「オリたいけど安全牌がないときの対策」として、「スジ」と「ノーチャンス」「ワンチャンス」を紹介してきました。今回もその続きで、「序盤に切られた数牌の外側は比較的安全」という見方をお届けします。
リーチをしている人の河が
リーチ
だとすると、2巡目に切られているの外側、は通りやすい、という考え方です。
なぜ、そう言えるのでしょうか。
攻める側の立場で考えてみましょう。序盤で、
あるいは、
のような手だとすると、を切るでしょうか?
普通は、切りにくいですよね。を引いてくれば嬉しいからです。やのような形は、受け入れが広く、序盤にこれを崩すのは牌効率に反し、テンパイまでのスピードが遅くなってしまいます。
また、この形を大切にしていると、その後、完全イーシャンテンという強い形になる期待もあります。
(完全イーシャンテンについては第29回をご参照ください)
つまり、上のような形でいきなりを切ることは少ない。
そのため、序盤でが切る人に対しては、やが比較的安全。
という法則が成り立つのです。
では逆に、序盤にを切るのは、どのようなときでしょうか?
例えば、
のような手であれば、多くの方がを切るでしょう。必要な5ブロックがはっきりしており、孤立牌はだけだからです。
つまり、序盤にを切る人は、そもそもマンズの下の方を持っていないことが多いんですね。
この「序盤に切られた数牌の外側は比較的安全」という法則は、汎用性が高いです。
例えば序盤にを切っている人に対しては、はスジですし、も比較的安全なので、ソウズの上はだいたい通りやすくなります。
逆にいえば、その逆、の間の危険度は少し上がる、といえます。
ざっくりいうと「多分ソウズの上の方は持ってないな。でも、ソウズはだいたい1ブロックはあるよね。ということは、ソウズの下の方を持っている可能性が高いよね」ということです。
ただ、この法則も、絶対に安全というわけではありません。
なぜなら、やのような形から、さっさとを切るケースがあるためです。
有効な牌を先に切ることから、「先切り」といいます。古くからある言葉では「好牌先打(こうはいせんだ)」とも呼ばれます。
もし先切りをされていれば、序盤にが切られていても、やが安全とはいえません。
先切りの理由は
1 あとで危険牌になりそうな牌を先に切って、安全牌を持っておきたいから
2 手役やドラとのからみで、先に形を決めたいから。例えば「絶対にサンショク(三色同順)を狙う」とか、「必ずドラを使いたい」などのケース。例えばがドラで、と持っているときは、を生かしたいので、先にを切ることが多くあります。
3 あとでリーチをかけたとき、他家から出やすくするため
などがあります。最近は、3のケースが増えている印象がありますね。
というのは、「序盤に切られた数牌の外側は比較的安全」という法則は、多くの打ち手が活用するため、その裏をかけば、他家からアガれる可能性が高いためです。
押し引きがしっかりしている人と対局していると、リーチしてもなかなか放銃してくれません。その点、先切りしておくと、アガリやすくなるわけです。私もリーグ戦や大会なので、2~3巡目にを切っている人がリーチをかけて、他家からのを仕留めるような場面を、何度も見てきました。
プロの中では、醍醐大選手(第45期最高位)が先切りで有名で、「先切り十段」ともいわれています。
その思考の一端を、この動画で見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=XLumr_2dUiA&t=587s
醍醐プロは、4巡目、
ツモ
の形で少し考えます。
牌効率でいえば、を切るのがもっとも受け入れが広くなります。以外の牌はすべて他の牌とつながっており、5ブロックが見えています。
しかし、醍醐プロが選ぶのは切りです。さらに次巡、を引いてを切ります。2巡とも先切りですね。
この先切りは、アガリやすくするというよりは、安全牌候補のやを確保してリスクをとらずに進めたい、という理由が強いです。
ただ、もしこの手が順調に育ってリーチしたとき、他家が「5巡目にが切られているから、は安全かな」と思うと、危ういことになりますね。
実のところ、「先切りせず目一杯ぶくぶくにして先制を目指す」か「先切りしてスリムに構える」かは、局面や点数状況、勝利条件によりますし、中上級者でも、人によって考えが分かれます。
大きな歴史の流れでいうと、昔は「好牌先打(こうはいせんだ)」が重要とされていましたが、その後データの分析などが進み、「早くリーチしてツモった方が有利」という考えが強くなり、前者の考え方が優勢になります。ただ近年では揺り戻しというか、先切りの効果が少し見直されている、という印象です。麻雀に限らず、ある戦術が広まるとその逆の戦術が新鮮なものとして注目され、そちらが主流になると、その対策として昔の戦術に光が当たる、、、ということはよくあります。
もしみなさんがよく打つ仲間で、先切りを好む方がいれば、その人に対しては、「序盤に切られた数牌の外側は比較的安全」とはいえません。逆に、ほとんど先切りをしない方がいれば、この法則はとても有効になります。このあたりは、人読みも含めて判断するのがおすすめです。
次回は、今回のテーマと関連して、「序盤に切られる牌に注目しよう」というテーマをお届けします。