最高位戦日本プロ麻雀協会の道場は、東京の神田三崎町にあります。少し歩くと、神保町の古書店が並んでおり、ふらっと立ち寄ると、面白い本に出会えます。
先日見つけたのは、福地泡介さんという漫画家の「あいつのマージャン」(徳間書店)。福地さんは、日本経済新聞の4コマ漫画「ドーモ君」の連載などで活躍するとともに、かつて開かれていた麻雀の「名人戦」で強豪プロ選手らを退けて優勝し、雀士としても広く知られた人です。
本の内容は、タイトル通り、ふだん卓を囲む漫画家、作家、芸能人などの仲間の打ち筋を解説したもので、これがめっぽう面白い。「この人は下手だから、訳のわからない打ち方をする」という感じのことが、角が立たないようにやわらかく書かれていて笑えるのです(もちろん、上手い人のことは誉めています)。そして、対局中の他愛ないやりとりが生き生きと描かれ、麻雀が人を人をつなぐ魅力を改めてかみしめたのでした。
さて、前回のテーマは「序盤に切られた数牌の外側を検討しよう」でした。そもそも、河に切られる牌は、4人がコミュニケーションをとる重要な材料でもあります。「あいつのマージャン」のようなにぎやかな会話がなくても、切られる牌を見ながら、「おっ、高い手を狙っているのか」「なんだか早そうだねえ」「この局は私は全力で行きますよ」というようなやりとりをお互いにしているわけです。
このやりとりが大事なので、上手い人は自分の手牌を見る時間はわずかで、それより場全体を見ている方が長くなります。
河に切られる牌で、重要なポイントの1つは、最初の3枚ぐらいの傾向です。
序盤の捨て牌からは、何を狙っているかが透けてみえるからです。
配牌を見たときに何を目指すか、どの牌から切っていくかは、次のようなパターンがあります。
1 リーチを目指す → 牌効率に沿って早いテンパイを狙うので、字牌や端牌(1や9)から切る
2 タンヤオを目指す → 字牌や端牌(1や9)から切る
3 ピンフを目指す → 役牌や場風、自風の牌を早く切る(持っているとピンフにならないため)
4 ホンイツ、チンイツを目指す → 染めたい色以外の色を切る。あとで危険になる真ん中から切ることも多い
5 チャンタ、純チャンを目指す → 4~6の真ん中の牌から切る
6 チートイツ、トイトイを目指す → 重なりにくい中張牌を早く切ることが多い
7 国士無双を目指す → 真ん中の牌から切る
多くの場合は、リーチ、タンヤオ、ピンフを目指すので、序盤に切られる3つの牌は
のような傾向がよくみられます。この場合は「だいたい普通の進行だな」と思っておけばOKです。
このパターンの人が、早めに3~7の牌を切ってくると、ちょっと警戒しましょう。
牌を真ん中に寄せたいはずの人から、早めに真ん中の牌があふれるときは、手が整っていることが多いからです。
これに限らず、「本来その人が欲しいはずの牌があっさり切られる」のは、要注意のサインです。
東場の親がを切る、マンズのホンイツの人がやを切る、国士無双の人が字牌を切る、などですね。
話を戻しますが、捨て牌に特徴が出やすいのは、普通の進行ではないときです。
例えば、いきなり
のような切り方をする人は、「ホンイツ、チンイツを目指す」「チャンタ、純チャンを目指す」「チートイツ、トイトイを目指す」「国士無双を目指す」のいずれかかな、と推測できます。
巡目が進み、「この人はマンズのホンイツだな」とわかればマンズと字牌以外はすべて安全牌ですし、「チャンタかジュンチャン」とわかれば4~6は安全です。明らかに国士無双の人がいれば、その人には2から8の牌はすべて通ります。最初の数巡で、安全牌が圧倒的に増えることも多いんですね。
「麻雀の匠」の、村上淳プロの第1回を見てみましょう。
村上プロが、他家の1打目から注目し、情報を最大限引き出そうとしていることがよくわかります。
他の3人の2打目まで
を見て、「変則手をやっている人がいない」と読んでいます。4人とも普通の進行であれば、全員が真ん中の牌をとりあうので、中張牌の価値が高まります。
同じく村上淳プロの第4回をご覧ください。
上家の一打目を見て「メンタンピン形でないことの方が多い」と予測し、親の三打目のを見て「怖い」と反応しています。親がダブ東を早く切るということは、速いか、手の中にもっと価値のある材料(高い役やドラ)があるかもしれない、というわけです。
このように、序盤に切られる牌には、多くの情報が詰まっていますので、貴重なサインを見逃さないようにしましょう。
また、誰かがアガったときや、流局して手が開かれたときに、最初の方で切っている牌と最終形を見比べると、だいたいのパターンがわかりますので、よい訓練になります。
次回は「リーチ宣言牌に注目しよう」というテーマでお届けします。