
東家:栗本杏奈(最高位戦日本プロ麻雀協会)
南家:川上レイ(日本プロ麻雀連盟)
西家:丸山奏子(最高位戦日本プロ麻雀協会)
北家:園りさ(日本プロ麻雀協会)


東1局
先手を取ったのは川上レイだ。
第18期夕刊フジ杯麻雀女王のタイトルを獲得し、実績では頭ひとつ抜けている存在である。
が既に2枚切られ、
も2枚切られてしまっている。
待ちを選ぶならば![]()
としたいところだが、打点とのバランスが難しいところ。
一回勝負で上位2名が勝ち上がりというルールを考えると一撃を決めて、後半戦を楽にやり過ごしたい。
細かいアガリを集めるよりは少し成功率が下がっても打点を上げて自身が優位に立てる状況を作りに行った。


開局から弩級の勝負手が入っていた丸山が前向きに立ち向かい5200点の放銃となった。

更に次局、三色崩れのリーチ、ピンフをツモったところで裏ドラ表示牌の
が転がった。
早くも一席が決まってしまうようなリードとなる。

東2局1本場
園りさの手が止まる。
彼女は日本プロ麻雀協会所属の所謂新人プロだ。
大阪を活動拠点としてノーシードで予選を全て勝ち上がりこの場に立っている。
さえ切り飛ばせば高打点の見える勝負手になるが、巡目がそれを許してくれない。
三色になった時だけは夢を見よう。
そっと
を河に置いた。

案の定、丸山から先制リーチが入る。

ここで園にもテンパイが入った。
即リーチでも悪くはない。リーチをしないならば通っていない
を勝負する価値はあるのだろうか?と葛藤する。
勝負所をまだ先に設定した。

次巡絶好のサンメンチャンに変化してリーチを宣言する。

指先でなぞった感触は最高なものだった。
3000-6000。
最初のテンパイでのリーチ判断や無筋を切ってヤミテンにするかオリるかの選択、全てがハマった会心の一局である。

東4局
ここまで出番のなかった栗本杏奈も黙ってはいられない。
最高位戦日本プロ麻雀協会の東海支部に所属しており、活動拠点は名古屋である彼女も園と同様に新人プロである。
タイトルホルダーと元Mリーガー、そこに2人の新人プロがどう立ち向かうのか?
本人達が意識していなくても、世間からはこういう視点で観られるのは当然だ。
だからこそ負けたくない。

絶好のテンパイを入れリーチと出た。


ここに一発で飛び込んだのが園。
唯一の心の拠り所であったワンチャンスを頼り放銃となった。
栗本が裏ドラを乗せ、12000点の出アガリ。

南2局
劣勢だった丸山奏子がドラの
を叩き切りリーチを宣言。
知名度は今大会参加選手の中でもナンバーワンと言って良いだろう。
元Mリーガーが簡単な敗退するわけにはいかない。
ポン。

このドラに食い付いたのが栗本だ。
手牌はまだまだテンパイには遠いが、勝利条件は2着以内に入ることである。
この局を捨ててもいつか満貫をアガれば可能性はある。
それでも彼女はこの局を勝負局に選んだ。
勝負が決まるのは決してオーラスというわけではない。先延ばしていき、結局何も出来ずに試合が終わることなんて沢山ある。


ニコニコ笑って、戦争はできませんよ。
無筋を切り飛ばしながら勝利に向かって突き進もうとするその姿は美しい。

しかし、手牌を開いたのは丸山だった。
この手が成就してもまだまだ苦しい点棒状況だが、丸山なら不可能を可能にしそう。
そんな一撃に感じた。

南4局
親番の園は流局さえすれば勝利となるのだが、丸山と栗本の条件はそこまでハードルが高いわけではない。
加点できればトップ目に立ち、盤石な状況が完成する。

満貫出アガリ条件となった栗本は手牌を端に寄せ、手役を狙う。

安めの
を引き入れ、条件を満たさないテンパイが入ったのは丸山だ。ツモアガリの場合は1000・2000条件。
とはいえ、現状このまま流局したならば敗退である。
ここは出アガリはせず、ツモアガリをした上で裏ドラに託すしか選択肢はない。

園は丸山の条件の軽さから、自身のアガリで阻止する道を選ぶ。

栗本もテンパイを入れた。
ツモアガリならば1300-2600とはいえ、この状況で手牌を作り直す時間はない。

複数の偶発役に頼らなくてはならないが、倒れるならば前のめりだ。

丸山がツモアガった。
それでもハードルがもう一つある。
ゆっくりと捲った裏ドラが園を地獄に突き落とした。
川上は序盤のリードを盾に後半戦は戦場に姿を現すことなく、持ち前の安定感で勝利をもぎ取り、丸山は南2局の時点で7400点という絶望の中、不可能を可能に変えてみせた。

栗本杏奈と園りさという2人の新人プロはここで姿を消すことになる。
それでも2人が魅せた闘志は視聴者の胸を熱くさせるものがあり、その気持ちが切れない限りまたこうして大舞台に立つ日が来るだろう。
その日は決して遠い未来ではない——————

























