第271回の「完全1シャンテン」の定義について、もう少し掘り下げてみることにします。
現在の私は、第271回の定義③を完全1シャンテンとみなしています。しかし、サイト版現麻では定義⑤を採用していました。当時、定義⑥を完全1シャンテンしていた記述は見当たらなかったので、良形確定は必要条件。しかしメンツの数について言及している記述も無かったことから、定義⑤を採用するに至りました。
ところがそれ以降、定義⑥を完全1シャンテンとする記述を見かけるようになりました。初出が何かは分かりませんが、書籍になっているものでは、『麻雀の正解』(2013年出版)があります。著者の福地氏が良形確定でない牌姿を「完全1シャンテン」と表現しているのに対し、回答者の小林プロが「完全1シャンテンは良形確定のものに限るのではないだろうか」という主旨のコメントを寄せられています。
定義⑥が広まった理由として、一つ思い当たるふしがあります。それはサイト版現麻で、2メンツあって余剰牌が無い(フォロー牌が有る)牌姿を、「完全形」と表現していたことです。実はこの表現は私が考案したものではなく、私のハンゲブログの記述をサイトにまとめられたや〜べ氏のもの。もし、良形確定でない牌姿を「完全1シャンテン」と表記されていたのであれば、定義に反するので訂正依頼を出していたと思いますが、完全形はあくまでや〜べ氏の分類。「余剰牌無し形」ではいかにも語呂が悪いというのもあり、そのまま残すことにしましたが、この表現では本サイトを読まれた方が「良形確定でなくても余剰牌がなければ完全1シャンテン」と解釈されるのも無理はありません。
他に考えられる理由として、完全1シャンテンの元となった沼崎定跡「ポンよしチーよしポンチーよし」を言葉通りに捉えるなら、「良形確定」は必要条件ではないということです。これを踏まえるなら、第271回の定義①〜⑥ではなく、定義⑦「2メンツ+1アタマ+ターツ+ターツ+トイツを作るフォロー牌」という定義も成り立ちます。
こちらでは、「リャンメンの残る形を重視せよ」の一文が入り、良形確定で余剰牌が無い牌姿を沼崎定跡と呼んだと考えられます。しかしこちらでは「リャンメンの残る形」の記述が無く、ポンチーでテンパイできる2メンツの1シャンテン全体が沼崎定跡であるとみなせます。
「完全」と名がつくくらいですから、良形確定は必要条件とみなすのが自然だとは思いますが、それなら良形確定でないが余剰牌の無い2メンツの1シャンテンは何と呼べばいいのかという問題もあります。何と呼べばよいか分からないから、似て非なる形もそう呼ばれるようになったというのもありそうな話です。人は言葉をもって概念を認識するので、名付けるという行為が必要なのは確かですが、定義不明瞭な言葉は混乱の元。しかし今から定義を統一するのも難しいので、何度となく申し上げてきたことですが、定義が明確な言葉に絞って、麻雀戦術を解説できるようにするのが今後の私の課題です。