2016年5月24日、人気女流プロ・二階堂姉妹による初の勝負哲学書『明日は、今日より強くなる 女流プロ雀士 二階堂姉妹の流儀』(KADOKAWA)が発売されました。
デビュー当時から注目され、タイトルも獲得し、メディアでも数多く取り上げられてきた二階堂姉妹。順風満帆に見えますが、その人生は波瀾万丈!
麻雀ウォッチ編集部はお二人にさらに深く知るべく、インタビューをしてきました!
実は私、15年前にある場所でお二人と接点があり、当時を思い出して懐かしく感じながらインタビュー会場に向かったのでした。
黒のカバーが格好良い!
非常に読みやすくサラっと読めた本書ですが、黒を基調としたデザインは一際目を引きます。そして黒・赤・白の3種類のチャイナドレスを着た姉妹の写真も掲載されています。
亜樹:黒が好きですね。一番。強そうですよね(笑)
-----タイトルにある「強さ」が伝わってくる表紙ですが、ファンからの反響はいかがでしょうか?
亜樹:Twitterなどからコメントいただいて「涙が止まらないと」(笑)
瑠美:ホントに~って思うけど(笑)
-----マンガ(近代麻雀コミックス『aki』)で読んだときも衝撃でしたけど、さらに深い部分まで自分達の言葉で語っていますね。ご家族からは何か言われましたか?
瑠美:どうなんでしょう。一応父親には渡したというか、見える所に置いたのですが、読んだかどうかはわかりませんね。
亜樹:どうだろう。読むのかなー?
瑠美:母親は見つけたら読みそうですけど。まだ送ってないので・・・
----どんなに人に読んでもらいたいですか?
亜樹:10代~20代で『この先どうするんだろう』『自分の人生どうするんだろう』と悩んでいる方とか、30代~40代で煮詰まっている方とかにとって何か得られるものがあるかもしれないし、50代~60代で、自分の子供達にどう接して良いか分からない方とか。でも一番読んでピンとくるのは20代~30代の同世代の方かなと思います。
波瀾万丈の生い立ちから安藤満プロに出会い最年少プロに
亜樹プロの章では、序章から大変な生い立ちが綴られています。
7歳の頃。母親がいなくなった。
15歳の頃。お父さんが蒸発した。
住んでいた家もなくなる。
そして東京にたどり着いた亜樹プロは雀荘のドアを叩き、安藤満プロと出会います。
「私もなりたいな。プロに」
安藤満プロと同卓し、すっかり魅せられた亜樹プロは、プロの道を進むことになります。
-----実は15年前、大宮の「きらきら惑星」という雀荘で瑠美プロと一緒に働いていまして・・・おそらく覚えてないでしょうが。
亜樹・瑠美:「おっと!?」
-----本当に一瞬だけ一緒に働いたんですよね。で、私は瑠美プロに卓掃を教わったんですけど(笑)二段倒しをドヤ顔で教わりましたね(笑)
瑠美プロ「本当にすみません・・・(笑)」
当時の私は大学生。雀荘で働くのはとても不安だったのですが、入ったきっかけはやはり、二階堂姉妹がいたから。女性のプロというのは今よりも珍しく、安心感がありました。二階堂姉妹がメディアに登場したからこそ、多くのフォロワーが生まれ、新たなファン層の獲得に繋がったのです。
もうこの道で生きていくしかないという覚悟で乗り越えた
プロデビューから2年目。私は行き詰まった。プロを辞めたいと悩んでいた。
プロとして、懸命に考え抜いて打っているつもりだった。でも結果を残すことはできなかった。
憧れてプロの世界に入ったものの、結果が出ず先が見えてこない日々が続きます。亜樹プロにも1年ほど悩み続けた時期がありました。
----その後、やめたいと思ったことはありますか?
亜樹:この時ほど深く辞めたいと思った事は無いですが、辞めたいというより、辞めた方がいいんじゃないかと思ったことはありますね。プロに向いてないなと。純粋に。
-----それは勝てないから?
亜樹 勝てないというほどでは無かったのですが、プロになりたての頃はプロ意識がなかったので、ただ「なりたい、なりたい」でプロになって。じゃあ、いざプロになったら何をするのかと考えたときに、自分がプロになったらできることはないんじゃないかと思ってしまって。でも、そもそもこんなことを考えている時点で辞めた方がいいんじゃないかと。
瑠美:自分に厳しかったんだね。
亜樹:なりたい、なりたいが先行しすぎちゃったんですね。
-----それ以降は自信が出てきて?
