2月1日に開催された第18期雀竜位決定戦の戦いの1回戦の観戦記!著者は雀王戦B1/女流Bリーグ所属の庄司麗子プロ(@reiko_s59)です。
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— 日本プロ麻雀協会 (@ClubNPM) February 3, 2020
第18期雀竜位決定戦1日目 1回戦目の観戦記をアップ。https://t.co/fRQGiZAT6p
(文:庄司 麗子)
※本日より1回戦ごと、5日間連続で掲載いたします。 pic.twitter.com/HD1eSHtHBw
当観戦記は日本プロ麻雀協会公式HPにて公開されたものの転載になります。
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1回戦(坂本→千貫→吉田→大浜)抜:矢島
第18期雀竜位決定戦開幕!
今期からは決定戦システムが変更になり、初日・2日目は5人打ち、最終日には上位4名での戦いとなる。
初日の各者の思惑としては『トータルラスにならず余裕のある状態で2日目を迎えたい』だろう。
初戦の観戦記らしく、選手たちのプロ歴と個性がキラリと光った1局をご紹介しようと思う。
坂本 太一(さかもと たいち)
天鳳高段者として鳴り物入りでプロ入り。ワンデー大会などの決勝経験が豊富なゲーム巧者。
(プロ歴4年目・雀王戦B2リーグ所属)
東場では目立つ動きは無かったが、南1局の親番で2局連続での一発ツモでトップ目の大浜に迫った。
その後も押すべき時に押し、引くべき時に引き、ラス前のアガリでついにトップ目に立った。
注目すべきは2回目の一発ツモの局。
8巡目、 ドラから打でテンパイをとるも、は2枚切れのため役なしダマを選択。
ここから連続でを引き打、打でリーチとした。
1. 打のテンパイ取りの時点で打、または打として向聴戻しをする選択
2. 一枚目のツモで打の選択
3. セカンドテンパイの時点でドラのや、3飜アップの引きの手代わり待ちダマの選択
3巡連続の選択が全て正解だったのは結果論に過ぎないのかもしれないが、坂本はこの局で7300点を得ることに成功。
勝利への近道はどんな些細な選択でも、正解を選び続けることだ、と誰かが言った。
親で一発ツモが2連続などといった、僥倖の積み重ねがトップの要因だったのではない。
一牌一枚の選択を誤らない、そんな小さなことの積み重ねが坂本を初戦トップに導いた。
千貫 陽祐(せんがん ようすけ)
麻雀講師業の傍ら雀王戦・雀竜位戦ともに上位リーグを長年維持している。
(プロ歴11年目・雀王戦A2リーグ所属)
開局から2連続で3900点をアガるもその後は音沙汰なし。
嵐の前の静けさのよう、「何かが起きる!」とは正にこんな瞬間だった。
吉田のリーチを受け10巡目
から現物の打でテンパイ取らず。
次巡ツモで打、次巡ツモで打リーチを打った局面だ。
ラス目の吉田とは18600点差、リーチ棒を出しても満貫直撃までは耐えられるが、それ以上の直撃はNG。
自分の目からドラは一枚も見えていない。
(1)トップ条件は三人リーチになってからの倍満ツモ。
(2)二着条件は坂本か大浜からのハネ満直撃かハネ満ツモ。
この牌姿のリーチでは高目・一発・裏ドラ・出場所など、条件クリアの壁はかなり高い。
をカンしてからのリーチならまだしも、現状ではリャンメン待ちのリーチのみ。
これほどのリスクを背負ってリーチと声を出せる打ち手がいるだろうか?
今局中に、解説実況コンビから「リスクジャンキー」というフレーズが多く聞こえた。
死ぬかもしれないような瀬戸際を味わうことが中毒化している、そんな意味だろう。
この選択はリスクジャンキーの性ではなく、リスクを背負ってでも一着順を争う、喰うか喰われるかの決定戦ならではの選択の一つだったと感じている。
結果はカンの後をツモアガリ、カン裏ドラが。
細い細い、とてつもなく細い……だが確実にあったであろう糸を手繰り寄せ二着条件クリアのフィニッシュ。
今後も千貫の動きには目が離せない。
吉田 航平(よしだ こうへい)
昨年のファイナリスト。そこで噛み締めた悔しさを胸にリベンジを誓う。
(プロ歴5年目・雀王戦C2リーグ所属)
『貧乏くじ』とはよく言ったもので、初戦の吉田には恵まれない展開が続いた。
本人の選択だからと片付けていいのか、本当に不運だったとしか言いようがないのか…
千貫のリーチを受けた一発目、終盤。
ドラ受けのリャンメン、2枚切れのペン、ともに場に1枚ずつの。
千貫の現物はと。
吉田は打を選択。
次巡ペンを引き入れて打リーチとした。
結果はドラ暗刻の大浜も含め3人テンパイでの流局。
千貫のリーチは七対子の待ちで、吉田の待ちである残りの1枚の所在は王牌だった。
この半荘、一番リーチの回数が多かったのは吉田であったが、なかなかアガリに繋がらない。
筆者は直近2年間、吉田と同じリーグに所属していた。
打ち筋がスピード重視から打点寄りへの変化が見受けられ、この1年で成長してきたのだなとささやかな喜びを感じながらこの半荘を見ていた。
あまり感情を表に出さない彼だが、この半荘での悔しさは胸一杯だろう。
いまは蕾かもしれないが、この決定戦で大輪の花を咲かせて欲しい。
大浜 岳(おおはま がく)
厳しいサバイバルタイトル「雀竜位戦」において長年A級の座を守り続けている実力者。
(プロ歴16年目・雀王戦不参加)
この一半荘、大浜の麻雀からは競技麻雀の教科書のような手順、アガリを何度も見せられた。
配牌から最高形をイメージし、妥協するべき所では無理をしない手順。
特に下位リーグの若手プロにとっては必見の価値があると言って良い。
ツモ牌に対して最適な打牌。
麻雀はこの積み重ねだと前述した通り、大浜の選択は長年A級を維持している実力を示した。
親番でのツモアガリ、裏も乗って6000オール。
麻雀打ちなら誰もが望む、これが簡単に出来ないから面白い。
教科書のようなタイプは守りも固い。
勝手なイメージだが、大浜には不思議と当てはまらない。
ドラの無い手牌だが、先制リーチに表示牌のを押してリーチ。
押すべき手牌の時には親リーチの一発目でも無筋をしっかり押し、追いかけリーチ。
どんな状況でも手牌とツモに素直に向き合う『ど根性』的な印象も受けた。
結果は3着。でもまだ初戦。
長い道のりの入り口じゃないかと、この先もきっと腹を括った名場面を見せてくれるはずだ。
矢島 亨(やじま とおる) ※1回戦目抜け番
現雀竜位で、数多くのタイトル戦決勝経験を持つ。麻雀研究会「やじ研」を主宰し、若手の育成も行っている。
(プロ歴13年目・雀王戦A1リーグ所属)
やじ研で学んできた坂本。
初の決定戦となる千貫。
昨年、決勝を共にした吉田。
矢島を「心の師匠」と呼ぶ大浜。
矢島は今期、4人の挑戦者を迎え討つ初の防衛戦となる。
各者の開幕戦が矢島にはどう映ったのだろう。
連覇へ向けた構想はいかに……
(文:庄司 麗子)