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山本ひかるが、僕らにくれるもの。シンデレラは「舞踏会」で舞う【予選第2節Aブロック1卓】

山本ひかるが、僕らにくれるもの。シンデレラは「舞踏会」で舞う【予選第2節Aブロック1卓】

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プロフェッショナルとは、何だろう? 勝利に徹すること、周知されるために発信し続けること、魅せること、スキルに見合った報酬を受け取ること……。定義は千差万別で、こと麻雀以外のジャンルにおいてもそれは変わらない。たぶん、ここに挙げた例のどれも正しく、同時にそれが全てというわけでもないと思う。

麻雀というジャンルにおいて、僕らファンはそれぞれの持論を掲げながらプロに理想を求める。その持論が多様すぎるあまり、ややこしい話になってしまいがちなのは、もはや「麻雀あるある」なのかもしれないけれど、つまるところ僕らファンは魅了されたいのだ。その一打、発言、立ち居振る舞い。求める者は人それぞれだけど、ファンは「この人を、また見たい!」と思える人についていく。

そういう意味では、山本ひかるはじつにプロフェッショナルな存在だと思う。

新型コロナウイルスの感染拡大防止にともない、「麻雀ウォッチ シンデレラリーグ2020」は、予選第1節を終えたタイミングでおよそ1ヵ月のインターバルを挟むこととなった。マスクの着用、抗菌材料を用いた「抗菌牌」(協力:AMOS)での対局など様々な対策を講じることで再開できる運びとなった。

久々の対局を行なうにあたって、山本は「とにかく早く麻雀が打ちたかった」と、屈託なく笑った。麻雀業界、そして日本全体が消沈ムードではあったが、そんな中にあっても、いつも通りにエネルギッシュな立ち居振る舞いを崩さない。マスクには麻雀牌型のアクセサリーをつけ、ツイッターでは対局当日の髪形をアンケートで募った。

さすがは演技派女優雀士! セルフプロデュースも、ファンへのサービスも欠かさない。そして何より、自らが戦う姿を見せることで、ファンを元気づけようと考えていたのだろう。

この日はトータル2位の梅村日奈子との直接対決だ。2位浮上が十分現実的な組み合わせとなった。また初代シンデレラの中山百合子、強すぎるルーキーとして話題の松井夢実とも同卓。現シンデレラとしては、ここでしっかりと勝ち切って連覇を目指したいところだ。

1回戦、まずアドバンテージを得たのは中山だった。東2局、メンピンツモ・ドラ2の4000オールを決め、早々に大きく加点。次局は山本が中山から3900は4200をアガることに成功したが――

東3局、お返しとばかりに中山が山本から6400を直撃。歴代シンデレラが、序盤からバチバチと火花を飛ばした。

南入しても、両者の勢いは止まらない。山本が梅村のテンパイ打牌をとらえ、メンタンピン・一発・イーペーコーを成就させる。中山の勢いにやや押され気味だった山本だが、すぐに息を吹き返した。

トータル3着に浮上し、ラス親も残っている。まだまだトップ奪取の可能性は残されているが、次局は親の中山が先制リーチを放つ。ならイーペーコーつきだ。

現状ラス目の梅村も、これに応戦! 満貫確定のカン待ちで追いかける。

松井も十分なチャンス手だったが、がみるみる減っていき、2軒リーチとあってはさすがに分が悪い。現物のを切ると――

山本がこれをチー。両者の当たり牌であるが浮いてはいるが、これならどうにか粘ってテンパイにたどり着けるかもしれない。そして――

この仕掛けが、中山のツモを生む! 再びの4000オール炸裂で、中山が大きく抜け出した。
結果論ではあるが、梅村のアガリ牌が中山に流れたことは、山本にとっては幸運だったかもしれない。たしかにトップ率は著しく下がってしまったが、梅村が満貫をツモっていたならば、ラスになる可能性が一気に跳ね上がってしまう。

結果としては松井をまくること叶わず、初戦は3着で終えた。同卓者の中ではトータルポイントが一番少なくなってしまったものの、2位の梅村との差が縮まったことを考えれば、そこまで悪い展開でもないだろう。

2回戦は、山本が先制打を決めることに成功した。親の梅村がポンから変則手模様の進行をしていたが、山本は臆さずドラ1カンチャンをセオリックに曲げた。これを見事にツモりきって、1000-2000を加点する。この思いっきりの良さが山本の魅力であり、昨年のシンデレラ戴冠につながった強みでもある。

