4人とも日本プロ麻雀連盟のシンデレラとなったこの試合。連盟の20代女流で争われる桜蕾戦の優勝者2人に、フレッシュな2人がぶつかる構図となった。

第4期・第7期と2度の桜蕾戦優勝を誇る宮成さく。

第6期桜蕾戦優勝の加賀谷春歌。

大川佳弥乃。

香野蘭。

ただ、ちょっと見方を変えてみると、どうだろう。
大川・香野はともに昨年行われたシンデレラファイトシーズン4のBest32まで登り詰めているのに対し、宮成・加賀谷は昨年予選finalで敗退しており、今大会が初出場となる。
先に挙げた桜蕾戦の実績と真逆になるところが面白い。今回はどちらに軍配が上がるのか。

最初にリードを奪ったのは、加賀谷。東1局1本場、ツモリ四暗刻のイーシャンテンから、2枚目の
をポンしてファーストテンパイ。出アガリなら2600だったところを、ツモアガリで三暗刻もつけ、2000・4000は2100・4100を手にする。

東3局0本場、大川もすかさず反撃。4巡目リーチからのツモアガリで、2着目に浮上した。

しかし、大川をかわし、加賀谷を追う急先鋒に名乗りを挙げたのは宮成。東4局0本場、自分から
が4枚とも見えて、
・
待ちの景色は良かったか。香野のリーチ宣言牌を打ち取って、5200とする。
【南3局0本場】
東家・香野蘭 19400
南家・加賀谷春歌 42800
西家・宮成さく 23800
北家・大川佳弥乃 14000

大物手のイーシャンテンにこぎつけたのは、トップ目の加賀谷。この手を決めて、トップでの通過を目指す。

北家の大川はペン
チーから発進。

自風の
もポンできて、3900のイーシャンテンに。
大川は、この
・ホンイツを、
◾️ツモアガリすれば、3着目に浮上。
◾️香野から直撃が取れれば、これまた3着目に浮上。
◾️加賀谷もしくは宮成からロンアガリならば、3着目の香野と1500点差でラス目のまま。
オーラスに突入することになる。

そんな大川の思惑をよそに、ファーストテンパイを入れたのは、トップ目の加賀谷。絶好のカン
を引き入れ、![]()
待ちで「ヤミテン」に。
筆者はこういう場合、いつも「ダマテン」という用語を使うのだが、今回ばかりは説明つきで「ヤミテン」とさせてもらう。闇夜で背後から忍び寄り、バッサリ誰かを斬ることになるからだ。加賀谷が持っているのはさしずめ、切先がキラリと光る日本刀か。

と、思ったら、なんと次の手番で2人目の暗殺者が現れる。なんていう物騒な舞台なんだ、このシンデレラファイトは。
宮成が最も高めとなるドラの
を引き入れ、こちらも加賀谷同様ヤミテンに。高めの
ツモアガリならば、ツモ・ホンイツ・一気通貫・イーペーコー・ドラ1で4000・8000になる大物手だ。加賀谷が日本刀なら、宮成は拳銃を準備。その銃口はどこを向いているのか。

さらには、次の手番で大川にもテンパイ。ラス目の大川は、3着目の香野をターゲットに定めているわけだが、実は自分が香野を直撃するよりも、加賀谷や宮成が香野を襲ってくれた方が勝ちやすくなるという展開になった。
大川が手にしているのは…、3900だから…ナタ、くらいでどうだろう。

暗闇の中、日本刀を大上段に構えた加賀谷。冷たい拳銃のトリガーに指をかける宮成。目標のラス回避に向けて、今まさにナタを振り下ろそうと息巻く大川。
一瞬の間があった後、
「ロン、8000。」
静かに、しかしはっきりと、声が響き渡った。

声の主は加賀谷だ。安めの
ながら、トップ目から十分な加点となった。
一方、痛いのは香野。加賀谷に8000を放銃するくらいなら、ライバルの大川から3900の直撃を食らった方が、3900×2=7800で、8000よりはまだ200点助かった。というくらいの激痛で、悪夢のラス落ちとなってしまった。

痛恨の一打に、香野の端正な顔が歪み、スイッチャーが意地悪くそれをねらう。
加賀谷はトップでの♯1通過を手中に収め、宮成は千載一遇の逆転チャンスを逃し、大川は自身のロンアガリより嬉しい状況が振って湧いた。

麻雀の実況者・解説者は、このような画像を見ながら、シンデレラたちの一摸一打を追っている。香野にとってこの8000放銃が暗闇での事件だとすれば、これは防犯カメラの映像と言ってもいいかもしれない。

香野蘭、日本プロ麻雀連盟37期入会プロ6年目のシンデレラ。前回登場したBest32は「通過できたので70点。」と笑顔で語った。ドラポン相手への対応や、リーチ判断に不満は残ったものの、結果さえ良ければ次戦がある。しかし、香野は今日、麻雀の神様のイタズラとしか言いようがない南3局0本場で大きく点棒を減らし、次の機会を失った。

同じキャンバスに夢を描いた同卓者たちに、来年ラストイヤーで来ることになる会場に、そして来年こそはガラスの靴を射止めたいこのシンデレラファイトという大会に、深々と頭(こうべ)を垂れ、香野蘭は踵(きびす)を返した。来年は、今年以上に多くのファンを獲得し、ワンランク上のシンデレラとして、帰ってきてもらいたい。きっと、そうなる。

Best16GroupA♯1でトップを獲得した加賀谷春歌は、SemiFinal進出1番乗りを果たす。インタビューでは、「爆運でした。順調ですね。」と振り返った。
2着の宮成さくと、3着の大川佳弥乃は、♯3へとコマを進める。2人とも麻雀が大好きで、宮成は北陸を、大川はファイヤーバードを背負っているシンデレラでもある。次もきっと、多くの視聴者を楽しませてくれるだろう。
先輩とのセット、勉強会を繰り返し、雀力向上に努め、この舞踏会に参加した香野蘭は、ここまで。大舞台・強豪相手でも、十分戦えるという手応えはつかんだはずだ。Best32を勝った時とはまた別のメッセージも、仲間や先輩たちから受け取っているかもしれない。
一夜にしてニュースターを生む土壌、長い年月をかけて頂を目指し精進したくなる魅力、その両方が、麻雀にはある。
事前アンケートで、
「Q・自分の麻雀のまだ足りてないな、と思うポイントを1つ挙げるとしたら、何ですか?」
に対し、
「A・周りへの対応力」と答えた香野。
新しい武器、ダマテンケアを携え、意気揚々と次の舞台に羽ばたいてもらいたい。
Day5結果レポート
#2,#3観戦記
準備中



























