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 健康マージャン教室かぼちゃ倶楽部店長 古川文菜「社会とのつながりを求めた先に麻雀があった」【マージャンで生きる人たち 第32回】

 健康マージャン教室かぼちゃ倶楽部店長 古川文菜「社会とのつながりを求めた先に麻雀があった」【マージャンで生きる人たち 第32回】

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 JR両国駅西口から徒歩1分。大相撲観戦で有名な「国技館」のすぐそばに「健康マージャン教室かぼちゃ倶楽部」はある。マンツーマン指導してくれる「教室コース」をはじめ、質問しながら出来る「安心コース」、様々なレベルの方と打てる「一般コース」など豊富なカリキュラムで、これから麻雀を覚えたい方はもちろん、リアル麻雀デビューしたい方、初対面の人と卓を囲むことに慣れていない方をも温かく迎え入れてくれるお店だ。
 オープン3周年を迎え、月例会を開催すれば毎回満員御礼となる活気のあるお店だが、オープン当初は閑古鳥が鳴く日々も多かったという。一体どのような取り組みをしてきたのか。店長の古川文菜さんに話を聞いた

古川文菜(ふるかわ・あやな)プロフィール

1991年、東京都生まれ。天秤座。O型。健康マージャン教室かぼちゃ倶楽部 店長。好きな役は平和。好きな本は『伝説のホテルマンが語る「一流の仕事」ができる50の言葉』。

健康マージャン教室かぼちゃ倶楽部のコンセプトは?

「すべての世代、様々なレベルの方にとって、明るく、楽しく、和やかに過ごせる空間であることです。初心者、初級者をはじめ、ご年配の方、単身サラリーマンの方、子育て中の主婦の方、学生、外国人留学生など、とにかく誰でも気楽に来て頂ける交流の場でありたいと思っています」

 

「そういう観点で言えば、麻雀は日本語学校教師として働いていた頃に目指していた異文化理解と似ている部分があります。担当教室は世界中の国から様々な目的を持って来日した生徒さんが在籍する多国籍クラスで、考え方も習慣も全く異なる中でお互いの文化を認め合いながら、日本の文化やマナーを教えていました。なのでメンゼン派か鳴き派かといったような討論も、互いに認め合っていけるのが理想かなと思っています」

「一般コース」「安心コース」「初心者コース」「初心者教室」等、目的に合わせてコースを選べる

日本語学校教師からなぜ健康マージャン教室の店長に?

「家が裕福ではなかったこともあり、物心ついた頃から社会的に不利な立場にいる人たちや発展途上国から来た人たちの味方になりたいという気持ちが強くありました。それで多くの方の助けになる仕事ってなんだろうと考えた先に、日本語教師があったのです。そう考えるようになったきっかけは、高校時代から6年間、六本木(東京都港区)にあったマクドナルドでアルバイトをしていたことにさかのぼります」

 

「マクドナルド六本木店では従業員の8割強は外国人でした。最初はお客様に対するマナーも悪く、遅刻も当たり前といった若い子達でも、徐々に日本の風習やマナーを覚えていくようになると、今度は自分の国から新しく来た子たちに、日本では時間は守らなけらばいけないんだよと教える側になっていくんです。そういったところにすごく感動を覚えていたことが、日本語教師を目指すことにつながりました」

 

「日本語教師の仕事が軌道に乗って安定してきた頃、出産しても生涯やっていけると思い、結婚しました。でも結婚した翌月にいきなり解雇されてしまったんです。法改正による一斉解雇だったんですが、私は専門学校卒業資格だったので、資格に満たないとされ、当時一緒に働いていた10人以上いた日本語教師も一斉解雇となってしまいました」

 

「数年かけてやっと叶えた夢だったこともあり、お先真っ暗という感じでした。卒業式が終わってから2カ月間、体調も悪くなってしまい、友達にも会いたくない。転職すら思いつかないし、家にいても塞ぎ込んで悩んでしまうだけ。とにかくどうにもならない状態でした」

 

「それで現実逃避をするために、家の近くにあった健康麻雀店に行ってみたのが、牌に触れた初めての体験でした」

 

「なんとなく顔を覚えてくれて、今日の夕飯何にするの?みたいなたわいのない会話をして帰るというのは、当時の私にとっては本当に心の救いでした。麻雀はゲームではやったことはあったんですが、いざ実際に卓を囲むと余計なことを考えずに、あっという間に長い時間を過ごせることも魅力でした。社会と関わりを持てる唯一の場所だったので、週4回ペースで2カ月ほど通っていたんです」