亜樹:その後はタイトルも取れるようになってきて、もうこの道で生きていくしかないという覚悟ができた時ですかね、そういうことを考えないようになったのは。結局、自分に何ができるのかといったら、麻雀しかできないんだと思ったときに、辞めたいとか辞めようとか思わず、この道で頑張っていこうと思いました。
瑠美:辞めるのはいつでもできるしね
亜樹:そう。逃げは考えられるんですよ。プロを辞めたって麻雀を打つことは出来るし。もっと自由な身になれるかもしれないけど、やっぱりプロになりたくてなったわけだし、プロとして頑張っていこうと決めたからには、プロとして成し遂げること、やり続ける覚悟で行こうと。
-----瑠美さんは辞めたいと思ったことはありますか?
瑠美 同じように、麻雀プロってなんだろう、何をするんだろう、何ができるんだろうと考えて、私がいてもいなくても変わらないんじゃないか、という思いが凄くあって、麻雀プロの限界を自分で勝手に決めてしまっていた時期はありましたね。若者にありがちな考え方かもしれませんが。
-----麻雀はなかなか結果が出にくい競技ですからね。
瑠美:自分が理想とするものと周りに求められるギャップもありますし、煮詰まったことはありますね。結局、何ができるか、何がしたいか、自分にできることをやるだけだなと。開き直りなんですかね。
-----落ち込んだときはお互いに相談したりするんでしょうか?
亜樹:しないですね。私は元々人に相談するタイプじゃ無いんですが、落ち込んだり嫌な事があったら自分の中で消化して乗り越えるだけですね。完全に自己完結で終わらせるタイプです。
瑠美:人に話すときは自分で決めた後に話す。背中押して欲しいわけではないし、話さないことの方が多いですかね。『実は辞めたいんだけど・・・』とかはないですね(笑)
麻雀プロは第一に「麻雀」がある
女を売りにしない。というか、できないと言ったほうが正確かもしれない
男女関係のない勝負の世界だと思ってプロ入りしたので、女を売りにすることはしていない
亜樹プロの章には、女性だからというよりは、一人の麻雀プロとして認めてもらいたいという気持ちが強くでています。
-----最近の女流プロの風潮として雑誌のグラビアやDVDの発売など、タレント的な活動も増えて来ましたがどのように感じていますか?
亜樹:今はそういう需要があるから供給があるわけで、悪いことだとは思いません。自分がプロになったときは若いプロがいなかったので、求められることがなかった。例えば私が新人の頃に水着になってくれって言われたら「やだ」って言ってただろうし(笑)若い女流プロが増えたことでそういう需要ができたのかもしれないし、そういう流れになるのは自然なことなのかなと。
瑠美:ただやっぱり麻雀プロは麻雀ありきなので、自分の持っている武器を使うのはいいですけど、麻雀の方も頑張ってね、とは思いますね。
亜樹:まぁそれが第一だとは思いますよ。でもそれは麻雀ファンならみんなわかってる。たとえば凄くかわいくて人気があっても『麻雀はダメだよね』っていうファンも増えて来て。映像番組が増えて、麻雀ファンの目も肥えてきてるんですよね。」
瑠美「いまはテレビ・ネットで対局を見てという感じになってきて、麻雀プロにとっては良い時代になってきているなと思います。」
----お二人の出演している映像を見ると、アガリや考える場面で表情を作ったり、「見られている」ことをとても意識しているなというのは感じます。
亜樹:同じ牌を切るにしても、ノータイムで切るのと、一拍置くのと、長考するのとでは、見ている人の印象って全然違うじゃないですか。そういうところも自分を伝えられる部分だと思っています。
-----見ている人も一緒に考えられるというのはありますしね。
普及のためにはルールを統一すべき
プロのルールだけは統一した方がいいと考えている
まずはプロだけでもルールを統一できれば、ファンの方にもデータ分析という楽しみ方も提供でき、賭けなくても楽しめることを知るきっかけにつながるのではないかと思っている。
瑠美プロ、亜樹プロともに「麻雀ルールの統一」について語っていることから、強い思いを感じます。
-----ぶっちゃけ統一するにはどうしたら良いですかね?
