前年度のシーズン3を沸かせた朝比奈ゆり・小西雅・西園遥の3人に、予選から今年初めて勝ち上がった香野蘭が挑む。
香野の麻雀を初めて見た筆者の感想は、
(ずいぶん遠いところから仕掛けるんだな…。大丈夫かな…。)
だった。
事前の紹介VTRでは「放浪系雀士」ということだったから、麻雀もいわゆる「お出かけポン」から発進することが多いのかもしれない。
こういう遠い仕掛けというのは、前向きな気持ちと、構想力が必要だ。1年の3分の1を海外で過ごすという香野には、それが備わっているのだろう。
ところで、シンデレラファイトはシーズン4を迎え、今期から副露や待ち牌が表示されるようになった。下の画像は香野が三副露目を入れたところだが、その前にポン・
ポンがあったと分かるようになっている。
イーシャンテン、と言えば聞こえはいいかもしれないが、手牌を短くして他家からリーチを受け、手詰まって放銃…のようなケースは、麻雀の放送対局において、できれば避けたいところだろう。しかし、香野は勇猛果敢に仕掛けた。また、東場は展開も向いた。
東1局0本場は、朝比奈ゆりがダマテンで戦端を開く。高めなら一気通貫もついて18000になるところ、安めのだったのが、放銃者にとってはせめてもの救いか。
東1局1本場は、香野が二軒リーチを制した。リーチ・ピンフ・ドラ1に裏ドラも1つ乗せて8000は8300。
東2局1本場は、西園がリーチ・三色同順・ドラ1の8000は8300をロンアガリ。
実は、この3つのアガリは、すべて小西の放銃で決着しており、この時点で小西の持ち点は箱下に沈んだ。
ラス即脱落のシンデレラシステムにおいて、この展開は、脱落者がほぼ決まったと言っていい。せめて1人に対して3回放銃ならまだ傷は浅かったかもしれないが、3人にそれぞれ放銃となると、あとはその三者によるトップ争いになるのが普通だ。
しかし、南2局1本場、
ラス目の小西が、乾坤一擲の6000オールをツモアガリ。ツモ・純チャン・三色同順・ドラ1は、もしリーチしていれば8000オールの可能性すらあった大物手だ。
この6000オールは、それ単体で別の観戦記が1本書けるくらい見事なものだった。
朝比奈が片アガリできるを、事前に2枚逃し、
トップ目西園との同テンを引き勝った点が、特に素晴らしい。この針の穴を通すアガリで、ついに小西が香野を逆転する。
南2局2本場で、小西が朝比奈のダマテンに放銃し、再びラス目が入れ替わったものの、
【南4局0本場】
東家・西園遥 49000
南家・朝比奈ゆり 21900
西家・小西雅 14200
北家・香野蘭 14900
オーラスに、ラス目の小西から先制リーチが入る。香野は♯3に望みをつなぐため、このリーチをかいくぐり、なおかつ流局時にテンパイを入れていないといけない。
しかし、ここから追いつくことは叶わず、
最後は小西がツモアガリ。自らの手で次戦につながる細い糸を手繰り寄せた。
GroupC♯1で、トップを獲得したのは西園遥。次戦免除でBEST16へと進む。2着の朝比奈ゆりと3着の小西雅は、♯3でのリベンジを誓う。
無念のラスになってしまった香野蘭は、ここまで。今回見られなかった世界線を追いかけつつ、いったんこの舞台を降りる。
最大で34200点差あったところから、まさかの逆転負けを喫した香野、心中はいかばかりか。
大逆転については、元プロ野球選手のGG佐藤氏が、こんな言葉を残している。
「野球ってすごいスポーツだと思ってて、時間で終わらないワケじゃないですか。しかも、点差がついても終わらないわけですよ。こんなスポーツ、他にないですからね。ということは、100点差ついてても逆転する可能性はゼロではないってことですよ。終わりがないから。これ、人生に似てますよ。」
香野蘭の麻雀人生もまた、これから続いていく。というよりは、今始まったばかりと言った方がいいかもしれない。時間で終わらない頭脳スポーツ・麻雀を追いかけ、香野蘭が新たなステージに向け旅立つ瞬間に立ち会えて、ボクたちは幸せだった。
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