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吉田葵は間違えない~千里眼の復活劇~【麻雀ウォッチ シンデレラリーグ2018 第1節予選Aブロック2卓】

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リーチ・ドラ2、高めで満貫ある絶好の先制攻撃。直後に追いかけリーチをしようとした高橋の宣言牌であるドラのを捉え、12000は12600のアガリをものにする。これで2着に浮上した吉田だが、その後もアガリを重ねた柚花の背中には届かず。とはいえ、この日初となる連対に成功してみせた。

最終4回戦。柚花が3回戦で50000点オーバーのトップを取ったことで、他3名のポイントがマイナスという状況に。だが吉田もここでトップを取れば、原点復帰も見えて来る。各順位を1回ずつ取るサイクルヒットであるならば、滑り出しとしては悪くない。

だが、そのプランは早々に潰えることとなる。

 

親番の涼宮が、リーチ・タンヤオ・チートイツ・ドラ2のリーチ! は中筋だ。安牌に窮した柚花が、ここに飛びこんでしまう。さらに……。

 

裏ドラは! 開局早々に24000点が炸裂した。この後も涼宮は高橋から12000は12300、2000は2200オールと立て続けにアガリを決め、親番を終える頃には65000点の大トップ目に立っていた。ここでは涼宮の暴風圏内から外れていた吉田だが、東2局に高橋が会心の4000オールをツモ。着順を3着へと落としてしまう。そして次局、さらなる悲劇を吉田が襲った。

またしても涼宮に驚愕の手が入る。タンヤオ・ピンフ・ドラ・赤の待ち。だと三色までつく。しかも涼宮の河は、まるでテンパイ気配を感じさせない。

1シャンテンからをツモ切った吉田の耳に「12000は12300」という申告が飛び込んだ。箱下寸前の柚花と、ほぼ並びとなってしまう。

吉田の言葉を借りるならば、どんな状況であっても麻雀プロは「ツイていない」の一言で片づけてはならない。だが、幸いにも僕は麻雀プロではない。だからこそ、あまりに不運だと僕はこの場で言葉を連ねる。麻雀は確率論が重んじられるゲームだ。確率が収束するというのならば、そろそろ吉田に風が吹いてもいいのではないか――。

来た。心なしか、吉田の第一ツモに普段より力がこもっているように見えた。

親番で迎えた東4局に、ダブリー・チートイツの待ち。やはりチャンスは皆に訪れる。そして――

 

粘って回ろうとした高橋の捉えた。

9600点を直撃したことで2位に浮上。この局面だけで切り取れば、ただのラッキーでしかない。だが、僕たちは見ていた。吉田の惚れ惚れするような打ち回しを。

たとえばこの4回戦の東1局3本場。柚花から3巡目にリーチが入った状況で、この牌姿。単騎か単騎に取れる。赤を1枚使っていて、は高橋が直前に切ったばかり。狙い目の牌ではあるが――

吉田は切りのヤミテンを選択。さらに次巡。

今度は引きで、の三面張も選択できる。この時の柚花の待ちは――

渦中のがズバリと刺さる。これはさすがに万事休すか……。そう思われたのだが――。

吉田はをそっと河に置いた。はリーチに通っていないにも関わらず、だ。

結果、この局は柚花が1300-2600は1600-2900をツモアガって決着する。放銃に回ってもおかしくない局面を、3分の1の失点でしのいでみせた。

「ドラがだったのでのくっつきテンパイを目指しました。単騎は高橋さんがトイツ落としじゃなかったらリスクが高いなと思い、やめました。を切るか筋のを切るかで小考しましたね。を切るとソーズのイッツーなどが見えてくるのですが、ドラが……。この半荘は涼宮さんがもう抜け出すぎているので、2着は必ず取らないといけない。そこで柚花さんに打ってしまうのは避けたい局面でした。勝負するのであれば満貫・跳満クラスかなと。で当たるとドラまたぎなので、打点もそこそこと思い、打ちたくありませんでした」

吉田の麻雀は、我慢の麻雀だ。チャンスが来るまでしっかりと身を守り、その中でも最善の努力を忘れない。逆切り、先切りなどの小技も効かせ、赤あり・アガリ連荘のルールに対応するべく鳴きも積極的に多用していく。

「でも、小技は大技には勝てないですから」

そう語ってはにかんだ吉田だが、最終4回戦も2位で終えることに成功してみせた。東4局1本場、ダブリーの恩恵を受けた直後の局では、場況を掌握しているかのような手順を踏み、7700は8000のアガリを決めていた。あの最終形は、吉田オリジナルと言っても過言ではない出来栄えだった。未見の方は、ぜひチェックしてほしい。

3回戦、4回戦で2着に滑り込んだことで、吉田はどうにか踏み留まることに成功した。

「まだ諦めるような数字じゃないですね。全然取り返せると思っています」

完全復活はお預けとなった。だが、たしかにその兆しは見えた。

吉田葵は間違えない。どんな苦難が待っていようと、信じた道を突き進む。そうして彼女は、この舞台に帰ってきたのだから。その千里眼が見据える完全復活へのシナリオを、あとはエゴイスティックに突き進むだけだ。

 

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この記事のライター

新井等(スリアロ九号機)
麻雀スリアロチャンネルの中の人。
ナンバリングは九号機。
スリアロでのポジションをラーメンに例えると、味玉くらい。
お酒があれば、だいたい機嫌が良い人です。

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