1990年代に連載され、今も語り継がれる「SLAM DUNK」(スラムダンク)という漫画があります。
高校生のバスケットボールを描いたこの作品は、「好き」かどうかが、全体を貫くテーマの一つです。
主人公は最初、ヒロインに「バスケットはお好きですか?」と聞かれます。
ヒロインに近づきたい一心で、とりあえず「大好きです」と答え、バスケを始めます。
練習するうちにのめり込み、最後は本当に大好きになります。
途中には、「バスケットは好きか?」を合言葉に強くなったチームとの名試合も描かれます。
「好きなことをやろう」という、シンプルなメッセージが、多くの人の心をつかむのだと思います。
この連載は「卓上の出来事を指差し確認しよう」というコンセプトでしたが、最終回は、卓上ではなく、私ども心の持ちようについてお伝えします。「好きなら自然に強くなる」ということです。
「麻雀ウオッチ」をご覧の方は、愛好家と思いますが、とはいえ、麻雀は思い通りにはいかないものです。トップになるのは4人のうち1人だけですし、突然大きな失点をすることも多い。会心の手が安く流され唇をかんだり、同じ失敗を繰り返して自己嫌悪に陥ったりすることも数知れず……。私自身も「長い時間をかけて、自分は何をやっているんだろう?」と感じることがあります。
ただ、何度そう感じても、懲りずに卓に向かうのは「好きだから」としか言いようがありません。
どんな一局でも、4人の配牌やツモ牌、切る牌が同じ局が将来出現する確率は、限りなく0に近い。
宇宙で一回しかない巡り合わせの中で、最善手を考えるのが限りなく楽しいのです。
「好き」という感情は、個人の人生を豊かにしますし、社会を動かします。
Mリーグができたきっかけは、サイバーエージェントの藤田晋社長が麻雀を好きなこと、でした。
その思いに応え、多くの企業がチームを作ったり、スポンサーに手を挙げたりして、リーグは発展を続けています。
あまり表には出ませんが、どの企業にも、突き抜けるほど麻雀を愛する方がいて、社内で麻雀の魅力や将来性を説いて、組織を動かしています。「好き」のエネルギーは、果てしなく大きいのです。
8月23日には、「Mリーグ夏休み小学生麻雀大会」という企画に携わりました。
その様子は、こちらで詳報されていますが、子どもたちが真剣に対局する姿に心をうたれました。
子どものときから麻雀を好きになる方が1人でも増えれば、こんなに嬉しいことはありません。
大会中、セガサミーフェニックスの茅森早香選手が、小学生に「麻雀は100%の正解が見つけられないので、ずっとできるのが魅力」と語りかける場面がありました。
この言葉のとおり、一度麻雀に触れて強くなりたい!と思ったら、その旅路は終わることはありません。
もちろん、つらい時はいったん離れるかもしれませんが(離れて初めて分かることもあります)、できれば多くの方が、何らかの形で一生麻雀と楽しくかかわっていただくことを祈っています。私も、その環境づくりのために、少しずつ取り組んでいきます。
長らくこのコラムをお読み頂き、誠にありがとうございました。
またどこかでお会いしましょう!