亜樹:団体を一つにするしかないですかね(笑)
瑠美:力技で(笑)
-----それはずいぶん思い切った(笑)
瑠美:思考が浅いからそうなってしまうのですが、一つにした方が業界的にも格が上がるんじゃないかなと。色々ルールがあるのも良い部分はあるのですが、一つの団体としてルールを定めた方がより良いのでは。
亜樹:麻雀は本当に敷居が高い。まずルールが難しい。麻雀牌の種類が多い。役が多い。さらに、この雀荘だったらこのルールはOK、これはダメということがあり混乱する人もいる。それがとてもやっかいだなと。競技麻雀で一発裏ドラ無しが全てになったら、それはそれで面白くない。私は好きだけど、いまの主流は一発裏ドラありじゃないですか。ある程度の統一性を持たせないと、見ている側が混乱を招きやすいですよね。
瑠美:麻雀業界の格を上げるためには、簡略化できるところは簡略化して、全体はすっきりさせたいなと思います。
亜樹;ルールによって打ち方が変わるわけで、麻雀そのものが大きく変わってくるのもどうなのかなと。プロでさえルールの確認をするわけですよ。対局中に勘違いするわけで。
-----是非ですね、発信力のあるお二人に引っ張って頂いて、少しずつ変えていただきたいですね(笑)
瑠美「基本が大事だと再確認」亜樹「育児をすることで我慢強くなった」
-----「明日は今日より強くなる」というタイトルですが、最近身につけたこと強くなったことはありますか?
瑠美:「基本が大事」ということを再確認しました(大きくうなずきながら)つい先日のテレビ対局でミスをしまして・・・
亜樹:あー、あの対局!
瑠美:やはり基本が大事なんですね。ドラ切ろう!ドラ切ろう!
亜樹:私の子供は手がかからない方なんですが、ちょうどイヤイヤ期が来てまして、こっちもイラッとしちゃうこともあるんですが、色んな育児情報に目を通して、こっちが理解することで向こうの反抗期も理解することができるんですね。昨日のわがままは我慢できなかったけど、今日のわがままは乗り越えられた部分はありますね。育児をすることで我慢強くなりました。麻雀で鍛えられてると思ったのですが、麻雀の理不尽さとはまた違った理不尽さがあるので。これも人生の中の一つの試練として受け入れようと思ってます。
-----育児と麻雀にも共通点があるわけですね。では次回作は育児本を期待してます(笑)
読者やファンへのメッセージ
瑠美:煮詰まったり自分がダメだなと思ったときは、マイナスなことを考えずに、自分の持っている物を確認して、前に進んでいただきたいなと思います
亜樹:この本を読むと、こういう人がいるんだなとか、こういう人生を経てこういうことになることもあるんだなと発見はあると思うので、二階堂姉妹のファンの方とかも知らない部分が知らなかった部分があるかと思うので、色んな年代の方に読んでいただきたいと思っています。
-----ありがとうございました!
すでに女流プロというくくりを飛び越えて、麻雀プロを代表する立場となっている二階堂姉妹ですが、本の内容や発言からも、麻雀界の将来を考えた内容が多かったのが印象的で、デビュー当時とはまた意識も変わってきているようです。これまでも先頭を走り続けてきたお二人ですが、まだまだ課題の多い麻雀界でお二人の発信力は偉大!持ち前のポジティブさでこのまま走り続けていただきたいものです!
・二階堂瑠美(にかいどう るみ)
神奈川県出身。日本プロ麻雀連盟所属。日本プロ麻雀連盟16期生としてプロ試験に合格。以来、「天衣無縫」の異名を取り、プロ雀士として活躍する。主なタイトルに、「2013年第11期プロクイーン」「2007年第一期・夕刊フジ杯麻雀女王」「2006年第17期プロ最強位」など。実妹の亜樹と共に「二階堂姉妹」として人気を博し、多数のメディアやイベントにも出演。幅広い世代に麻雀の普及を図るために、積極的な活動も展開している。
・二階堂亜樹(にかいどう あき)
神奈川県出身。日本プロ麻雀連盟所属。日本プロ麻雀連盟15期生としてプロ試験に合格。以来、「卓上の舞姫」の異名を取り、プロ雀士として活躍する。主なタイトルに、「2005年第3期プロクイーン」「2006年モンド21王座」「2007年第2期・2008年第3期女流桜花」など。姉同様、幅広い世代に麻雀の普及を図るために、積極的な活動を展開している。
『明日は、今日より強くなる 女流プロ雀士 二階堂姉妹の流儀』(KADOKAWA)
http://www.amazon.co.jp/dp/404601525X
イベント情報
2016/08/03(水)19:30 新宿ロフトプラスワンでトークショー開催
東西ロフトプラスワンに遂に登場!勝負師としての哲学からこれまでの生い立ちまで、二階堂姉妹の真実を赤裸々に語ったエッセイ「明日は、今日より強くなる」の発売を記念しての、姉妹で初のトークライブ。 二階堂瑠美と亜樹の「リアル」に迫ります。※本の販売&サイン会あり!!
▼チケットの申し込み
http://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010163P0108P002196082P0050001P006001P0030001
~「明日は、今日より強くなる」書籍発売記念トークライブ~
【会場】ロフトプラスワン (新宿) http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/
【公演日】2016/08/03(水)19:30
【出演】二階堂瑠美、二階堂亜樹
【進行】梶本琢程