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ネマタの戦術本レビュー第385回「麻雀序盤の鉄戦略 著:独歩 しゅかつ すずめクレイジー 平澤元気その10」

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 ケース19

 「絞り」は「アシスト」に比べて結果に影響を与えにくい(アシストであがらせようとすれば下家のアガリ率を大きく上げることができるが、下家に鳴かせまいと絞ってもツモは防げないため)です。

 しかし、高い手はアガられるだけ損なので、残り局数に関わらず使うケースがあることから利用頻度自体はアシストより多いです。

 一般的に「絞り」があまり得策でないのは。絞った相手のアガリを阻止できても、その結果別の他家にアガられてしまう可能性が上がり、鳴き手よりメンゼンの方が高いことが多いのでツモられた時の失点がかえって大きくなる恐れがあるためです。

 とはいえ、下家は染め手傾向で、役牌ポンなら3900以上、チンイツなら8000以上確定。平均的なリーチと比べても打点は大差ありません。十分アガリ目がある段階で絞るのは自分のアガリの可能性を減らす分損と言えますが、絞った結果毎回他家リーチにツモられるわけではないので、全くアガリ目の無い手牌から切るのは損であるとも言えます。

 よって牌姿Aからは絞る、BCは絞らずに役牌切りとします。役牌を鳴かれた場合は、この段階で放銃のリスクがある牌まで切るのは見合わないとみて他の役牌は一旦止めて、後々役牌が通るなり、押すに見合う手になるなりしてから切ることにします。

 ケース20

 今回は「役をつける鳴き」なので、雀頭が無くなる鳴きとはいえそれほど鳴きが悪いというわけではありません。いわゆる「鳴き過ぎ」の打ち手は、アガリまで遠いうえに、役をつけることも難しいのでアガリやすくなっているかも怪しい(メンゼンならテンパイさえすればリーチ、メンゼンツモで役をつけられる)、麻雀本の例題には挙げられないであろう手牌からでも鳴いているところを少なからず見受けられます。

 アガリまでかなり厳しい手だとしても、もしテンパイできるようであればメンゼンの方が高打点になりやすい分有利ですし、ほとんどアガリ目が無く、テンパイ料を狙うのも厳しい手牌であれば、鳴くことは他家のツモ番を増やすだけ損な選択と言えます。鳴き基準は「どのような手牌、局面で、何なら鳴いた方が有利か」という形で押さえておくようにしましょう。

 Bのようにリャンメン×2の1シャンテンで、アンコや雀頭を作りやすいメンツ候補が無い場合は、「鳴くとチーして単騎テンパイが取れる」だけ若干ポンした方がアガリやすいという程度なので、打点を上げるメリットが無い場合を除き巡目によらずはスルーします。

 手牌Aは手牌の守備力、Cは打点をどの程度重視するかで判断が変わりそうです。Aはメンゼンで進めてものみに比べてさほどよい手にならず、序盤なら後々安牌を抱えればさほど守備力を残さなくてもよいとみてポン打。Cはリャンメン×2の時点でまずまずのアガリ率が見込めるので、5巡目ならもう少しメンゼンで進めるつもりでスルーでしょうか。

本記事に関するご紹介

例えば非常にいい配牌をもらったとき、これは一直線にアガリに向かえばいいだけなので、中級以上の打ち手であれば差がつきにくいですし、最終的にはロジカルに正解がでる部分です。
問題は悪い配牌をもらったとき。この場合はアガリに向かうのか守備に重心を置くのか、アガリに向かうにしてもどの手役を狙うのか(どの手役も遠い)、第1打から考えるべきことが多くなり、不確定要素も増えます。そしてこのジャンルは麻雀研究においても未開拓の分野です。
そして、この「超序盤の戦略」こそ、強者と弱者の差がつく、残された分野なのです。
 
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この記事のライター

ネマタ
浄土真宗本願寺派の僧侶。麻雀戦術サイト「現代麻雀技術論」の著者。
同サイトは日本麻雀ブログ大賞2009で1位に。
1984年佐賀県生まれ。
東京大学文学部中退。

著書:「勝つための現代麻雀技術論」「もっと勝つための現代麻雀技術論 実戦編

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