今回から、「ノーテン(主に1シャンテン)時の押し引き判断」の補足に入ります。
再三申していますように、「テンパイなら多くの場合は押し、ノーテンなら多くの場合は降り」というのが押し引きの基本です。テンパイしやすい1シャンテンであっても、テンパイするまでに危険牌を押し、テンパイで更に危険牌を押すことになるので、悪形テンパイよりアガリ率、放銃率両方で劣ることになります(巡目が遅い場合はなおさらアガリ率は下がる)。
よってノーテンから押せるケースは基本的に、「受け入れが広く高打点が狙える1シャンテンで、残り巡目も十分にある」場合に限られます。
しかし、「ノーテンなら基本は降り」というセオリーがかなり浸透してきたこともあり、テンパイしてないからと言って安易にアガリの可能性を諦めてただベタオリしてしまう打ち手も多く見かけます。
「テンパイなら押す」が基本であるからこそ、実戦ではテンパイからでも降り寄りになる要因を意識することが重要であったように、「1シャンテンなら降り」が基本であるからこそ、実戦では、1シャンテンだけど押し寄りになる要因や、比較的安全な牌を切るにしても、アガリの目を残すことができるかを意識することも重要になります。
例えば、「科学する麻雀」で取り上げられていたような1シャンテンの押し引き基準は、現在では引き過ぎであることが分かっています。引き過ぎの理由の一つに、「放銃した時はツモの1翻がつかないので、放銃平均点がアガリ平均点より低くなる」という要因があることは現麻本講座29でも触れましたが、もう一つ大きな理由として、「危険牌を押す場合は最後まで押す」ことを前提としていたというのが挙げられます。
実際は、途中までは押すが、巡目が経って手牌のアガリ率も切る牌の放銃率も高くなったので降りに転じるという選択をとることもできるので、特に巡目が早い場合は1シャンテンから押せることも増えます。
「最後まで押し」「最初から降り」だけでなく、「途中まで押し」という選択肢も考慮に入るので、押し引き判断が更に難しくなります。最初から降りておけばミスは少ないので、押し引きに自信がないうちは、ノーテンからは「降りすぎ」くらいの方が結果を出しやすいかもしれません。しかし、より強くなることを目指すうえでは、「1シャンテンでいつ押すのか」を意識することが重要になるということは言えそうです。
1シャンテンからの押し引き判断が難しいもう1つの理由は、テンパイの時はあがった時の平均打点と待ちの強さ(良形か悪形か、悪形の中でも比較的アガリやすいかどうか)で判断すれば多くの場合事足りますが、1シャンテンの場合は待ちの強さだけでなく、どの程度テンパイしやすいか、テンパイした場合に切る牌の危険度はどの程度か、降りないにしても何を切って1シャンテンを維持するのかといったように、テンパイ時に比べ考慮すべき要素が多いこと。
改めて、手作りの項目で取り上げたような手牌のパターン分けを押さえるとともに、1シャンテン時の押し引き判断について掘り下げていくことにします。
この連載の目次ページを見る