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成海有紗の134秒【シンデレラファイト シーズン4 SemiFinal #1 担当記者・中島由矩】

成海有紗の134秒【シンデレラファイト シーズン4 SemiFinal #1 担当記者・中島由矩】

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4年連続でこのシンデレラファイトを彩っている高島芽衣成海有紗に、昨年のシーズン3予選Finalで涙を飲み、今年初めて本戦を戦っている内村翠・松浦真恋の新鋭が挑む。

先手を取り、このSemiFinal♯1の主導権を握ったのは高島だった。

東1局0本場にいきなりジュンチャンをテンパイすると、[⑨]タンキで即リーチを決断。

松浦から8000を打ち取って、Final進出を大きく手繰り寄せる。

高島は東3局0本場にも、場風の[東]を暗刻にしたテンパイを入れると、またもや即リーチすると、

[⑧]を一発でツモアガリ。2000・4000を加点した。

高島の独走に待ったをかけたのは内村。東4局0本場の親番で、ダブドラの[赤5]を生かした、ピンフ・赤赤・ドラの手を、5巡目にリーチ。

東3局の高島同様、ダマテンでの小さな加点ではなく、6000オールツモをねらった前がかりな攻撃を見せた。

成海の[二]トイツ落としをとらえて12000の出アガリ。

こうして、トップでのFinal進出をねらう高島・内村、ラス回避したい松浦・成海の構図ができ上がった。

しかし、それが崩れたのは、南3局0本場。

親番の松浦が、リーチ・ドラ・赤赤の12000を高島から出アガリ。トップ目は内村に、ラス目は親番のない成海が押しつけられる形になる。

ところで、このシンデレラファイトではないものの、別の麻雀大会において、持ち時間制が導入されるというニュースが、先日麻雀界を駆け巡った。1人の持ち時間は6分だという。

ラス目の成海有紗が、南4局1本場の勝負所1手番で使った時間は、実に2分13秒98だった。1半荘、ではなく、1局、でもなく、1手番、だ。1牌持ってきてから、1牌切るまでの時間。込められた夢・希望・読み・恐れ・不安・葛藤。成海が麻雀を始めてからの6年間が、ギュッと詰まった134秒間。

麻雀というテーブルゲームにおける、命懸けの選択が、そこにはあった。

【南4局1本場】

東家・内村翠 42600
南家・成海有紗 2800
西家・高島芽衣 35100
北家・松浦真恋 19500

事前インタビューでは

「みんなにドキドキさせないぞっ。」

とグーを握って見せた成海が、多くのファンの心臓をわしづかみにし、本人も悩みに悩み抜いた名シーンを紹介しよう。

南4局1本場、まず[5]タンキのチートイツで先制リーチをかけたのは松浦。

[赤5]をツモって裏裏を乗せれば、倍満ツモで、子の高島とは20400点、親の内村とは24400点変わる。つまり、一躍トップに立って、この♯1を通過できる計算だ。ラス目の成海とは16700点差あるし、ここは一攫千金をねらう。

その時、成海の手牌はこの通り。

ドラが[1]なので、ジュンチャン・三色同順・ドラドラなどを目指した手組みにしていたが、実はこのとき松浦から出たリーチ棒で、少し条件が緩和されていた。

次に追いかけリーチを宣言したのは高島。

松浦からリーチ棒が出たことにより、リーチ・チートイツ・赤の6400は6700で、どこから出てもトップ目の内村をかわせるようになった。決して[3]タンキに自信があったわけではないだろうが、松浦同様リターンが大きいと見て、勝負のリーチに踏み切る。この[3]が山に2枚あった。

2800点持ちでラス目の成海は、失うものが何もない。そんな中、最後のチャンスが訪れる。筆者は、スマホをストップウォッチの画面にした。

このとき成海が思い描いていたのは、2つのエンディングだった。

【case1・跳満ツモによるラス抜け】

画像下の点棒表示は

松浦真恋 19500

となっているが、松浦はリーチ棒を出しているから、この時点で点箱には18500点あることになる。成海が3000・6000は3100・6100をツモると、松浦は15400点だ。一方、成海は2800点持ちだから、跳満をツモって12300を加点すると、15100点。ここに、松浦と高島のリーチ棒が加わると、17100点で、逆転となる。

