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卓上でヨシ!麻雀暗記ノート 第23回 牌効率(その6) 筋同士で牌を持たない、からの応用

卓上でヨシ!麻雀暗記ノート 第23回 牌効率(その6) 筋同士で牌を持たない、からの応用

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「筋」という日本語は、意味が多彩で、海外の方には説明しにくい言葉の一つですね。

「肉の筋切りをする」「彼の絵は筋がいい」「筋の通った話」「肩の筋が凝る」「駅に行く道筋」など、どれも意味が違います。新聞記事では、情報源をぼかす際などに「消息筋によると…」と書くこともあります。
ややマニアな分野では、鉄道のダイヤを「スジ」ということがあります。ダイヤを作る社員は「スジ屋」と呼びます。興味のある方は「鉄道 スジ」の2語で検索してみてください。一瞬で深い森のなかに入っていけることでしょう。

さて、麻雀を習い始めてすぐに出あうのも、この「スジ」という言葉です。

[一][四] [②][⑤] [3][6] [四][七] [⑤][⑧] [6][9]

のように、間に2つはさんだペアの数牌を指し、両面待ちではセットで待ちになります。

初心者の方は、「相手からリーチがかかってオリる時は、まずは現物(その人が切っている牌そのもの。「げんぶつ」と読みます)か、切っている牌のスジを切りましょう。スジを切ると、少なくとも両面待ちには当たらない(もし当たるならフリテンになるため)ので、他の牌よりは安全」と習うと思います。

これはとても大事な考え方で、この連載でも後日、守備編で改めて触れますが、今日は、この 「スジ」が手作りの際も重要、というテーマでお届けします。

主な場面は、配牌直後、まだ5ブロックが固まっていない、次のようなときです。

[一][四][八][九][①][⑤][⑧][⑧][1][6][7][8][中]  ツモ[7] ドラ[中]

ドラの[中]は切らないとすると、切る候補は[一][①][1]になりそうですね。
どれも孤立している端牌だから一緒では?と思いますが、差はあります。最も好ましいのは[一]です。
なぜなら、スジの[四]があるからです。

[1]を切った直後に[2][3]を引くと、ちょっと「しまった」と感じるはずです。もし[1]を切っていなければ、[1][2]のペンチャンターツか[1][3]のカンチャンターツができていたからです。

[①]を切っても同じで、次に[②][③]を引くと、ちょっと残念ですね。特に[③]を引けば、[①][③][⑤]のリャンカン形ができていました。リャンカン形は、受け入れが2種8枚(今回は[②][④])あるので、序盤から中盤にかけてはまあまあ強い形です。

一方、[一]を切ったあとに[二][三]を引いたときはどうでしょうか。「しまった」とはならないですね。
[三]を引けば[三][四]という強いリャンメンターツができますし、[二]を引くと[二][四]のカンチャンターツができます。[一]がいなくても、スジの[四]がカバーしてくれるので、困らないのです。
いいかえると、[四]の存在が、[一]の価値を下げているわけです。

覚え方としては、「スジの牌がある孤立牌から先に切るのがよい」でOKです。[⑤]があれば[②]が切りやすくなり、[6]があれば[9]が切りやすくなります。

さらに、ここから応用した話を2点ご紹介します。

1つめは、「切る候補が複数あるときは、ロスが少ない方を選ぶ」という考え方です。
麻雀の本や放送対局の解説で、しばしば「ロス」という言葉が出てきます。これは上記で書いた「次に引いたらしまった、と思う牌」のことをいいます。

上の牌姿では、「[1]を切ると[2][3]がロスになり、[①]を切ると[②][③]がロスになるが、[一]を切っても[二][三]はロスにならない。よって、最もロスが少ない[一]を切る」という思考になります。

この考え方は、序盤からテンパイに至るまで、使うことができます。

劣勢で迎えた南場の親番、流局間近で、どうしてもテンパイをとりたい局面があったとします。打点や待ちの良さは考えず、テンパイする牌を1枚でも多くしたいですね。

いきなり難しい話になり恐縮ですが、例えば、次のようなイーシャンテンになったとします。

[四][五][六][⑤][⑥][⑥][⑦][2][3][3][4][5][5][6]

ここで、「1巡だけ、何も切らなくてよい券」を使えると仮定します。
このまま15枚目をツモって、テンパイすれば2枚一気に切るのです(本当にこういう券があれば最高ですね)。

15枚目にツモってテンパイする牌は、
[④][⑧]の5種と、[1][8]の8種、あわせて13種あります。

まず、この13種を基準にします。
そのうえで、実際には「何も切らなくてよい券」は使えないので、「何を切ったら、この13種のうちどの程度ロスするか」を考えるのです。

