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第16回 ネマタの麻雀徒然草

第16回 ネマタの麻雀徒然草

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ネマタの麻雀徒然草とは
  • 『ネマタの麻雀徒然草』は、麻雀戦術サイト「現代麻雀技術論」の著者・ネマタさんによる「麻雀に関する話題を徒然なるままに書き連ねていく」コラムです。
  • 第1回はコチラ

「二人」「零和」「有限」「確定」「完全情報」の5つの要素を持つゲームには必勝法があることを第13回で取り上げました、今回は「零和」に関するお話。

 「零和」とは言い替えればゼロサム。プレイヤー間の利害が完全に対立し、一方のプレイヤーが利得を得ると、それと同量の損害が他方のプレイヤーに降りかかることを指します。麻雀は誰かがアガって加点すれば、その分他の誰かが失点するので、まさに「零和」ゲームです。雀荘で打てば「場代」があるので厳密には零和ではありませんが、場代を考慮しないものとしても戦略上は差し支えないように、利益と損失の合計が0でなくても、定数であれば同じようにみなせます。

 「零和」という言葉からは、何故必勝法が存在するための必要条件になるのかが分かりづらいですが、重要なのは「利害が完全に対立」しているということ。一方の利益が、必ずしも一方の損失にならないとするなら、全員が敗者ということも有り得るので、その場合は必勝法が存在しないことになります。

 私は一時期、「麻雀は人生」という言葉を多用していました。「麻雀は思い通りにならないが、思い通りにならないが故に愛着が湧いて離れられないのが人生のようである。」くらいのニュアンスで使っていました。しかし、「人生も麻雀のように零和ゲームである」のように考えられている方を少なからずお見かけしたので、安易に人生に喩えるべきではなかったと少し後悔させられました。麻雀が時として人生のように喩えられるとしても、人生は麻雀のように零和ゲームとは限りません。

 もちろん、人間である以上誰しも利己的で、何をもって幸福とするかの価値観も共通しているところが多いですから、「誰もが勝者になる」選択を考えて、なおかつ実行することは大変難しいことです。知識を身につけることを怠らず、人生における零和ゲームに明け暮れてきた人にとっては尚更でしょう。

 しかしながら、「誰もが敗者になる」選択を想定することはさほど難しくありません。全局ツモ切りを繰り返す相手には、麻雀の勝敗で言えば絶対に勝てますが、勝ったところで空しいものです。「勝っても空しい」という感覚があるからこそ、「負けてもよし」と言えることもある。零和ゲームでは勝つことにこだわっても、その枠組みから外れたところでは、「勝ってよし負けてよし」のスタンスで生きていたいと思う所存であります。

この記事のライター

ネマタ
浄土真宗本願寺派の僧侶。麻雀戦術サイト「現代麻雀技術論」の著者。
同サイトは日本麻雀ブログ大賞2009で1位に。
1984年佐賀県生まれ。
東京大学文学部中退。

著書:「勝つための現代麻雀技術論」「もっと勝つための現代麻雀技術論 実戦編

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