こんにちは、近代麻雀でコラムを30年くらい書いている山崎一夫です。
かつて「麻雀で食え!」という戦術を20年くらい連載しており、単行本にも3冊なってます。
現在はそれに代わって「でかぴん麻雀入門」を連載してます。
ここではかつての記事を再録し、現代に合わせた新たなコメントを付けています。よろしくお願いします。
昭和の雀ゴロたち2
ぼくが学生時代に麻雀の手ほどきを受けたのが、赤い鬼瓦のような顔をした、中年男性の朴(パク)さん。その当時は、インターネットなどもちろん無い時代なので、麻雀に限らず、情報格差や技術格差が大きい時代です。
麻雀戦術は、小島武夫プロや田村光昭プロなどが、創刊直後の近代麻雀(活字誌)や週刊週刊大衆などに連載しており、大人気でした。イカサマのやり方に関しては、小島プロが、すでにテレビなどで公開していました。
牌効率や期待値という単語はまだ登場しておらず、どちらかというと、勝負の流れを重視する戦術が多かった印象です。
当時は手積み時代の末期で、積み込みなどのイカサマをやる雀ゴロたちが、生き残っていたり、テレビで覚えた積み込みを試してみる若者が、増えた時代でもあります。
テレビや雑誌からの情報があったとはいえ、まだまだ情報格差や技術格差は大きく、麻雀のキャリアが5年も違うと、圧倒的な実力の差がありました。
朴さんはそんな時代に、イカサマをやる新参者を、自分の息のかかった店から、追い出すのを仕事にしておりました。
新参の若い男性が、白布を張った卓上に、ドラのを強打。 チーポンが入らないのを確認してから「リーチ」と点棒を投げた。
「ポン」
朴さんは、若者に発声させてからドラをポン。
ポン ドラ
ツモ切り状態の若者から、ハネマンを直撃したんです。
朴さんと同程度のキャリアの持ち主なら、この時点で朴さんの実力に気付くハズですが、その若者は、おそらくテレビで紹介されたイカサマをマネしただけ、というレベルだったようです。
次の半チャン。今度は朴さんがを早めにポンしている。若者が前回と同じく、ドラのをやや斜めに強打。チーポンが入らず、下家がツモったタイミングで、黙ってリーチ棒を出した。
「リーチかい?」
「見りゃわかるだろ」
「オッケー」
ちょうど朴さんのヤマにかかって、リーチ者がをツモ切り。
「ポン!」
朴さんの手牌は、実はトイツで持ってたドラのをポンせずにこう。
ポン ポン ドラ
リーチの新参者に対して、赤い鬼瓦は、ニタ~ッと笑いかけたのでありました。
大技は素人しか使わない
朴さんとは一緒によく飲みに行って、麻雀のことを教わりました。
「朴さんは毎日だいたい勝ってるけど、朴さんのヤマって、特に怪しくないですよね」
日ごろ、疑問に感じてることを聞いてみました。
「テレビで紹介してる積み込みは、テレビ向けに分かりやすいようにやってるだけで、本職はチンイツだの大三元だの、目立つようなことはしない」
「へー」
「自分のヤマに積み込みなんかしなくても、相手が一生懸命積み込んでいるのを見て、記憶しておくほうが役に立つ」
朴さんによると、卓上の見えてる牌を、全体的に記憶しておくほうがはるかに効果的で、来るか来ないか分からない自分のヤマに毎回細工するのは、労力とリスクとリターンを考えると、ワリに合わないんだそうです。
「自分のヤマにせいぜいを1メンツ、をどこかに固めておくくらい。これでから上の三色とマンズのイッツーが無くなる。手作りと読みの制度が格段に上がる」
なるほど。から上の3種類の三色を無くし、自分は他人のヤマの記憶も合わせて、タンピン系で、一番端寄りの234の三色を狙うと。
「朴さんて、いつも飲んだくれてて、失礼ながら記憶力が良さそうには見えないんですけど」
「いや実は記憶してるという感じはオレにもない。相手が積み込んだ牌を見ても、勝負中に常に覚えているワケじゃない。ただ、ツモがそこに近づいて行くと、さっき見た映像がよみがえって来る」
それを聞いた時「自分には無理だ」と思いました。
映像で記憶できるのは、たぶん特殊な才能なんでしょうね。 話は変わりますが、このコーナーのイラストを書いてくれている、漫画化の西原理恵子さんも、そんな才能に極めて優れているように思います。
西原さんとは、これまで一緒にたくさんの現場取材をしてきましたが、西原さんがメモを取っているのを、一度も見たことがありません。
ところが後で漫画を読むと、ぼくがすっかり忘れているようが細部のことまで、漫画になっているんです。
おそらく、仕事机に向かったら、映像が自在に再現されるんじゃないかと思います。
イラスト:西原理恵子
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