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ネマタの手組の達人 第29回

ネマタの手組の達人 第29回

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 ドラ

今回の問題は「世界最強麻雀AI Suphxの衝撃」より出題。

回答者の8割が(厳密に言えば、チートイツになった時の裏ドラ率で切りでしょうか)でしたが、Suphxの選択は何と打!麻雀AIに対するイメージからすればまさに衝撃の一打ですが、本当に妥当な選択であるかを考えてみます。

アガリの形を「23333」とすると、今回の手牌は「22222」ですが、「2222111」でもあるのでチートイツ2シャンテン。メンツ手は3シャンテン。役アリまでのアガリを手数で表すと七対(3)、役牌(4)、混一(5)、対々(5)となります。

アガリまでの距離が最も近いのがチートイツなので、トイツを残せば他はリャンメンから落とそうが手が進む牌の枚数は変わりません。それならを残してもリャンメンから落としてもアガリ率はそこまで下がらず、ホンイツやトイトイ変化から高打点を狙うに越したことはないという発想です。

チートイツになる場合も、待ち頃の牌としてを残しておきたいところです。ただし、現状3巡目なので、数牌が字牌に比べて有意に重なりにくいわけでもありません。1シャンテンになった時に字牌を1種類残しているだけでも、3回に2回は聴牌時に字牌単騎が残ります。

もし字牌単騎のチートイツで聴牌した場合は、手の内で重ねた数牌トイツが多い方が、「他家にチートイツと読まれにくい」という理由でアガリやすくなると考えられます。一般論としては字牌単騎はリャンメン待ちと同程度にアガリやすいのですが、チートイツと読まれやすい河になっている場合は無筋カンチャン待ち程度までアガリ率が下がるかもしれません。

とはいえ、安牌になりやすい牌を抱えておくことで、先行聴牌が入った場合に押し返しやすくなるという利点もあるので、このあたりは一長一短というところでしょうか。

重要なのはチートイツよりも、ホンイツに移行するメリットをどの程度に見積もるかにありそうです。役牌(4)、混一(5)なので、ホンイツに移行すると役牌のみのメンツ手に比べアガリまで1手多くかかることになります。

遠いホンイツを狙って字牌を残すかどうか。厳密な基準を設けるのは難しいですが、私は字牌を切ったとしても、ホンイツと同色の牌をもう1枚引いた場合にホンイツを狙いにいくようなら1手前から字牌を残すくらいの感覚で打っています。

今回の手牌からを切ったとして、ソーズの何を引けばを残すか。トイツができるツモはチートイツ1シャンテンでもあるので残し。アンコができるツモはトイトイ移行もあるのでを残しそうなところ。しかしシュンツができるはホンイツのためだけにリャンメンを落としにくいのでのみのアガリでもよしとして打でしょうか。ソーズの中でもツモ次第でホンイツにいくかどうか変わるとなると、これだけでは判断を下しにくいです。

ホンイツに移行する最大のメリットは打点。特に1000〜2000点が2翻増しで鳴いて5200〜8000点になる時が、手役としてホンイツが最も活きるケースです。今回はドラが。2翻増しどころか、3翻増しになって1000→8000もそれなりにあります。手役を狙うかどうかで重要になるのは打点の伸び具合。ホンイツに移行した際に使いやすい牌がドラであり、そのドラを引いて満貫に届くメリットが大きいとみて、今回の手牌に関しては私も打を推奨します。

私がサイト版「現代麻雀技術論」を書く前の話。2004年発売『科学する麻雀』の影響を受け、配牌はとりあえず浮いた字牌から切る。手役はあまり狙わず聴牌即リーチ。先行リーチに聴牌していなければベタオリ。Suphx本で言うところの、「古臭いデジタル観」そのものな打ち方でもそれなりに勝てるようになった私は、『科学する麻雀』の筆者とつげき東北氏のHP「何切る掲示板」を見るようになっていました。

そこで衝撃を受けたのは、常連の強豪雀士は意外なほどに手役狙いが多く、特に一色手は自分なら発想さえしないところから積極的に狙っているということでした。従来の「手役を狙い過ぎるがあまり勝ち味に薄い」麻雀とは一体どこが違うのか。その研究こそが、「現代麻雀技術論」を記す契機になったと言っても過言ではありません。ホンイツについては自力で基準を作るのが難しく、常連の強豪雀士の方の研究をそのまま引用させていただきました。

戦術だけでなく麻雀AIの研究も進み、多少腕に自信がある程度では勝ち越すのが難しいほど強いAIも登場するようになりましたが、序盤の手組に関しては「とりあえず浮いている字牌から」が目立ち、全ての変化を計算するわけにいかない以上、このあたりはまだ人間の感覚に分がある領域だと考えていました。まさにSuphx本で言うところの、「誤ったAI観」に囚われていたのです。

そして今回のSuphxの打牌。客風の孤立牌を残してまでリャンメン落とし。あの時の強豪雀士が魅せたのと同様の打牌を、事も無げに麻雀AIが選ぶ時代。あれから10年以上。ついにこんな時代が来てしまったのかと、何とも感慨深い気持ちにさせられました。

手組の達人第30回

 ドラ

この記事のライター

ネマタ
浄土真宗本願寺派の僧侶。麻雀戦術サイト「現代麻雀技術論」の著者。
同サイトは日本麻雀ブログ大賞2009で1位に。
1984年佐賀県生まれ。
東京大学文学部中退。

著書:「勝つための現代麻雀技術論」「もっと勝つための現代麻雀技術論 実戦編

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