切る牌の候補を、[⑥][3][5]としましょう。

[⑥]を切ると、[④][⑧]の5種がロスします。
[5]を切ると、[5][8]の2種がロスします。
[3]を切ると、ロスは[3]だけです。

つまり、[3]を切るのがもっともロスが少なく、テンパイの可能性が最も高くなります。正解は[3]切りです。

…と書いても、初心者の方がすぐに理解するのは難しいと思いますので、わからなくても全くかまいません。

このような問題は、「テンパイチャンス」と呼ばれ、各プロ競技団体の入会試験でよく出題されますが、多くの受験者が苦戦するとされています。私もそうだったので、受験前は、先輩方に「テンパイチャンスは時間がかかるうえに、間違いやすいので、場合によっては全問解かなくてもよい。ただ、どんな試験でもそうだが、白紙で出すと必ず0点なので、何かしらは書くべき」とアドバイスされました。それぐらい、簡単ではない話なのです。

ただ上記の例でいうと、[3][5]は微差ですが、訓練すれば、[⑥]を切るとロスが大きすぎることは、一瞬でわかるようになります。[3][5]をアタマとすれば、[⑥]はくっつきテンパイの元になる牌、[④][⑧]の広い受け入れを支えるキー牌だからです。実戦で「[⑥]だけは切らずにおこう」とすぐに判断できるだけでも、大きな意味があります。

ロスの数は、頭だけで考えていても難しいので、ノートに書き出したり、実際に牌を並べたりすることをおすすめします。手を動かして「これを切ると、○と▲の受け入れがなくなるのか…」「これがロスになるということは、この牌は元々どういう機能を持っていたのか?」と考えていくと、少しずつ身についていきます。


2つめは「攻撃のセオリーは、守備にも応用できる」という考え方です。

「スジの牌がある孤立牌から先に切るのがよい」というセオリーは、みんなが実践する基本なので、他家の河から情報を読み取るヒントになるのです。

例えば、
[①][西][北][9][8]
と切っている他家がいるとしましょう。

一見不要そうな字牌より先に、[①]を切っているのは、強い意志を感じますね。「この人は、スジの[④]を持っているから、[①]はいらなかった可能性があるな」と想像できるのです。

そして、ここでリーチをかけられて、安全牌が1枚もないとします。もし自分が[④]を持っていれば、それを切る一手があります。なぜなら、もともと[④]を持っている人の手が、[④]が最終的な待ちになる可能性は、普通よりは低いからです。

同様に、序盤に[九]を切っている人は、[六]を持っている可能性が普通より高く(その人には[六]は少し安全)、[8]を切っている人は、[5]を持っている可能性が普通より高くなります([5]が少し安全)。

また、さらに応用として、一打目や二打目に切られる数牌は、「山読み」の材料になります。
「山読み」とは、これからツモってくる牌山に、どの牌がどの程度残っているかを推測することです。

序盤に[①]を切っている人は、[④]を持っている可能性が少し高い。裏返せば、自分が今後[④]をツモれる可能性は少し下がります。

同時に、序盤に[①]を切る人は、[②][③]を持っている可能性が下がります。いきなりターツを崩すことは考えにくいためです。他家が持っていないのであれば、[②][③]は牌山の中にあり、ツモれる期待が高くなります。
もし、2人の他家が最初から[①]を切っていたとすれば、[②][③]は、わりと山の中にありそうだな、と推測できるのです。

「山読み」は、滝沢和典プロの「山読みを制する者は麻雀を制す」(マイナビ)という著書があるように、それだけで1冊の本ができるほど奥が深いので、いつか詳しく紹介したいと思います。



今回は難解な話も書きましたが、一つの基本セオリーを起点に、一般化をしたり、裏返して考えたりすることで、思考の幅が広がっていくことの楽しさをお伝えしたく、少し長くなりました。

どんな学問の分野でも仕事でもそうだと思いますが、ある一つの項目が独立していることは少なく、ほとんどの場合、なにか別の項目とつながっています。「この話は、あれに応用できるのではないか?」と、自分なりにつながりを発見できた時の喜びはひとしおです。麻雀の勉強も、その可能性に満ちあふれていると思います。

次回は、頻出する「リャンメンカンチャン」を考えます。

この記事のライター

藤田 明人
最高位戦日本プロ麻雀協会第43期後期(2018年入会)
兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、新聞社に入社。
記者を経て、教育事業部門で勤務。
麻雀が、幅広い世代の学びにつながることを研究しています。

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