東家:高島芽衣(日本プロ麻雀協会)
南家:齊藤しょあ(日本プロ麻雀協会)
西家:梶梨沙子(最高位戦日本プロ麻雀協会)
北家:内村翠(日本プロ麻雀連盟)
遂に迎えたシンデレラファイトシーズン4のFinalステージ。
決勝メンバーは過去の大会でも高い実績を残し続けてきた常連組の高島芽衣、梶梨沙子。
日本プロ麻雀連盟の若手ホープである内村翠。
そして、日本プロ麻雀協会入会2年目の齊藤しょあだ。
ここまでの闘いを見るに、齊藤は三者と比較して経験値も麻雀力も劣っている。
それは、誰が見ても明らかであり、変えようのない事実である。
では、なぜ齊藤は決勝の舞台に辿り着いたのか。
東3局1本場
役牌のを叩いた齊藤はここから
を切り出す。
ドラがということもあり、ソーズに手をかけるならば
を切らねばならない。
そして何よりも、を切って受け入れ枚数を一番多くしなくてはテンパイが遠ざかってしまう。
隙ができれば、相手に追いつく猶予が生まれる。
親の高島からリーチが入った。
現物のを切ればイーシャンテンだが、雀頭を落としてリャンシャンテンに戻して撤退する。
最終的にベタオリとなるにしても、イーシャンテンに構えつつ捌ける準備はしておかなくてはならない。
東1局2本場
供託が2本あり、即リーチをして期待値がマイナスになることはない。
味気ないなら、満足するリーチに作り直そう。
ではなくて、
を切れば三色のイーシャンテンだ。
後から見返してみれば、普段はこんなプレーはしないのにな。
本当の自分の麻雀は違う。
誰もがそう思うし、思いたくなるものである。
しかし、自身にとって今日以上に大切な試合はあっただろうか。ここまで集中した試合はあっただろうか。
今日以上に勝ちたい試合はないはずだ。
緊張があったとしても、これは自身ができる麻雀の最高峰であり、それ以外はまやかしである。
東4局
先程とは逆にカンで即リーチを放つ。
手替りがあってもリーチのみなら、これで相手が撤退してくれたら御の字。
すぐに追い付いたのはラス目の高島だ。
打点は齊藤より圧倒的に優っているが、待ちは同等。
最後のを引き当ててしまったのは齊藤で、裏ドラも乗り倍満の放銃となってしまった。
いくら高打点が飛び交う赤アリのルールとはいえ、苦しい序盤戦である。
南2局
南場の親を迎えた齊藤だが、イーシャンテンが全く埋まらずに周りが動き始める。
高島のダブルバックが決まり、700-1,300。
こうなってしまうと、着順上昇は叶いそうもない。
南4局
ハネツモで着順浮上を狙う梶がリーチをかけるが、不発に終わり1回戦が終了する。
齊藤は倍満放銃が響き、ラスを引いてしまい最終戦が厳しくなった。
優勝以外価値のない闘いが故に、自身がトップを取るだけで勝利条件を満たすことはできない。
ここまで厳しい条件戦を闘うことは初だろう。
齊藤にとって未知の世界へ局面は突入していく————
東1局
1回戦目をトップで終えた高島が先制リーチを放つ。
これを決めれば優勝がグッと近付くだろう。
ここに押し返したのは、親番の内村。
元々7,700点をヤミテンにしていたが、標的が無防備になったところを狩にいく。
ツモ切り追っかけリーチである。
更に同巡、齊藤にもテンパイが入った。
待ちは薄いものの、薄い捲り合いに勝ち続けないと優勝は見えてこない。
この手で撤退することは許されない状況である。
軍配は高島に上がった。
ここで心が折れてしまっても、おかしくはない。
東3局2本場
大事な親番で齊藤がテンパイを入れる。
三色にも三暗刻にもならなかった。
テンパイを外したところで希望通りになる可能性が低いならば、相手にプレッシャーをかけて親番維持を狙う。
粘りをみせていた内村が追っかけリーチを放ち、捲り合いを挑んでくる。
リーチのみのアガリだが、親番を維持できたのは大きい。
僅かな希望に賭けるしか今はできない。
東3局3本場
繋いだ親番で配牌に恵まれた齊藤は、ここから切りを選択する。
仕掛けを考慮した一打なのだが、を切っておけば仕掛けもメンゼンも十分に対応が可能である手牌なだけに、今後の伸び次第では結果に直結してしまいそうな一打に映った。
十分形のイーシャンテンからテンパイの入った内村がリーチと出る。
同巡、齊藤にもテンパイが入った。
これはもう、ドラのを切るしかない。
実際には当たり牌なのだが、それを手牌が許さない。
がドラという理由で切るのを嫌がったのか、ソーズの下目が通りそうな理由があったのか。
これが、麻雀として賞賛されるべきプレーなのか、放銃するのがあるべき姿なのか————
筆者にはわからない世界と奇跡が目の前で起きている。
ただ、ひとつ言えるのは、この局が終わることなく続いていて、優勝するための針に糸を通すようなルートに入っているということだ。
アガリには結び付かなかったものの、この決勝で齊藤の麻雀を印象付けるビックプレーになったのは確かだった。
南1局
今までと違い、ドラが2枚組み込まれたテンパイだが齊藤は外していく。
ラス目になってしまった梶が先制リーチを放った。
齊藤もテンパイを外した甲斐がある勝負手で捲り合いに挑む。
高めをツモアガリし、3,000-6,000が決まった。
これで念願のトップ目に到達した齊藤だが、高島との点差は66,100点である。
まだ、背中は見えてこない。
南3局
8,000オール2回が目標の齊藤に、周りの動向は関係ない。
ただ、ひたすらにリーチをかけてツモり続けなくてはならないのだ。
厳しい条件の中で、梶が満貫テンパイをヤミテンにした。
は使いきれなかったものの、齊藤は待望のリーチを果たすことができた。
梶の当たり牌を掴んでしまったが、ロンの声は聞こえない。
高島をトップから引き摺り落とせないアガリは、高島の優勝確率を上げてしまうだけなのだ。
高島も、このような特殊状況の経験はないに等しく、見逃しをかけた梶へ痛恨の放銃をしてしまう。
それと同時に、齊藤の優勝の目はなくなった————
各自の条件が発表される中で、齊藤のものだけはあまりにも現実的ではない。
ここから試合終了までは、敗北を受け入れる為の長く苦しい時間である。
決勝の舞台から解放された齊藤の表情は清々しい。
悔しい、勝ちたかったという気持ちは高島以外の三者同様。
プロの門を叩いて、すぐにこの舞台を経験できたことは齊藤にとって何事にも変え難い大切なものとなっただろう。
勝ち上がる毎に少しずつ内容が改善されていき、大きな結果を残すことができた。
これは、応援してくれる人達の言葉や気持ちが齊藤のチカラになったからだと思う。
ファンが声援で背中を押してくれる。
一人で戦っているわけではないと実感した。
そして、仲間たちがこの舞台での戦い方を共に考えてくれて実践してきた。
齊藤しょあが決勝に進出した理由というのは、この素敵なファンと仲間たちがいたからである。
そんなことは当の本人が一番わかっているだろう。
齊藤の目には既に来年のシーズン5決勝戦しか映っていない————
Final各選手視点観戦記
包囲網ヲ突破セヨ!【シンデレラファイト シーズン4 Final 高島芽衣視点 担当記者・中島由矩】
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