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「対局料をもらう麻雀プロとして見やすさにはこだわりたい」小林剛 RTDリーグ2018優勝記念インタビュー 第4回

「対局料をもらう麻雀プロとして見やすさにはこだわりたい」小林剛 RTDリーグ2018優勝記念インタビュー 第4回

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AbemaTV「麻雀チャンネル」にて放送されたRTDリーグ2018にて、見事優勝した小林剛選手(麻将連合)にお話を伺いました。

インタビュアーは、鈴木聡一郎(最高位戦日本プロ麻雀協会)がお送りします。

願掛けの意味がわからない。家で寝てた方がマシ

ところで、試合前に願掛けをする選手も多いが、小林は願掛けなどするのだろうか。答えはある程度想定されるのだが聞いてみた。

小林「意味がわからない(笑) そんな暇があったら家で寝てた方がマシだよね。オカネと時間と体力の無駄だね」

想定通りの答えが返ってきたところで、もう一歩踏み込んでみよう。では、ゲン担ぎでスタジオのトイレを掃除したことなどあるのだろうか。
小林「ないよ(笑)」

多井さん、やっぱりこのロボにはそういうのないらしいです!

小林「でも、洗面台のところが水浸しだったら拭くよ。麻雀店の仕事で『お店をきれいにしろ』って散々言い続けてきたから、気になったところはきれいにするように染みついちゃってるね」

想定通りの答えかと思いきや、ちょっと違う角度からも答えが返ってくる。本当にユニークな人物である。

食べることは好き。でも、お店を探したりはしない

小林はどんな休日を過ごすのだろうか。

小林「休みの日は家でぐったりするね」

さすが神頼みをするぐらいなら寝る男。体力回復に抜かりがない。では、ここで一歩踏み込んでみる。例えば、休日にデートするとき、プランを練る方なのか。

小林「プランはないね」

あっさりかわされる。さすが、かわし手でタイトルを獲った男だ。しかし、そうはさせじとこちらも粘る。直球で勝負だ。

― ゴーさん、そもそも女性は好きですか?

すると、意外な方向から答えが返ってきた。

たろう「好きですよ(笑)」

たまたまその場に居合わせた盟友・鈴木たろう(日本プロ麻雀協会)が冗談交じりに答えてくれた。ちなみに、好きな女性のタイプは特になし。型にはまらない自然体な答えに、小林らしさを感じた。

小林の私生活といえばもう1つ、よく食べるということがある。

小林「食べることは好きだね。でも、わざわざ食べに行くためにおいしいお店を調べたりはしないかな。たまたま入って、おいしかったらラッキーぐらい」

とりあえず仕掛けてみて、アガれたらラッキー。小林の仕掛けと同じで、おもわず「麻雀と同じじゃないすか!」とツッコんだ。

毎巡何百円かもらって打ってる人が、手牌が映るたびに視聴者にストレスを与えるのおかしい

こだわりがあるようで自然体な小林は、なんとも掴みどころがないが、麻雀プロとして譲れないこだわりがあると言う。

小林「誰よりもきれいに理牌してると思う。麻雀の手牌を見せることについてはこだわっていきたいんだよね。例えば今も、園田(園田賢・最高位戦日本プロ麻雀協会)のリーチ後のツモり方が見やすいと聞いて、リーチ後のツモり方を変えたりしてみてるとこなんだよね。今までは手牌の真ん中に持っていくようにしてたんだけど、それだと手牌が一瞬隠れちゃうから、真ん中から少しずらしたり、試行錯誤してるね」

麻雀の内容ではなく、見せ方の部分に対するこだわりであった。そこには、小林の強い思いがある。

小林「よくスポーツ選手が1試合に換算すると毎試合XX万円もらってるとか、毎分XX万円もらってる計算とかって、記事で出るよね。AbemaTVやMリーグが始まってからの麻雀プロも同じで、対局料をもらって麻雀させてもらってるわけだよね。とすると、毎巡何百円かもらって打ってる人が、手牌が映るたびに視聴者にストレスを与えるのはおかしいよね。その意識だけは持ち続けていたい」

20年ほど対局料をもらえない環境で麻雀の試合に出続けてきた小林だからこそ、オカネをもらって麻雀を見てもらえることに対する感謝の気持ちが人一倍強いのである。

黒船は次の舞台へ出航する

それまで何十年と主流になっていた運や流れといった非科学的な要素を一切否定する小林剛が突如麻雀界に現れた22年前、既存のプレイヤーたちからは黒船がやってきたように見えたのだろうか。

左から、小林剛、鈴木たろう、村上淳。誌上で「オカルトバスターズ」として非科学的な流れやツキといったものを排除する考えを広めた。AbemaTV『熱闘!Mリーグ』より

 

しかし、本人は立派な黒船で乗り込んできたつもりは一切なかったはずだ。船の形こそ周りと違ったが、吹けば飛ぶような、あり合わせで作ったボロ船での来航だった。

それでも何とか荒波を乗り越えてこれたのは、とにかく「麻雀という素晴らしいゲームの魅力を正しく伝えたい」という信念があったからだ。そうすれば、必ず多くの人にもっと麻雀を好きになってもらえるはずだから。

そういう思いが強すぎて、時には攻撃的な言い方になってしまうこともあった。

若いときにはとがってもいたし、誰より野心も持っていた。

攻撃的でとがっていて、野心家・・・

ここで、私はピンとくる。

なるほど、確かに黒船などという仰々しいものではない。

これではまるで、海賊ではないか。

左から石橋伸洋、小林剛、朝倉康心U-NEXT PiratesとしてMリーグに参戦中。やはり、科学的な思考に基づいたプレイをする3名で優勝を目指す

 

Mリーグ、U-NEXTパイレーツ。22年前とは違い、今度は自他ともに認められた海賊として、麻雀という大海原に出ていく。

最後に尋ねた今後の目標について、小林はこう答えた。

小林「Mリーグでずっと戦うこと。盛り上がるように、Mリーグが続くように、麻雀プロが続くように、何でもやります!」

黒船のような威光は要らない。

泥臭く、地道に、戦い続ける海賊でありたい。

麻雀プロの最前線を行く小林の背中は、そう語っているように思えた。

小林剛は今日も剣を持つ。1,000点、2,000点といった短剣だが、機動性は抜群だ。

リスクを取った短剣での攻撃が、実に海賊らしく、私たちの心をくすぐり続ける。

この記事のライター

鈴木 聡一郎
1983年生、千葉県出身
早稲田大学在学中の2004年、最高位戦日本プロ麻雀協会に入会。
以後10数年に渡り、観戦記者として活動中。
最高位戦以外にも、モンドTV、麻雀スリアロチャンネル、RMUなどの観戦記を執筆。
近年では、AbemaTV麻雀チャンネルの公式ライターとして、RTDリーグなどの観戦記者を務める。
観戦記以外には、書籍『麻雀偏差値70へのメソッド』(石井一馬著)、『最強プロ鈴木たろうの迷わず強くなる麻雀』(鈴木たろう著)、『多井熱』(多井隆晴著)などに協力。

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