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第18期雀竜位決定戦 2日目9回戦観戦記 著:武中進

第18期雀竜位決定戦 2日目9回戦観戦記 著:武中進

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2月8日に開催された第18期雀竜位決定戦2日目の戦い9回戦の観戦記!著者は雀王戦A1リーグ所属の武中進プロ(@s_takenaka0821)です。

当観戦記は日本プロ麻雀協会公式HPにて公開されたものの転載になります。

日本プロ麻雀協会公式HP

▼配信アーカイブ

 

 

9回戦(坂本→大浜→吉田→矢島)抜:千貫

【担当記者:武中進】

9回戦開始前のポイントは以下の通り。

トータル最下位の吉田とトップの坂本との差は324.0ポイント。
かなり厳しい数字ではあるが、トップラスなら順位点だけでも80ポイントの差が詰まる協会ルールである。
まだ最終日も残っていることを考えれば追いつけない差ではない。

実際今回と同じ舞台である、5年前の第13期雀竜位決定戦にて最終日5半荘で410ポイント差をひっくり返すという協会史上最大の逆転劇も起きている。
卓についている限り逆転の目は残っているのだ。

ちなみにその奇跡のドラマの観戦記はこちらとなります。
興味のある人はぜひご覧ください(キリッ

ただしそれはあくまで『卓についている限り』である。
今年からシステムの変更により、5人の中の下位1名が本日で敗退となる。
そうなればそもそも奇跡を起こせる可能性すら0となる。

そしてこの9回戦は10回戦抜け番の吉田にとっては本日の最終戦、さらに現在4位でありターゲットとなる千貫はこの半荘抜け番となっている。
84.5ポイント差ということ考えると、吉田はここでトップを取らなければ事実上敗退が決定する崖っぷちの一戦。

坂本-大浜-吉田-矢島という座順で始まった中、軽いアガリで淡々と進行していく。

場が動き出したのは東4局、親の矢島が5巡目に先制リーチ。

これを受けての吉田は苦しい形が残りながらも積極的に仕掛けていく。

明らかに後手を踏んでいる苦しい状況、普段の吉田であればスルーしてオリ気味の進行を選択していたかもしれない。
だがこのギリギリの局面ではこの手でも和了の可能性を追わざるをえない。
後の手詰まりも覚悟の上でをポンして戦いを挑む。
するとその後のツモもとうまく吉田の気合に呼応し、矢島から打たれたもポンしてテンパイ。
そして矢島がつかんだで会心の5200を和了する。

更に南1局1本場、今度も親の坂本のリーチに勝負を挑み2600は2900を大浜から和了。

 

これらのアガリによりトップ目で迎えた吉田の親番、この局で彼の運命が決した。

 

役牌がトイツと軽目の配牌をもらった吉田。
だがその役牌がなかなか場に現れず、終盤にさしかかる頃にようやくポンしてイーシャンテン。

悩ましい選択である。
連荘を最優先で考えるなら打だろう。
だが現時点で二着目の坂本を5000点ほど離しており、終盤入口ゆえにドラでの放銃リスクだけは避けオーラス勝負もにらむ手はある。
さらにいえば、素点を稼げば稼ぐほど10回戦の千貫の条件を厳しくできるためドラの重なりも逃したくない。
吉田は悩んだ末に打がとした。

だが、そこからのツモはと続く。
切りを選べていればキャッチ出来た500オールからの連荘。
これを1/2の選択で逃した吉田に待っていたのは非情なる結末だった。
ツモでの和了逃しの直後、リーチの矢島がツモると裏ドラ2枚で3000/6000の和了。

この和了により吉田はトップから陥落、更にオーラス坂本の和了により三着まで転落。
これにより10回戦を待たずして吉田の途中敗退が実質決定した。

改めてここで吉田の今回の決勝についての総括を書きたい。

結果については「運がなかった」がひとつの事実である。
南3局のようにどちらとも言い難いレベルの選択でことごとく裏目を引き続けた点もあるが、それ以上に初日において不可避の競り負けを何度もしている。
多分どんな打ち手であっても初日をプラスにすることは難しかっただろう。

一方、内容について筆者の勝手な意見を言えば、『変化の最中にあり全体のバランスをまとめ切れていない』という印象を受けた。
昨年の決定戦を見た時、吉田は先手・好形=手数を重んじるタイプだった。
そして今年の決勝では前評判通りに打点にシフトした選択を増やし、ニュー吉田と言える場面も幾つかは見せてくれた。
これは進化といえる。

ただその手牌進行のバランス変化に対して、押し引きのバランスも変化し、全体でうまく噛み合っていない様に見えた点が多々あった。
少々掘り下げて言えば、手数を重視する打ち方は中盤・終盤の押引きバランスに細かく気を遣う必要があるが、
打点派というのは実はここら辺が結構シンプル、悪い言い方をすればある程度ラフになりやすい。
(無論両方を最適のバランスでこなせるのが最良なのだが、傾向としてそうなりがちである)

吉田は押し引きの点についてもこの通りの変化をし、昨年より明らかにシンプルな攻撃型の選択を増やしていた。
ただ手牌についてやはりまだ打点よりも手数をにらむ傾向がまだ見られた中で、終盤の押引きがそれを超えたシンプルな物になり、双方がかみ合わない状態になっていた。
ここがまとめ切れていればもう少し違った結果になっていた可能性もあったのではないだろうか。

決勝に特化したバランス取りをした局面もあっただろうが、それであればもっと図々しい手牌進行が出来た局面もあった様にも見えるし、
やはり全体の完成度という点では『未完』と感じたというのが正直な所である。

しかし最後に一つ言えるのは、彼がまだここから変わっていく過程にある選手という点である。
昨年からの明らかな変化、これをまだ全体としてまとめ切れていなかった一方で、昨年の悔しさから彼が自分の麻雀にメスを入れた点は随所に見られた。
自分で自分を切り刻んで新しい集合体にするという行為は、競技においてよほどの悔しさを経験し、そこに向き合った選手でないと出来ない。
そんな彼の真摯さに心から敬意を覚えるとともに、さらに進化した姿を見せてくれる事を個人的には期待したい。

二度目の決定戦、今年も栄冠には届かず吉田は決勝を後にした。

この記事のライター

日本プロ麻雀協会
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