手っ取り早く麻雀の大切なポイントを学びたい!
そんなニースにぴったりなのが、金太賢プロによる「麻雀『超コスパ』上達法」(彩図社)という本です。タイトル通り、要点がわかりやすくまとめられています。
この本で興味深いのは、ピンフの項目がないことでした。言うまでもなく、ピンフは最初に覚える役の一つで、出現頻度も高い。にもかかわらず触れていないのは、あえて省略したのだと推測しました(いつか、金プロにお会いする機会があれば、伺ってみたいと思います)。
一方、繰り返し強調されているのは、タンヤオの重要性です。目次には「とにかく真ん中の牌を集める!」「心は常にタンヤオに寄り添う」という文字が並んでいます。
確かに、タンヤオには多くのメリットがあります。
1 使える牌が多い。全部で34種類の牌のうち、中張牌の21種類(全体の約62%)を使える。
2 (ほとんどのルールで)鳴くこともでき、鳴いても同じ1ハンで食い下がりしない。
3 打点が高くなりやすい。
1の「使える牌が多い」のは、アガリまでの速度に直結します。また、真ん中の牌を使うので、牌が横につながりやすく、状況に応じて柔軟に変化しやすい利点もあります。
ちなみに3人麻雀だと、マンズの2から8を抜くので中張牌が減ります。タンヤオに使えるのは全部で27種類のうち14種類(全体の約52%)となり、タンヤオの出現率はぐっと下がります。
2の「鳴ける」も、大きな強みです。食いタンのみで早くかわすこともできますし、ドラや他の役を絡めれば、鳴きながら高くもできます。対して、ピンフは鳴くことができません。
3の「打点が高くなりやすい」は、次のような理由です。
まず、赤牌のドラがあるルールだと、タンヤオはを全部使えます。チャンタや純チャンを狙うと3枚とも使えませんし、ホンイツなら、使えるのはその色の1枚だけですね。ドラは1枚で1ハンできる強力な牌ですから、この差は大きいです。
また、複合する役が多いのも魅力です。タンヤオと同時に成り立たない役は、役牌、チャンタ、純チャン、イッツー(一気通貫)、小三元、ホンロウ(混老頭)、役満の一部だけです。サンショク(三色同巡)やイーペーコーはもちろん、チートイツ、トイトイ、三暗刻などとも複合できるのは強みといえます。
さらに、ピンフと比べて、符計算の関係で得点が有利です。
例えば、子で「ツモ・ピンフ・ドラ」だと700点/1300点で合計2700点の収入ですが、「ツモ・タンヤオ・ドラ」なら1000点/2000点で合計4000点になります。
また、「ピンフ・ドラ2」を他家からロンでアガると3900点ですが、「タンヤオ・ドラ2」だと5200点になります(ピンフでなければ、少なくとも2符はついて40符になるためです)。
一見同じハン数ですが、そこそこの差があるといえるでしょう。
また、確率は低いですが、タンヤオを目指しつつ暗刻があるときは、カンしてさらに符が増えたり、ドラが増えたりします。タンヤオのみでリーチしたら、カンできてドラも乗り、「リーチ・タンヤオ・ドラ4」でハネマンになるような幸運もまれにあります。
一方、ピンフは、使う牌の種類が多いのでドラが乗りやすいものの、カンはできません。
片山まさゆきさんの漫画「打姫オバカミーコ」には、「ピンフはとても繊細な役だ」という印象的なセリフがあります(10巻第89話)。
ピンフは基本的な役ですが、鳴けないうえに、最後は必ずリャンメン待ちになる必要があり、制約が多いという意味です。
このような強力なくっつきテンパイ形でも、ピンフになるのはを引いたときだけで、を引いたときは、テンパイにはなるものの、ピンフにはなりません。ピンフは、狙ってもできにくい、ともいえるのですね。ピンフが自然にできたらラッキー、というぐらいの感覚です。
一方タンヤオは、一九字牌を切っていけば、いつか必ずできるので、自分の意思で狙いやすい役です。ゆえに、金プロが書かれているように、「心は常にタンヤオに寄り添う」ことが重要になるのでしょう。私も、不調の時は原点に戻り、タンヤオを強く意識するようにしています。
さて、タンヤオの価値を強調してきましたが、もちろん弱点もあります。
手の中が中張牌だらけになり、攻められた時にオリにくくなる、ということです。防御力が乏しいんですね。特に食いタン(仕掛けたタンヤオ)で手が短くなってからリーチを受けると、安全牌に困ることがあります。
そのため、「この局面で、リスクをとってタンヤオを狙うべきか?」という判断は、点数状況や他家の状況を見極める必要があり、実力者の間でも意見がわかれることが多いです。奥の深いテーマですが、最初のうちは、素直にタンヤオを狙っていくことをおすすめします。その上で、時には痛い放銃を経験しながら、守るべき場面を学んでいきましょう。
次回は、タンヤオと同じく基本役となる「ホンイツ」について考えます。