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純白のサバイバルマッチ『シンデレラファイト』プロデューサー 児島リョウ「コンテンツの意味を掘り下げ、文化を創造したい」マージャンで生きる人たち 第42回

純白のサバイバルマッチ『シンデレラファイト』プロデューサー 児島リョウ「コンテンツの意味を掘り下げ、文化を創造したい」マージャンで生きる人たち 第42回

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 出場資格はタイトル獲得経験のないプロ入り7年以下の女流プロ。真っ白なドレスを身にまとい、優勝カップとなるガラスの靴を目指して競い合う対局番組『シンデレラファイト』は、世界的に有名なグリム童話のシンデレラを、まさに現代の麻雀版シンデレラ物語として、麻雀を観て楽しむ“観る雀”から多くの支持を得ている。プロデューサーである児島リョウさんに番組に込めた思い、プロデュースという仕事の醍醐味、そして心がけていることを聞いた。

『シンデレラファイト』に込めた思いとは?

 2024シーズンで3年目を迎える『シンデレラファイト』の原点は、2017年にスタートした『麻雀ウォッチ シンデレラリーグ』という対局番組だった。「もともとあったシンデレラリーグをもっと面白くしたい。このコンテンツを磨き、大会自体を麻雀の面白さが伝わる文化にできればと思い、まずはシンデレラと名のつくあらゆる本を読み、歌を聴き、映画を観ました。その中でもっとも面白かったのがAmazon Prime Videoのミュージカル映画『シンデレラ』でした。主人公はドレスデザイナーになるのが夢。清く生きていれば、王子様と出会って結婚できるという童話のシンデレラではなく、これは現代の新しい価値観を持つシンデレラの姿だなと思いました」と“シンデレラ”を徹底的に掘り下げ、多様性が求められる現代とマッチさせることを強く意識したという。

『シンデレラファイト』の企画書。開催コンセプトが明確で、出演者はもちろん“観る雀”に寄り添った内容となっている

 

対局番組をプロデュースする上でこだわった部分は?

「シンデレラゆえに『ドレスコードは白』とコンセプトのみ伝え、それを聞いた選手たちがどんな衣装で出場しようかと考え始めるところから、それぞれのシンデレラ物語がスタートしています。カジュアルなワンピースやウェディングドレスなど、選手からは個性が出しやすいと好評で、おかげさまで参加希望者も増えつつあります。宣伝に関しては『いい推し(1104)の日キャンペーン』と題し、11月4日から、あなたが推したい選手を教えてくださいとファンに呼びかけるところから始まります。そして各選手がエントリーした時点でSNS等で告知してもらうんですが、大会は約半年後の6月に開幕するので、それまでの期間はファンにとって、これから始まる物語を楽しみに待つ時間となります」

白いドレスコードで対局する『シンデレラファイト』。2023シーズンの決勝メンバー。左から長谷川栞プロ(日本プロ麻雀協会)、新榮有理プロ(最高位戦日本プロ麻雀協会)、木下遥プロ(日本プロ麻雀連盟)、松田彩花プロ(日本プロ麻雀連盟)

ラスになったら即脱落というサバイバルマッチにした理由は?

 「大会形式となれば、優勝者は覚えていても、誰が出ていたのかは印象に残りにくいからです。ラスが即脱落するシステムとなれば、必然的にラス争いに注目が集まります。なんとかラスを回避して、1試合1試合生き残りを賭けて戦う姿こそが、複雑な現代を生き抜くシンデレラの姿なのではないかと思ったんです。ラスになっても敗者の人間性を掘り下げるコーナーも用意しているので、結果的に一度は必ずスポットライトが当たり、最終的には全選手のそれぞれの物語を丁寧に紡ぐことができる仕組みになっています。悔しい敗戦を喫しても前を向く敗者が輝く大会があっても良いのではないか。そういう大会なら勝っても負けても、観る人が夢中になって応援できるプラットフォームになれる。そうなればコンテンツを超えて文化になる。そういった思いを大会に込めています」

 敗者にも必ずスポットライトを当てたいと考えたのは、児島さんのサラリーマン経験が原点にあるという。「そもそも私自身、負ける姿っていいなと思っていました。なぜなら実際、サラリーマン人生で勝つことなんてほとんどありません。その多くは負けるか、勝ってはいないけど負けてもいないということを繰り返しています。だから麻雀で負けた瞬間ってすごく共感できるんですよね」という児島さんは元々研究者だった。

福山雅治主演のドラマ『ガリレオ』に憧れて

 児島さんは高校生の頃、福山雅治主演のドラマ『ガリレオ』を見て触発され、大学は理工学部に進学。機械工学を専攻し、大学院ではロボット研究に没頭。24歳で卒業後、研究者として総合電機メーカーに就職した。「サラリーマン時代は電子機器の組み立てなどを行う作業ロボットの研究をしていました。チームで動き、研究者として最高の技術を目指していたものの、なかなか実用化につながらない。このまま考え方を何も変えずに研究者として生きていったとしても、悩みが解決することもない。環境を変えなければ、自分の知らない可能性にも気づけないと考え、新たなことに挑戦してみようと29歳の頃に転職を考えはじめました」

研究者時代は講演活動をすることも

転職への決断は土田浩翔プロの著書

 人生初の転職に備えて、さまざまなビジネス書を購入しようとした時、ある本の表紙が目に飛び込んできたという。「麻雀のことも何ひとつ知らなかったんですが、土田浩翔プロが新緑の中で微笑んでいる『運を育てる』という本が気になりました。読んでみると知らない世界を知ることは、運を感じる力を上げることにつながると書かれていました。まさにこの本に背中を押されるように、異業種に挑戦しようと30歳の時にIT企業に転職し、未経験ながらマーケティングと新規事業に挑戦することを決断しました。本にはまた一緒に打ちたいと思われる人を目指していきましょうとあり、私の場合は一緒に働きたい人と思われる人を目指しましょうに置き換えられる。まさに人生の向かうべき方向を定めることができた一冊でした」

「土田浩翔プロににお会いした時、付箋とメモだらけの本を見せてサインをお願いしたら『変な人だね』と言われました。褒め言葉として受けとめています(笑)」

『シンデレラファイト』以外に現在取り組んでいる仕事は?

