麻雀が強くなるためには、正しい知識を身につける必要があることは言うまでもありません。しかし、知識としては正しく、重要なものであるとしても、下手に打牌選択に反映させるとかえって正解から外れてしまう場合もあることは第29回でお話しました。
麻雀を覚えてからあっと言う間に強くなる人と、何年経ってもなかなか上手くならない人。知識量だけで言えば、後者の方がずっと多いということも珍しくありません。両者の差は、持っている知識を効率よく判断に結びつけ、より正解に近い打牌を選べるかどうかにあります。
ただ闇雲に知識量を増やすだけでは、知識を判断に結びつけることがかえって難しくなってしまいます。麻雀を打つのが好きな人には、麻雀に関する知識を身につけることが好きという人とも多いと思いますが、身につけた知識を実戦で反映させるべきかどうかは別問題。むしろ他の人があまり知らなそうな知識ほど、実戦で活用する機会は少ないということを意識しておく必要があります。
常に最善手を選べるようになることが、麻雀が強くなりたい人の目的とするなら、麻雀打ちは誰しも目的地に辿り着いておらず、目的地がどこにあるのかも正確には分かっていません。そして、どの打ち手も実力や環境によってそれぞれ別の場所から目的地を目指しているのが現状です。仮に目的地がどこにあるのかの目処がたったとしても、そもそも自分の現在位置が分からなければ、目的地までの正しい道程を辿ることができません。
しかしながら、麻雀は目的地以上に、自分の現在地がどこにあるのかを知るのが難しいゲーム。長年一人で歩き続けて来た人にとってはなおさらでしょう。少しでも目的地に近づこうと歩き続けてきたつもりなのに、今歩いている道が本当に目的地に通じているのかが分からないどころか、気付けば自分が通って来た道筋ですらよく覚えていないものです。
相手の現在地を知ったうえで、目的地に近づくための適切なアドバイスが出来れば理想ですが、1対1でアドバイスできるとしても、アドバイスする側にかなりの力量が求められます。ましてや麻雀講座の形式を取るなら、読者の数だけ相手がいるのですから、1人1人に適切なアドバイスをするのは更に困難を窮めます。
ならばどうすればよいか、現在地は様々でも、麻雀打ちなら誰しもが通った道があります。そうです。ルールを覚えて間もなくの段階です。幸いにも麻雀は、長年知識を積み上げてこなければ習得できない技術は、存在していたとしても結果にはほとんど影響しません。「あっと言う間に強くなった」人が少なからずいることがその証明になるでしょう。
具体的にどのように知識を身につけるかは今後少しずつ取り上げていくこととして、改めて麻雀を勉強したいと考えられている方は、今まで積み上げて来た知識は一度脇に置いて、原点に立ち返ったつもりで学ばれることをお勧めします。環境が整えば、本人の才能や努力はそれほどでなくても、誰しも麻雀が強くなるための「王道」を歩むことができる。私はそう確信していますし、そのための環境づくりに、微力ながら力添えしたいと思う今日この頃です。