麻雀で気持ちよい瞬間のひとつは、「ツモ」と発声するときではないでしょうか。3人の視線が自分の手牌に集まり、一躍、主人公になれます。
Mリーグで、フェニックスの近藤誠一選手が大三元をツモった際の「カッ」は有名ですが(こちらのページから動画を見られます)、イメージ通りの牌をツモる感覚は、言葉にあらわせないですね。
メンゼンだと「ツモ」は役なので点数がアップし、他家3人から点棒をもらえる効果も大きいです。同時に3人と差をつけられる(あるいは縮められる)ので、トップに近づきます。
悩ましいのは、今どの牌をツモるかは、運によることです。一発でツモることもあれば、広い待ちなのに延々とツモれないこともあります。三面張でリーチをかけたのに、カンチャン待ちで追いかけられ、一発で放銃する、というような悲劇も起こります。
それゆえ、ときに麻雀は「運ゲー」と呼ばれることもあります。Mリーグのサクラナイツで活躍する岡田紗佳選手がインタビュー記事で語っているように、ときに理不尽な競技なのです。
だから、少しでも運を呼び寄せようと、私も、対局前に神社にお参りして、4連続トップを念じてお賽銭を1111円にしてみたり、「ゴーゴーカレー」の「必勝カレー」(カツが2枚のっている)を食べてみたりするわけですね。
それはさておき、何か技術的にできることはないでしょうか?
もちろん、あります。
1個の玉を引ける抽選で、2つの袋があるとしましょう。
A 10個の玉が入っていて、うち2個が当たり
B 10個の玉が入っていて、うち3個が当たり
どちらを選んでも良いなら、当然Bを選びますよね。Aの当選確率は20%、Bは30%で、Bの方が当たりやすいからです。いま当たるかは運次第ですが、抽選を繰り返して1万回引いたとすると、当たりはAは2000回、Bは3000回に近い値となり、長い目でみるとかなりの差がつきます。
そして、麻雀においては、自分の力で、Bの袋を用意できるのです。Aしか用意できない人と、Bを用意できる人が戦えば、長期的には後者が勝ちます。
具体的に考えてみましょう。
手作りの途中で、か、のどちらかのカンチャンターツを切るとします。
将来をツモれそうならを残しますし、をツモれそうならを残します。
何の情報もなければ、とは同じ確率なので、どちらを切っても同じ。運任せです。
が、卓上には毎巡、他家が切った牌が増えます。この情報が判断材料になります。チェックポイントは、主に3つあります。
1 既に見えている枚数が多いと、ツモりにくい
もし、既にが4枚見えているなら、今後をツモれる確率はゼロです。当たり前の話ではありますが、ぼんやりしていると見逃すこともあります。
自分が欲しいキー牌が何枚見えているかは、常に確認するのがお勧めです。4枚切れはもちろん、3枚切れでも残り1枚しかないので、なかなか厳しいといえます。
2 他家が序盤に切っている牌の周辺は、ツモりやすい
もし、配牌でやがあれば、いきなりやを切ることは少ないでしょう。
裏返せば、1~3巡目ぐらいまでにやを切っている他家がいたら、その人の手にはがない可能性が高い、といえます。
他家が持っていないならば、残りのツモ山の中にが残っており、ツモれる確率が高いと推測できます。
他家のうち2人以上が序盤にやを切っているなら、をツモれる期待がより高まります。
3 他家がホンイツやチンイツを狙っていると、その色の牌はツモりにくい
例えば、他家が切った牌が…のように並んでいると、マンズのホンイツやチンイツを狙っていると推測できます。
ということは、その人はマンズを多く持っていますし、他家も警戒するので、マンズを手の中に抱えがちになります。つまり、将来マンズをツモれる確率は下がるので、他の色で待った方が得策になります。
また、第23回で紹介したように、序盤は孤立しているスジ同士の牌を切ることが多いので、最初にを切っている人がいると、を持っている可能性が少し高く、将来をツモれる確率が少し下がる、という読み方もあります。
これらの推測を総合して、ある牌が山の中に多く残っていると思われる状態を、「場況(ばきょう)が良い」と表現することがあります。放送対局の解説などで「の場況が良いですね」というのは、「山の中にがいっぱいありそうですね」という意味です。
これらの技術を「山読み」といい、実力者は山読みによって、わずかでも確率をあげようとしています。
確率についてフラットな感覚を身につけていると、メンタル面でも役立ちます。もしある日、ついていない状態が続いたとしても、「長期的には有利な選択がしている」という自信があれば、揺らぐことがないからです。
A 10個の玉が入っていて、うち2個が当たり
B 10個の玉が入っていて、うち3個が当たり
の選択肢があって、なぜかAで当たりが連続し、Bは全く当たらない、、、ということは、短期的には起こりえます。ただ、だからといって「今日はAを選んでみようか」と揺らぐのは、長い目でみると負け組になってしまいます。
卓上のヒントに目をこらせば、自力でツモれる確率をあげられるのも、麻雀の醍醐味の一つです。
次回は、重要な「押し引き」の話を紹介します。