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小林剛はそれを鳴き、鈴木たろうはそれを鳴かない RTDリーグ2018決勝1日日レポート

小林剛はそれを鳴き、鈴木たろうはそれを鳴かない RTDリーグ2018決勝1日日レポート

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10/20(土) 16:00よりAbemaTV「麻雀チャンネル」にて放送された、RTDリーグ2018決勝1日目の様子をお届けします。

レポートは、鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)がお送りします。

 

1回戦:やっちゃうたろうと、やっちゃわない内川

決勝戦全8回戦の初戦は、小林が先制してスタートしたが、たろうが追いかける。

ドラか小三元という高打点を見て、イーシャンテン取らず。

こういう薄っすら高打点が見える手牌では、多くのケースで高打点をやってきたたろう。こういった手牌はお手の物である。

ここでも小三元に仕上げてトップ目の小林を追った。

しかし、初戦の主役は内川。たろうからあっさり12,000を取り返すと、瀬戸熊のリーチに対し、このダマテン。

が3枚切れているため、ダマテンで高目のを狙いにいった。この時点ではもリーチに通っておらず、リーチしてしまっても全くおかしくないが、こういう手牌では抑え気味に打ってきたのが内川。

内川「が2枚切れでもダマテンですね。1枚切れならさすがにリーチしますけど。ああいう手は2,900でもアガれればうれしいんですよね」

たろうとは真逆の「やっちゃわず」に慎重に歩んできた男である。

すると、が通った後に、粘った小林のを捉えて12,000。

準決勝の勢いそのままに、内川が逆転で初戦をトップで飾った。

 

2回戦:たろう得意のツモ切りリーチ、その真意は!?

2回戦では、たろうの得意技・ツモ切りリーチが飛び出す。

こういうツモ切りリーチには必ず明確な考えがあるたろう。4,800という打点十分のリーチを1巡回した理由はいかに。

たろう「そもそも待ちが不満だったんだよね。そこに、前巡、瀬戸熊さんがを手出ししてきたから、がどうなってるのか全くわからなくなっちゃった(メンツで1枚使われているのか、アンコやトイツが固定されたのか)」

たろう「打点ではリーチなんだけど、待ちに不満がありすぎたよね。だけど、次巡に瀬戸熊さんが手出ししてくれて、これでが2枚ってことはないじゃん。3枚ってことは少しあるかもしれないけど、けっこう持ってなさそう。それで不満が少し解消されて、リーチに踏み切れたんだよね」

なんという繊細な感覚だろうか。これをアンカンの後にツモって4,000オール。トップを決めた。

 

2着争いで奮闘したのは小林。

瀬戸熊のリーチに無スジのと押してテンパイを組むと、2軒リーチにを押してツモ!

小林「供託があるから押し。どこまで押せばいいんだろうと思いながら押しました(^^;」と冷や汗をかきながら供託4,000点の回収に成功。

白鳥が供託泥棒なら、こちらは供託deロボ。冷酷に4人テンパイをかわした。

しかし、そんなロボでも迷う局面が到来する。

小林は、2枚連続で打たれたをチーしていない。

「5巡目に仕掛ける手があった」と語るように、確かにこれはチーの一手に見える。メンホンで高打点の可能性を残したいところだが、これをチーしないとかなり苦しい。それならばチーしてしまって、イッツーやチンイツで打点を補う方がよさそうである。

結果、内川のリーチを2,000でさばくことには成功するのだが、小林らしくないスルーには見えた。

らしくなさもあってか、オーラスに内川にまくられ、小林は3着転落となる。

ここで、控室に戻ってきたたろうが、お弁当のサンドウィッチをみつけると、「うっひょー(≧▽≦)」とテンションを上げて早速食べ始める。

これがあの繊細な麻雀を生み出す原動力なのだな、と思うとちょっと笑ってしまった。

 