 

「そんな日々を過ごす中でかぼちゃ倶楽部のサポート会員というシステムをみつけたんです。内容はボランティアという立場で麻雀を打つお仕事でした。当時はお仕事できる体力もないし、稼ぎたいわけでもなかったので、ただただ卓を囲んだ方との何気ない会話を通して、心のケアをしたいという思いで通っていました。以降、サポート会員からアルバイトという立場になり、1年半働きました」

全12卓のほか、サロンコーナーもあるゆったりとした店内。フリードリンクで食べ物の持ち込みも自由だ

 

「当時のかぼちゃ倶楽部はオープンから1年ほど経ってはいましたが、認知度も低く、お客様がいらっしゃらない日もよくありました。今日は楽しかったと言ってくれたお客様がいても、その後はまったく来店しくださらなかったり、いっこうに定着してくれる様子もありませんでした。こんなに広くて綺麗で、両国駅から徒歩1分というアクセスにも恵まれているのになんでだろう。そう考えていくうちに、もっとこうしたらいいお店になるんじゃないかといった気持ちがいっぱい自然に出てきたんです」

 

「ただアルバイトという立場だと、企画を提案しても責任を持って出来ません。次第に歯がゆくなってしまい、何とかお店の力になりたいと思って社員となり、店長を任せて頂いたという経緯です」

 

店長として最初に取り組まれたことは何だったんでしょうか?

「マナーアンケートから取り組みました。とにかくマナーが徹底されていないお店だったからです。人それぞれ気になる項目が違うということを伝えるため、アンケートでは以前お客様から頂いたクレームやご意見を箇条書きにして30個並べ、その中からお客様自身が気になってしまうことを3つ選んでもらう方式にしました。推奨マナーを単にお見せするだけでは、私は大丈夫だからと読んでもらえないことが多いと思うんですが、お客様自身がとくに気になることに丸をつけてくださいと伝えると、改めて全部読んでもらえるようになりました」

お客様から頂いたクレームやご意見を箇条書きにしたマナーアンケート。お互い気になることは千差万別だそうだ

 

「お友達同士でも気になるマナーが異なっていたり、実は相手がこんなことを嫌がっていたのかと知らなかったりもするので、マナーアンケートをきっかけに相互理解につながり、お互い様だよねという感覚が生まれていきました。この取り組みによって、定着してくださるお客様が少しづつ増えていきました」

 

「またお店のホームページも自分で作り、集計と分析システムも構築しました。総会員数のうちの何人のお客様が月間に来られているのか、来店頻度はどのぐらいなのかといったことをデータ化し、キャンペーンやイベントといった取り組みがどのぐらい反響があるのかもデータとして把握出来るようにしました」

 

「そして多世代の方に来て頂くために、スタッフも多世代がいいと考え、性別もプロアマも問わず募集しました。私自身業界経験も浅くわからないことも多いので、判断が難しい部分はスタッフになんでも相談しています。お互いに得意分野を担当し、お任せするようにしているので、多忙な中でも店長業務に集中出来ています」

 

 

失敗など、ご苦労されたことは?

「アルバイトで入った頃は失敗ばかりでした。とにかくベテランのお客様が打たれるスピードに全くついていけなかったのです。同じ半荘で2回チョンボをしてしまったこともあり、卓上における振る舞い方もまったくわかっていませんでした。自分が初級者すぎたゆえに、打ち筋の高度なアドバイスや、個人的な考えを色々な方から毎日のように言われていたことが、ときには批判に感じることもあり、麻雀のことが嫌いになってしまった時期もしばらくありました」

 

「でもこの経験のおかげで初心者さん、初級者さん、ご新規さんが、知らない方と同卓することがどれだけ不安なのかという気持ちを身をもって実感することが出来ました。この経験はお客様同士の卓組やコース分け、教室の充実などにも活かすことが出来ました。またスタッフに対しても同様で、研修や面談を通して、戸惑っていることがないかどうかは小まめに確認するようにしていきました」

「勝敗云々ではなく、マナーを守って気持ちよく卓を囲んでくれている方をベストマナー賞として毎週表彰しています」

 

仕事と麻雀、何か共通点はありますか?