 対局番組のプロデュース以外にも、麻雀関連を中心にコンサルタント事業も展開しているという。「基本的には成果(数字)を踏まえて、こんな形で実行したらもっと面白いのではないかなど、自分で企画書を作って提案し、共感を得られたら、チームになって実現を目指す。具体的にはマーケティング支援をはじめ、動画企画や記事企画のご提案、ファンクラブ戦略なども行っています。そのうちのひとつがシンデレラファイトです。コンサルタント事業で心掛けていることは、並走すること。将来的には考え方やスキームがその会社の文化として育ち、財産として残るようになるまでは伴走するスタンスでやっています。いろんな会社の人たちと一緒にチームでやっていくほうが面白いんですよね」

麻雀業界以外でも主にロボットやAIなどテクノロジー領域での新規事業開発や、ToB商材〜エンタメまで様々な企業のマーケティング支援などにも従事してきた。

麻雀界で最初に取り組んだ仕事とは?

「2019年にMリーグを初めて知り、観る雀となってから数カ月経った頃、麻雀ウォッチさんがライターを募集していたので、ライターも出来ますが、研究職だったので分析も出来ますと連絡したんです。その縁で一緒に仕事をさせてもらえるようになり、最初は記事Page View(ページビュー)の分析をやらせてもらいました。どういった人がどういうニーズでみているのか、Twitter(現X)からの流入はどのぐらいあるのか。どういった内容の記事を充実させたら伸びる可能性があるのかといったことを提案し、それまでの経緯も尊重しながら進めていったところ、ページビューは順調に伸びました」

プロデュースする上で大事にしていることは?

「自分がプロデュースする上で大事にしていることは、まず最初にやる意味を考えることです。対局番組であれば、制作する意味はなんなのか。関わる人すべてがその意味を考え、それを共有しながら作っていく。観る人も出演者もスポンサーさんも含め、みんなが良くなるためのプラットフォームを作るのが仕事なので、意味付けに関しては常に深く考えています」

プロデューサーを目指す人へのアドバイス

「世の中の動きに敏感になることが大事だと思います。世間が何に対して不安や不満を持っているのか。悔しい、腹立つといった負の感情を解消するのがビジネスなので、コンテンツを作る上では、世の中のニーズとの結びつきを意識していくことは大事だと思います。シンデレラファイトであれば、さまざまなプロに普段はどんな思いでリーグ戦や大会などに出ているのか。何に対して不安や不満を持っているのか。何を考えて何を求めてプロ活動をしているのかといった話を直接聞いています。そこで得た意見を参考に、解決するためにはどうしたらいいのか、解決策自体を面白く設定し、体現化していくためには何ができるのか。企画を作る時は現場の意見を参考にさせて頂いています」

 

「仕事の探し方は、おそらく多くの人が自分のできることから探すと思うんですが、私の場合はできることではなく、できないこと。できないけどやってみたいこと、やったことはないけど好きなことに積極的に挑戦しています。知らない世界では失敗も多いし、誰よりも苦しいけれど、それが楽しい。攻めの姿勢というか、発想の転換なのかもしれません」

児島さんにとって麻雀とは?

「麻雀って特殊な競技だと思っています。勉強したらできることと、勉強してもできないことが混在していて、まさに多様性が求められる現代社会やビジネスそのものだなと思うんです。理論の部分と運の部分があり、その上でこの人とまた一緒に打ちたいな、この人の麻雀への向き合い方が好きだなという人柄も出る。だから麻雀でコンテンツを制作すると複雑で面白くなりやすい。私自身は観る雀なので、麻雀はほとんど打ちませんが、麻雀を通じてその人の魅力が伝わるような面白いコンテンツを突き詰めていきたいですね」

インタビューを終えて

“観る雀”に寄り添った視点で、麻雀を介して人間の魅力を最大限に引き出す。「人生は失敗してもまたやり直せばいい。麻雀もたとえ負けたとしてもその人の麻雀人生が終わるわけではないので、また挑戦すればいいと、人生と同じ原理が麻雀の競技性で再現できるので、共感できるんだと思います」と児島さんの文化創造への挑戦に終わりはない。

◎写真協力:河下太郎(麻雀ウォッチ)/インタビュー構成:福山純生(雀聖アワー)

児島リョウプロフィール

1989年8月17日、京都府生まれ。AB型、同志社大学理工学部、大学院理工学研究科卒業。プロデューサー、コンサルタント。趣味はギター、映画鑑賞。「映画の仕事がしたかったぐらい邦画から洋画までジャンル問わず観ています。とくに気軽に観られる海外のB級映画作品は好きですね」

 

関連リンク

児島リョウ Twitter

『シンデレラファイト』公式サイト

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