3回戦:小林剛はそれを鳴き、鈴木たろうはそれを鳴かない

3回戦は、小林の意外な1打で幕を開ける。

カン引きリーチの受け入れを消して打である。ドラのトイツを活かすのと打点が変わらないため、小三元を狙ったものではないと思うのだが・・・

小林「はすごい切り遅れそうな感じしちゃったんだよね。でも、残った牌がになっちゃったから微妙かも。自分が北家でを先に切ってるんだけど、ってあったらから切るタイプだから、が後だと三元牌に警戒がいくよね。だから、をアンパイっぽく持ってたように見えたらいいなと思って、何枚か切れるまで引っ張った。あと、三元牌が全部生牌だから、とあったらから切ってほしいんで、生牌のときにを引っ張ったんだよね」

なるほど。先切りももちろんあるが、を引っ張ることでが先に放たれるケースを増やそうという思考であった。

ここにが鳴けてテンパイを果たした。

対するはサンドウィッチたろう。

小林が仕掛けた直後にを止めてドラを使い切る打。1巡で2枚のアタリ牌を止めて見せる。ただ、これは当然アタリ牌を止めたわけではない。

たろう「間合いを測ってたんだよね」

ツモ切りが続いた後にをポンした小林にテンパイが入っているのかどうか、打点が何点なのか、間合いを測っていたというのである。

そのため、この形からは打

たろう「あそこでを打っておかないともうアガれないと思うんだよね。あれ打っちゃダメかなあ。絞ってオリるとかほんと嫌なんだよね、損だと思うし」

小林がをツモ切ったことにより、ピンズの下も形が確定していることがわかるため、テンパイ寄りに感じる。

しかし、たろうに言わせれば「テンパイ確定ではないし、打点もわからないじゃないか」ということなのだ。

ポジティブなたろうらしい放銃である。

 

すると、このアガリで勢いに乗る(←本人は感じてない)小林は、なんとツモりサンアンコのイーシャンテンからをチーしていった。

小林剛はこれを仕掛けるのか。

小林「門前でいくよりマシかなと思って。ドラが浮いたツモりサンアンコは大体ダメでしょ」

なかなか鳴きという発想がでなさそうなだが、チーと言われれば確かにその選択があることに気づく。

そして、上家がラス目でオヤのポジティブたろうである。

さらにをもう1つ鳴かせた後のたろう「イーシャンテンだよ?点棒ないオヤでおれにオリろっていうのは無理よ。(小林からが余ったけど)チンイツじゃないこともあるし、テンパイじゃないこともあると思ってるからね」

と、で8,000放銃となった。

勝又「でも、当たったら後悔するんでしょ?」

たろう「後悔する(笑)」

人間らしいたろうとロボらしい小林のコントラストが面白い。

 

すると、ここでたろうが人間らしい一手。

なんと、上家内川の切ったをチーしていないのである。

チーすれば12,000の両面テンパイだ。ところが、人間・たろうにはこう見えているのだから仕方ない。

たろう「24,000直撃したりしたらトップまでいけるかなあって」

メンホンリャンペーコードラ2、きっちり倍満を小林から直撃してトップを取ろうというのだからそのポジティブさには恐れ入る。

その選択を後押しする要素も確かにある。内川がをポンしてソウズのホンイツ模様で、それに対応するようにピンズがバラバラと切られており、ピンズの状況がすごくいいのだ。

確かにピンズは良い。しかし・・・

たろう「悪いところが出ちゃったかな。チーテンは取らなきゃダメだよ。やっちゃったなあ、なんでおれはこういうことしちゃうんだろう」

たろうが自ら「そういう病気」と語るように、この手はテンパイすることなくラスに終わる。

実はこの日の帰り道、数奇な出来事があった。

たろうと私は2人でタクシーを止めようと道に乗り出して手を挙げたのだが、なぜか空車のタクシーが1台素通りしてしまったのである。

たろう「えっ!?何、今の!?こんなスルーある?」

そこで、私は言う。

― たろさん、今ぐらいのスルーよ、スルーは。

たろう「そっか、これか!そりゃ、スルーしちゃダメだわ(笑)」

鈴木たろうはそれを鳴かなかったのではない。

鳴けなかったのである。そういう性分なのだ。

 