もちろん、この程度の加点ではまだまだ物足りない。次局、456の三色を見据えていたところにドラのを持ってくると――

を切ってイッツーの目も残す。手役やドラに対するどん欲な姿勢で、高打点を見据え続ける。現代のシンデレラは、意外と肉食系女子なのかもしれない。

そしてもう一人の肉食――もとい、シンデレラが満貫確定リーチでアタック! 決まれば連勝さえ見えてきそうだが――

「受けて立ちましょう!」とばかりに、山本も満貫確定リーチで追いかける。この日、すでに何度目かわからないほどの両者のぶつかり合い。勝ったのは――

山本だった! をツモり、2000-4000。連続アガリで勢いに拍車をかけた。

極めつけは、南2局。ドラのが配牌でアンコ! 山本に大チャンス到来だ。

ポンで、あっさりと1シャンテン。

2巡後、を重ねて打。盤石の1シャンテンとなり、これでどこからだって鳴ける形だ。

梅村から早々にがこぼれ、ほらあっさりとテンパイ――



が、山本はこれを鳴かず! まさかのスルー! その意図は――

「集中が途切れちゃっていましたね。手役にこだわりすぎてガンコになりすぎてしまうところとか、集中が切れてしまうことは昔からあるので、改善していきたいです」

そう、うっかりである。山本、痛恨のケアレスミス!――

さて、話を冒頭のプロフェッショナル論に戻そう。もしかしたら、ファンのみなさんの中にはプレイヤーのミスに対して「プロたるものが……!」なんていう感想を抱く人もいるかもしれない。けれど、僕の抱く感想は「起きたもんは仕方ない」だ。

麻雀が対人ゲームである以上、ヒューマンエラーはなくならない。そりゃあミスはない方がいいし、応援しているファンからしたら憤ることもあるだろう。けれど反省は本人がすればいい問題で、僕のような外野が偉そうに講釈をたれるものではないだろう。僕が麻雀教の開祖になったら、「ミスをしたことがない者だけが、石を投げなさい」と触れ回ろうと思う。

ミスが起きたことは仕方がない。大事なのは、そこでメンタルが崩壊しないこと。これに尽きると思う。

山本は落ち着いてポン。今度こそ正真正銘のテンパイだ。たとえばここで「あぁ、番組最後のコメントで何て言おう! ツイッターで何て書こう!」とか余計なことを考えていると、ここでもスルーしてしまいかねない。当たり前のことに感じるかもしれないが、やはり麻雀はメンタルが大事だと思う。最終形を見れば同卓者にもポンテンをスルーしていたことがわかってしまうが、そんな恥や外聞よりも、明確な利を得るべきだ。

そのガムシャラさを――

僕は素直に評価したい。

予選2位をほぼ確定づける結果で、プレーオフ進出を決定的なものとした。

魔女の魔法で舞踏会に参加したシンデレラは、はたしてダンスは上手かったのだろうか? たしか物語の中ではダンスが上手だという設定だったし、舞踏会を夢見てシンデレラは独学で練習を続けていたのだろう。だけど実践経験のなかった彼女よりダンスが上手かった人は、きっと作中の舞踏会にもいたはずだ。それでも王子様に見初められたのは、彼女が心底その場を楽しんでいたからではないか、なんて妄想する。

「ずっと麻雀をやりたかったのもあって、とにかく楽しかったです。手が悪かった時でも楽しかったですね。『どうしてやろうか!』みたいな気持ちで。他の人がアガった局でも、『まぁキレイなアガリ』みたいに思えて、楽しかったんですよね」

山本もまたプロ入り後すぐにシンデレラを戴冠するほどの才覚の持ち主ではあるが、なによりその無邪気さが才能で、財産だと思う。たしかに彼女の麻雀を見ていると、ワクワクする。楽しそうだなぁと共感して、自分も麻雀を打ちたくなってくるのだ。

「久々の対局番組ということで、みんなも『早く麻雀打ちたいなぁ』って思ってくれたはず。こうやってまた麻雀番組がどんどん再開してくれれば、うれしいです」

思えばここ10年くらいで、こんなにも麻雀牌に触れていないことはなかった。

なんだか、無性に麻雀が打ちたい。この日、そう思ったのはきっと僕だけではないはずだ。

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この記事のライター

新井等(スリアロ九号機)
麻雀スリアロチャンネルの中の人。
ナンバリングは九号機。
スリアロでのポジションをラーメンに例えると、味玉くらい。
お酒があれば、だいたい機嫌が良い人です。

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