【️case2・満貫直撃によるラス抜け】

上のcase1同様、松浦の点箱には18500点あり、ここから8000は8300を直撃すると、松浦は点棒を吐き出して10200点に。一方、成海は2800点持ちに8300を加点すると、11100点。これだけで逆転しているが、さらに松浦と高島のリーチ棒を加えて13100点だ。これまたラスを免れることとなる。

成海有紗は協会20期前期で、関東と関西で分かれているものの、筆者の同期だ。

4年前の、シンデレラファイト・シーズン1・DAY2では、オーラスにかけたリーチが物議を醸したこともあった。逆転条件が残っていなかったのだ。アガリにならなくて本当によかったと、当時は筆者も胸をなでおろしたものだ。

その後成海は、第15期雀王の角谷ヨウスケさんに師事し、協会関西本部の仲間たちとともに、質・量ともに最高の環境で麻雀の勉強を積み重ねてきた。

もし打[3]とすると、高島のチートイツに当たり。しかし、山に残っている枚数を考えると、[⑥]の場況がよく、[3]は自身で2枚使っている、いわゆる中ぶくれの形だ。積極的にアガリを取りにいくなら、打[3]となるだろう。

自身のアガリだけを真っ直ぐに考えるなら、打[3]とするのがマジョリティで、我々視聴者はその先の世界を見ることはできないはずだった。

133秒98もの時間が経ったあと、成海の口から「リーチ。」の発声とともに放たれた牌は、[3]ではなく[⑥]。まずは、1つ目のハードルである放銃回避をクリアだ。

2つ目のハードルである、ラス牌の[3]を引きにいく。

麻雀において「たられば」は御法度だが、松浦が一発で[⑥]をつかむと、

(なんで[⑥]タンキにしなかったんだよ!)

(いや、打[3]してたら高島に放銃じゃん!)

筆者はもう、気持ちが、追いつかない。スクショを撮る手は震え、全身がじんわりと汗ばむ。

[⑥]を見る成海を、スイッチャーが機敏にねらう。

そこには、明らかにクラッときている成海の表情があった。

(いやいやいや、後悔しないでくれ!)

[⑥]タンキ選んでたら、リーチ宣言牌がつかまってるから!)

本当に、気持ちが、追いついてこない。自分が自分じゃないような。

高島と成海が、それぞれの悲願達成のために欲した、山にたった1枚の[3]は、ついぞ最後まで姿を見せなかった。松浦も含めた三者痛み分けの流局で、熱戦にピリオドが打たれる。

開かれた成海の手を見た高島の表情がとてもよかったので、最後に1枚だけ使わせてもらいたい。見てもらいたい。

(へぇ、止めたんだ。やるじゃん。)

(May’sBar入るの遅くなるけど、♯3頑張るかー。)

という感じだろうか。

勝手にアテレコしてごめんなさい。

SemiFinal♯1でトップを獲得した内村翠は、8人の中で1番最初にFinal進出を決めた。内村は、BEST32・BEST16ともにトップで通過しており、次戦のFinalは5連勝でのパーフェクト優勝がかかる。達成すれば、もちろんシンデレラファイト初だ。

2着の高島芽衣と3着の松浦真恋は、♯3に回り、Final行き最後の切符を争う。トップが必須だった今回とは異なり、今度は2枚あるから、しっかりつかんでもらいたい。

ラスの成海有紗は、ここまで。麻雀プロとして、シンデレラファイトとともにここまで成長してきた成海だが、Finalを前に矢折れ刀尽きた。

次は8月15日(金)19:00〜、今回と同じくABEMAでのFinalとなる。

この夏最後に打ち上がる花火を、太陽に向かって気高く咲く向日葵を、ガラスの靴を手にするシンデレラを、みんなで一緒に見届けよう。

#2,#3観戦記

ダブル遥(はるか)対決の決着【シンデレラファイト シーズン4 SemiFinal #2 担当記者・神尾美智子】

お咎めなしの二人が目指した頂【シンデレラファイト シーズン4 SemiFinal #3 担当記者・坪川義昭】

公式HP

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