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釣師 ーーー「東大を出たけれど」須田良規

釣師 ーーー「東大を出たけれど」須田良規

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「東大を出たけれど」とは
  • 近代麻雀で連載されていた、須田良規プロ(日本プロ麻雀協会)の著作全108話。麻雀ウォッチにて8話分掲載。
  • 作品の発表経緯はインタビューをご覧下さい。

 昨今巷に溢れている麻雀のスタイルは、相手の手など考えない、独りよがりなものだ。枚数優先のデジタルな棒テン即リー戦術は、確かに現代の祝儀ルールに最適だし、穿った物言いをすれば、個人主義の台頭した世相を反映しているような気もする。
 しかし、全員が相手の形の類推や自分の手の隠蔽に無頓着であれば、麻雀は本当に味気ないものだ。お互いがただ好きに打って、気紛れな牌の潮流に結果を任せればよい。
 麻雀は、釣り手と魚の駆け引きのようなものである。そう思うのは、昔裏メンにいたTの影響なのだと思う。
 
 Tはから1枚切って聴牌というところ。対面が1枚早々にを切っている。当時若輩メンバーだった私は、単純に枚数有利でカン受けにするかな、と後ろで眺めていた。Tはさっと卓を一瞥して、打とする。数巡後に対面がをツモ切って、Tの狙いが理解できた。
 
 例えば、場に生牌の両面受けと、場に1、2枚切られている両面受けなら、どちらを残すか。安直に枚数だけ見れば前者であろうが、彼の持論では、攻撃的に有利なのは絶対に後者だ。再度引いた者が切るのは勿論のこと、他に引いた者も、河に出ている牌の方が切りやすい。中盤まで生牌ならば固められていることも意識して、枚数にとらわれずに竿を一旦上げるべきなのだ。

 Tはいつも、後々相手が切るであろう、切らざるを得ないであろう牌で待つことを私に勧めていた。勿論それは、変に引っ掛けたり字牌単騎にしたりといった、単発狙いの歪んだ釣法に固執することではない。投網を打つようにツモ和了れれば勿論よいが、尚且つ楽に掛かるスポットを選ぶに越したことはないのである。
 
 また、相手が打ちやすい状況、打つだけの理由を作ってやることもTは巧みだった。
 私が同卓しているとき、下家のTが序盤にを叩いた。
 河は索子と筒子がこれでもかとバラ打ちしてあり、どう見ても萬子の混一である。私はというと、中盤引いたの処遇に窮していた。
 私も押したい手だったのだが、ドラがであり、萬子の混一に打つのはややためらわれた。を浮かせたまま数巡が進み、その間ツモ切りをしていたTが、ふと手出しでを抜く。
 混一じゃなかったのか――。への警戒が一瞬薄れた。それならたとえ当たっても大したことはないだろう。次巡にを放してみた。
「釣れたよ」
 待ちかねたようなTの声。やっぱり当たりか。まあ染まってないなら・・、と倒された手を見る。
 (ポン) ドラ

 赤赤ドラの満貫。
「この河じゃ萬子にしか見えないからな。持ってきたんで、手出ししたんだ。空切りの意味でな。止めていたんだろうけど、混一じゃないと思えば少しはお前も切りやすいだろ」
 掌の上で踊らされている、とはこういうことをいうのだろう。心理の機微まで見透かされて、未熟な稚魚は、ただただうなだれるしかなかった。

 臆病で、なかなか手を出さない小賢しい獲物も、少しの工夫で簡単に我欲をさらけ出す。卓上の太公望からすれば、手出し一つの安い撒き餌で充分だったのだ。

全108話公開 須田良規プロのnoteはコチラ

 

プロフィール

須田良規(すだ よしき、1975年8月6日 - )島根県出身。東京大学工学部卒業。日本プロ麻雀協会(1期後期入会)A1リーグ所属。
代表作『東大を出たけれど』の原作を自身のnoteで108話公開。

この記事のライター

麻雀ウォッチ編集部
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