労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置について
先日、大手広告代理店の過労自殺事件の報道を見て、驚かれた方も多いのではないでしょうか。痛ましい事件であるとともに、まだ記憶に新しい方も多いのではないかと思います。厚生労働省は、昨年末に、“「過労死等ゼロ」緊急対策”として、
①違法な長時間労働を許さない取組の強化
②メンタルヘルス・パワハラ防止対策のための取組の強化
③社会全体で過労死等ゼロを目指す取組の強化
などを進めることを公表しました。
本年に入って、これらの取組みが具体化してきており、その一環として「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が策定・公表されました。働き方改革の動向も気になりますが、まずは、各企業における「労働時間の適正把握」が、長時間労働対策の基本といえます。新たなガイドラインのポイントを紹介します。
〈補足〉このガイドラインの内容は、従前からある通達(労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準)をベースに、大手広告代理店の過労自殺事件で問題になった事項などを踏まえ、内容の追加・補強を行ったものになっています。
<労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインのポイント>
●労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務を有している。しかしながら、現状をみると、労働時間の把握に係る自己申告制(労働者が自己の労働時間を自主的に申告することにより労働時間を把握するもの。以下同じ。)の不適正な運用等に伴い、同法に違反する過重な長時間労働や割増賃金の未払いといった問題が生じている。そこで、本ガイドラインで、使用者が講ずべき措置を具体的に明らかにする。
●使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること。その原則的な方法は次のとおり。
ア 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
イ タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。
●上記ア、イの方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は、労働者や労働時間の管理者に対して十分な説明を行うとともに、「自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をする」などの措置を講ずること。
●労働基準法の定める法定労働時間や時間外労働に関する労使協定(いわゆる36協定)により延長することができる時間数を遵守することは当然であるが、実際には延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、実際に労働時間を管理する者や労働者等において、慣習的に行われていないかについても確認すること。
●使用者は、賃金台帳を調製し、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入しなければならないこと。賃金台帳にこれらの事項を記入していない場合や、故意に虚偽の労働時間数を記入した場合は、労働基準法に基づき、30万円以下の罰金に処されること。
*最後に
大手広告代理店の1件があってから、様々な企業が同様の内容にて取り上げられております。労働局や労働基準監督署のチェックも今後はより厳しくなると思われます。従業員の労働時間の実態について、今一度管理を徹底し、時間外労働が多い傾向にある場合は従業員を増員するなどの対策をとっていくことをおすすめいたします。
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