作ります。利用者がいくら「毎日行きたい!」と行っても、デイサービス以外の介護サービスも必要なので、毎日来るのは難しいとのこと。
「デイサービスだけで全国に40000拠点もあるんです。コンビニと同じくらいあって、そのほとんどが従来型のデイサービスです。4人に1人が65歳、その中で要介護者が600万人もいて、多種多様な人がいるのに、高齢者というだけで従来型の施設に行きなさいと言うのはおかしいと思うんです。みなさん行くところが無い。引きこもってしまう。どんどん要介護度が上がってしまい、介護費用も上がってしまいます。まさに負の連鎖。でも、ここにいると元気に見える。なぜかというと楽しいからですね。一番重い要介護度5から3に改善された人もいます。最初にいらっしゃった時は車いすでした。次は歩行器。今は4点杖ですよ。」
お迎え | ・ご自宅までラスベガス特別仕様車でお迎えにあがります |
健康チェック | ・血圧、体温を測り健康状態を確認させていただきます。 ・快適に安全に楽しんで頂く為に、必要な手順です。 |
くつろぎ空間 | ・高級リクライニングソファをご用意しております。 |
朝食 | ・ご希望の方には焼きたてパンとコーヒーをご用意いたします。 ・新聞や雑誌を読みながらおくつろぎ下さい。 |
運動 | ・スポーツトレーナーが監修したオリジナルのストレッチ運動を行います。 |
施設内通過配布 | ・施設内通過<ベガス>をお配りします。 ・この通貨で遊んで頂きます。(換金はできません) |
イベント紹介 | ・イベントを実施しています。 ・麻にイベントの説明を致します。 |
行動決定 | ・ラスベガスでは何をして過ごすかをお客様に自由に決めて頂きます。 ・何をして一日楽しむかをお決め下さい。 |
レクリエーション | ・各種遊具をご用意しています。 ・ はじめてのゲームはスタッフが説明します。 ・簡単ですので、すぐに楽しめます。 |
リラクゼーション | ・お疲れの際はリラクゼーションコーナーでお休みください。 ・ リクライニング・チェア、ベッド、テレビがご用意してあります。 |
イベント | ・全員で楽しめるイベントがあります。 ・ベガスを賭けて楽しんで頂きます。 |
昼食 | ・お昼に「お食事」のお声がけをします。 ・数種類のメニューよりお選び頂けます。 ・ラスベガスでは食事時間も自由です!お腹の具合に合わせてお申し付け下さい。 |
集計 | ・1日の結果(勝ち負け)を集計します。 ・皆様にお渡しするパスポートに記入。 ・1位の方は表彰されます。 |
お送り | ・お車でご自宅までお送りいたします。 |
-----高齢者が笑顔で楽しくリハビリが出来る魅力的なサービスで、私も高齢者になったら通いたいと思わせるような仕組みですが、これまでにない新しいサービスということで、一部では介護サービスとしては不適切だとして規制する動きもあります。今後規制が広がったりするのでしょうか?
「いま営業している施設の自治体からは、問題無いというお言葉をいただいています。規制の連鎖は無いですね。逆に他の自治体からもっと出店したらいいのにという意見もいただいてます。 出店する時には常に自治体に細かくサービスの説明をしております。」
-----今後どのように展開されていうのでしょうか?
「ありがたいことに、全国から『ラスベガスをやりたい』と『ノウハウを知りたい』いう声をいただいておりますが、自社だけでは限界があるので、『ライセンス・パック』を用意して、ラスベガスの運営に必要な機材やツール、研修を1つにまとめて提供しています。各種研修を用意し、介護施設としての運営方法やレクリエーション運営の教育を提供します。介護事業の経験・未経験問わず対象とし、将来収益性の高い通常規模のデイサービスの運営が可能です。」
麻雀卓はありますが、麻雀店ではなくデイサービス施設なので、『風営法』ではなく『介護保険法』で営業されています。もちろん麻雀卓やパチンコ台を設置して申請しており、警察にも確認済みとのこと。
麻雀をテーマにしながらも、麻雀店以外の新しい営業形態は、今後の高齢化社会を考えても非常に魅力的に感じます。
実際にライセンス・パックを利用してオープンしたアルバンの『デイサービス・ラスベガス板橋』 でお話を伺いました。
『株式会社アルバンケアサービス』として12月1日に開業した『デイサービス・ラスベガス板橋』 。徐々に入所者を増やし、開業後1ヶ月としては他の地域と比べても上々の滑り出しをきったそうです。
アルバンで営業をされていた須浦正裕さんが施設の責任者として営業されています。
「初めて利用者の方から御礼の返答が来まして『凄い楽しかった』と。家族からも感謝の言葉をたくさんいただきました。社会貢献・地域貢献ができる本当にやりがいのある仕事です。」
ここでもやはり「麻雀」が人気。元々麻雀のエキスパートであるアルバンにとって、麻雀をテーマにした事業はお手の物です。
デイサービス ラスベガス板橋店
東京都板橋区徳丸二丁目27番14号 サンパレス徳丸1階
TEL:03-6281-0410
最近メディアに取り上げられることが増えて来た麻雀ですが、実際の麻雀店ではまだまだ実感がわかないというのが現状。
そういった中で、地域貢献・社会貢献が実感できる 『デイサービス・ラスベガス』は、麻雀のさらなるイメージ向上への貢献も大きいことでしょう。
「麻雀」はこれまでよりもさらに「コミュニケーションツール」として活用されていく場面が増えています。
ますます高齢化が進む日本社会において、麻雀店や卓販売だけではない麻雀事業の新しいスタイルが、麻雀業界のスタンダードになる日が来るかもしれませんね。