4回戦:瀬戸熊のやりにくさを増長させる内川の軽い仕掛け

それにしても、瀬戸熊の低迷ぶりが目立つ。1人だけ参加できていない印象だ。

確かにツキがない部分はあるが、その1要素に内川の鳴きがあるように思う。

例えば、こんな仕掛け。たったの500オールなのだが、ポンが3つで押しにくい仕掛けになっている。

小林のを軽い仕掛け、たろうのを重い仕掛けと評するなら、内川の仕掛けは中間の仕掛けである。ほどよく他家が押しにくく、打点も読みにくいが、手を開けると低打点から中打点であることが多い。

内川にこれをやられると、小林・たろうの仕掛けと相まって、非常に押し返しにくい布陣となる。

そこに、門前志向の瀬戸熊が1人遅れているという風に見えるのだ。

そんな状況についに焦れたか、瀬戸熊らしからぬ放銃。

前巡にツモでテンパイを組んでいた瀬戸熊。ここはトップか少なくとも2着にはなっておきたいところであるため、前巡にはツモ切りがよさそうだし、テンパイを取るならリーチでよかったのではないだろうか。

そして、せっかくダマテンに構えたのにこのドラをツモ切ってたろうに3,900放銃。

瀬戸熊のこういうダマテンでの押し切りを度々見てきたが、これはミスの類といっていいのではないかと思われた。最終日、ヒーローの巻き返しに日本中が期待している。

 

さて、オーラス。焦点はたろう・内川のトップ争いである。

ここはたろうの選択が見事だった。

下家の内川が、ペンチャン落としからのトイツ落としをしたところ。

なんと、たろうはここから内川の気配を感じてオリ始めたのである。

たろう「トイツ落としがヤバすぎた。ドラアンコとかもあると思っちゃって、何も鳴かせられないなと」

鋭い。1,000・2,000条件のプレイヤーが、落としの後にトイツ落とし。つまり、内に寄せた進行なのに、その内側の牌がトイツ落としされたわけだ。

そういう手牌は、かなり進行しており、打点も足りているのではないかと考えられる。

実際にはこちら。

も外してチンイツテンパイまで入っていた。

あれ?でもこれ・・・切りでに受けた方がいいのでは?

内川「を見せちゃって慌てて切っちゃいました。切り間違えです。切ろうとしたんですよね」

結果、どちらにしてもツモで事なきを得るのだが、インタビューでは「を切ろうと思った」とさらに間違えて話してしまうなど、相当慌てたことがわかる。

アガった直後の顔もこの硬直ぶり。イケメンだけど。

しかし、この選択以外は終始安定感ある攻撃で前に出続けた内川が初日を首位で終える結果となった。

 

■次回11/3(土)16時から、決勝最終日をAbemaTV 麻雀チャンネルにて生放送予定

藤田晋invitational RTDリーグとは

2014年に麻雀最強位を獲得した藤田晋が、団体の垣根を超え、今最も強いと言われている麻雀プロを招いて開催される長期リーグ戦。
予選ではBLACK DIVISION・WHITE DIVISIONそれぞれ8名ずつの選手が出場し、各ブロック予選全54回戦をすべて放送する。
前代未聞のスケールで開催される今大会は、名実共に最強の雀士を決める戦いと言っても過言ではない。

毎週月曜日・木曜日の午後21時から最新対局を放送!!
(日曜日のお昼に、その週の最新対局をまとめて放送)

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この記事のライター

鈴木 聡一郎
1983年生、千葉県出身
早稲田大学在学中の2004年、最高位戦日本プロ麻雀協会に入会。
以後10数年に渡り、観戦記者として活動中。
最高位戦以外にも、モンドTV、麻雀スリアロチャンネル、RMUなどの観戦記を執筆。
近年では、AbemaTV麻雀チャンネルの公式ライターとして、RTDリーグなどの観戦記者を務める。
観戦記以外には、書籍『麻雀偏差値70へのメソッド』(石井一馬著)、『最強プロ鈴木たろうの迷わず強くなる麻雀』(鈴木たろう著)、『多井熱』(多井隆晴著)などに協力。

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