「奥が深く、正解が毎回異なるところは共通していると感じます。仕事も麻雀も観察力、判断力、立ち居振る舞いなど、常に状況を考慮して実行する必要があります。単にマニュアル通りに同じことをしていればいいというわけではなくて、ご新規さんへの説明の仕方、教室の講義内容、お客様同士の卓組、どんな企画イベントをいつするのか等、すべてその時の状況によって対応が異なってくると思うんです」

「以前失敗したイベントでも時期をあけると成功したり、お客様の世代によっては、異なる説明の仕方が必要だったり等、単純ではない所はおもしろくもあり、そこは麻雀と共通していると感じています。とはいっても麻雀を打つことだけは全く上達しないんですが」

 

好きなことを仕事にするためには

「仕事の中で自分の役割を見つけ出すこと。そして社会の中でその仕事の存在意義を獲得することだと思います。そのためには、自分が好きで得意なことで必要とされたいという感覚よりも、仕事の中に自分の得意や好きを最大限に活かせる部分は何かないかと探していく感覚が大切だと考えています」                           

「私は点数計算も出来ないですし、お店のスタッフの中では一番麻雀が下手です。それでも自分に出来ること、得意なことを探し出してやってきました。日本語学校教師を解雇された当時は絶望していましたが、日本語教師に戻れると言われても戻らないぐらいこの仕事が好きです。今は一番人生で幸せで、実はこの仕事の方がよかったかもしれないとすら思っています。単に麻雀を打つだけではなく、麻雀を通してカルチャーセンターとしてのお仕事とその意義を好きになれたからです」

古川さんの今後の目標は?

「将来的には子供教室を展開出来たり、視覚障害者の方、聴覚障害の方、自閉症を持っている方でも通えるようなお店を作れたらいいなと思っています。また麻雀業界で働いている方は正社員が少ないのが現状なので、今後はより店舗数を拡大してくことによって、プロアマ問わず職場も増やしていけたらと思っています」

 

「でもまだまだ今のお店には足りない部分や課題も多いので、もっと人を育てて、もっともっと自分がやりたいこと、叶えていきたいことが実現出来るように力をつけていきたいです」

店名には「かぼちゃのようにいろんな色、大きさ、形があるように、お客様も十人十色」という思いが込められている

古川さんにとって麻雀とはどういう存在なのでしょうか

「人と人をつなげ、生きがいを与えてくれる存在です。『ここに通いたいからリハビリを頑張ってきたのよ』『定年したら毎週通いたい』『毎日ここに来るのが生きがいなの』。こういった言葉をお客様から頂けることは、本当に嬉しいですし、私自身の生きがいにもなっています」

 

インタビューを終えて

「まったく知らない国で外国人であることを体験してみよう」と古川さんは日本語教師を目指す前にオーストラリアへ行き、ワーキングホリデーで1年間住んでいた。そして「言語、風習、ビザの取得方法など自分が知らない国で外国人になったら、実際どういったことが困るのか」を実感したという。

 マクドナルドで培った経験同様、自分で体験して感じたことを社会でどう生かすのか。「社会とのつながりを求めた先に麻雀があった」という古川さんは今、社会の中における麻雀の存在意義を見つけ、それをさらに広げていくために奮闘する日々を過ごしている。

 その原動力には、今の自分に導いてくれた麻雀への感謝の気持ちがあった。 

◎写真:佐田静香(麻雀ウォッチ)  、インタビュー構成:福山純生(雀聖アワー)

 

関連リンク

健康マージャン教室かぼちゃ倶楽部
東京都墨田区横綱1-2-28 両国ステーション西ビル6階
TEL03-5608-5066
開催時間:10:00~20:00
定休日なし(※大会日は時間変更あり)
※2020年に都内に2号店をオープン予定。


ロハスミッション株式会社
 健康マージャン教室かぼちゃ倶楽部は、ロハスミッション株式会社が経営している。同社は「大切な人の笑顔と、人と地球の笑顔を育む。」を理念に掲げ、介護事業を中心にデイサービスの介護施設を全国に展開している。さらに飲食、ホテル、塾、書店など様々な事業も手がけていく中で「介護事業の一環として健康寿命を延ばし、地域の方たちが集まれる場所を作っていきたい」という思いで、健康マージャン教室かぼちゃ倶楽部を2016年にオープンした。

かぼちゃ倶楽部Twitter

古川文菜さんTwitter

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