点数状況を考慮した押し引き判断
現麻本では、点数状況に関しては第3章で、主にオーラスとラス前に限定して取り扱いました。これは、半荘戦の南2局までは、点数状況に大きな偏りがなければ局収支に従って打てばよいという、「科学する麻雀」の局収支理論を元に、南2局以前で点数状況を考慮するのは重要性がさほど高くないと判断したためです。
しかし、大雑把な判断でよいのであればそれでも事足りますが、微妙なケースでどうするかまで押し引き判断を突き詰めていくと、残り局数が十分にある段階でも点数状況の影響が無視できないものになることが現在では分かっています。特に、天鳳のように収支関係なく順位だけが評価され、なおかつ順位点の分布に偏りがある(ラスを引いた時だけマイナスが大きい)ルールであればなおさら点数状況の影響が大きくなります。
平場に関する考察 2 - 数理的麻雀研究サイト「現代麻雀理論」
「特に条件がなければテンパイさえしていれば大半は押しが悪くない、但し、だからこそ、実戦で注意すべきなのは、押し寄りになる要素より、降り寄りになる要素にある。」ということを再三触れてきましたが、点数状況についても同様のことが言えます。確かに基本は、「勝っている時ほど降り寄り、負けている時ほど押し寄り」ですが、実は、負けている時は平たい時と比べてそこまで押し寄りにはならないのです。
何故なら、高打点のテンパイなら、点数状況が平たい場合でも押すことになる一方、平たい場合は降りることも多い悪形低打点のテンパイの場合は、大きく負けている時はあがったところで点数状況はあまり良くならないので、結局判断はあまり変わらないことになるからです(むしろ、僅差で負けている時の方が押し寄りになる)。
また、持ち点がマイナスになるとトビで半荘が終了するルールの影響もあります。放銃してトビになるとその時点でラスが確定しますが、残り局数がそれなりに残っていれば、トビさえしなければ半荘終了時点ではラス回避できる可能性も意外とあります。よって放銃した時にトビの可能性が結構ある場合は、「負けている時ほど押し寄り」とは必ずしも言えません。
もちろん残り局数も少ないうえに断ラスとなると押さざるを得ませんが、そのようなケースは最善を尽くしたところでラスのまま終わることが多いのでミスしてもあまり戦績に影響しません。一方、勝っている時に押しすぎて放銃してしまうミスは戦績に悪い影響を与えやすい。このことからも、実戦では降り寄りになる要素こそ注意すべきであることが言えます。
少しリードしていると局収支ではっきり押し有利な手でも降りがちになってしまう人は、残り局数が多い段階で順位をあまり意識しないことを心がけるべきですが、局収支に従って打つことに慣れている人に関しては、残り局数が十分にある段階でも、もう少し順位を意識した打ち方を心がけた方がよいかもしれませんね。
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