Mリーグ2025-26シーズン会議前、『BEAST X(テン)メンバー入れ替えオーディション』で優勝し、ドラフト指名された下石戟選手。一体どんな思いでオーディションを戦っていたのか、実際にMリーグに参戦してから自身の中で何か変化があったのか。その素顔に迫るーー
部活など熱中されていたことは?
下石選手は3妹弟の長男として、日本最大の湖・琵琶湖がある滋賀県で生まれた。「小学校1年生の時はちょうどJリーグが始まった年で、三浦知良選手に憧れてサッカークラブに入りました。足は左利きだったんで、基本的には左サイドのMFでしたが、中学3年生まで続けている間に全ポジションを経験しました。高校では軟式テニス部、卒業後は自然が好きだったので、環境について学べる大学に進学しました」
麻雀を始めたのはいつ頃でしたか?
麻雀との出会いは意外な場所だったという。「麻雀という存在を初めて知ったのは大学1年生の時、琵琶湖の真ん中にぽつんと浮かぶ船の上でした。年に一度、水温や水の流れなどを24時間調べる定点観測という実習があって、40分寝て起きては観測を丸1日繰り返すので長時間眠れないんです。当時はスマホもなく、とにかく暇なんでUNOやトランプをやっていた私の横で、先輩たちがやっていたのが麻雀だったんです。その後、男3人でルームシェアしたんですが、ルームメイトのふたりから麻雀を教えてもらい、誰かを呼んでは手積みで麻雀を頻繁にやるようになりました。最初にアガった役満は国士無双だったことは覚えています」
プロ入りのきっかけは?
日本プロ麻雀協会にプロ入りしたのは大学2年生、20歳の時だった。「ゲームセンターでよくやっていた『セガNET麻雀MJ』にリアル麻雀プロが登場していたことでその存在を知り、私もプロになって力試ししてみたいと思ったんです。当時は関西で行われているプロリーグは、日本プロ麻雀協会と日本プロ麻雀連盟の2団体しかなく、馴染みのあった一発裏ドラのあるルールで、いつかはMJに出たいという理由で日本プロ麻雀協会のプロテストを受けました。以降、同団体の頂点である雀王を目標としてやって来ました」
プロ入りと同時に麻雀店スタッフとしてアルバイトを始め、毎月200半荘以上打つようになった。「大学卒業後は地元の麻雀店に就職し、ひたすら半荘数を積み重ねる生活が6年ほど続き、それが今の地盤にはなっています。もっといろんなタイトル戦にも出たいと思い、大阪で開催されていた勉強会にも参加するようになったんですが、そこで所属団体の先輩でMONDO TVの麻雀プロリーグにも出ていた金太賢さんと知り合い、東京の麻雀店を紹介してもらって28歳で上京しました」
ドラフト指名オーディションはどんな気持ちで臨んでいたのですか?
下石選手はBEAST Xだけでなく、EX風林火山のドラフト指名オーディションでも決勝に残り、注目されていた。「強いと思われたい。そんな気持ちで打っていました。どっちも勝ちたい気持ちはもちろんありましたが、負けたとしてもドラフトで選ばれるような内容のある麻雀を打ちたいという気持ちが強かったですね」

下石選手の麻雀をひとことで言うと?
自身の麻雀の特徴に関しては強調したいことがあるという。「踏み込みの強い麻雀とか、読みで押してくるなど、人から言われたことはありますが、私にとっては普通のことなので納得はしていません。私自身は攻撃派でも守備派でもなく、一番いいバランスで打っていると思っているからです。言うなら麻雀は14枚から何を切ったっていいわけで、そんな選択もあるんだと気づいていないような選択でも普通にしていきたい。ひねくれているのかもしれませんが、面白い麻雀を打っていきたいと思っています」
Mリーガーになったことで心境の変化はありましたか?
ドラフト指名前からMリーグの舞台で戦うことは目標のひとつだった。「私が考える面白い麻雀とは見ている人が面白いという感覚ですが、そう意識するようになったのはMリーグに入ってからかもしれません。プロデビューした頃は自分が勝てれば、見ている人が面白くなくても構わないと思っていました。プロリーグが映像対局でみられる時代ではなかったし、対局料や出演料が出るわけでもなく、逆に対局料を払ってプロ活動をしていたからです。とにかく雀王になるのが最優先だったんで、見ている人への配慮は二の次だったかもしれません。でもMリーグは契約金をもらって戦っているので、観る人がいてくれるからこそのMリーグだと意識が変わりました」
デビュー戦はどんな心持ちで臨まれましたか?
対局相手は園田賢(赤坂ドリブンズ)、鈴木優(U-NEXT Pirates)、石井一馬(EARTH JETS)だった。「初戦は久しぶりに緊張しましたが、この3人を相手に勝てたらおもろいなと思いながら、絶対勝たなきゃいけないというより、いい麻雀を打てたらいいなという感じで臨みました。結果は4着でしたがドーンと沈まず、盛り上がるところも作れたし、チートイツでも話題になるような少数派の選択もできたとは思っています。試合後は悲観することもなく、早く2戦目を打ちたいなという感じでしたね」

チーム内での役割は?
Mリーグ2025-26シーズン、BEAST Xはチーム創設時からのメンバーでプロ棋士との二刀流・鈴木大介選手、元乃木坂46・中田花奈選手に、元セガサミーフェニックスの東城りお選手、下石選手のふたりが新たに加入した4人で編成されている。「チームのキーマンである中田さんを強くすることです。チームからの依頼ではなく、私からの提案でした。勝つためにはブレ幅が大きいところを取りにいくのが大事で、例えば私がより強くなったとしても数十ポイント。でも中田さんが成長すると100~200ポイントはプラスになる伸びしろがあると思ったからです。それはチームのためでもあるし、中田さんのためでもあるし、私自身のためでもある。そしてチーム内では選手、スタッフ、マネージャーさん含め、人間関係の潤滑油になれたらなとは思っています」
具体的にはどんな指導をされているのですか?
「基本的には週1でセットをしながら、中田さんの登板日の牌譜は、帰宅してから電話で検討しています。そもそも中田さんは頭がいい方なので、手出しツモ切りを記憶したりするのは得意で、そうした強みをどう活かすのか。常に最悪を想定して打っていたことで、自分の手牌を大事にできていない傾向があったので、その判別精度を上げていくために、基本を徹底的に教えています。その上でレギュラーシーズンは私と中田さんでふたり合わせて15トップ、ポイントは±0以上を目標に掲げています」という下石選手は、一般の方向けの初級・中級教室も都内で開催している。
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麻雀を通して磨かれたことはありますか?
「麻雀は不条理なことやキツイことが多いのでメンタルが強化された気はします。また対局中は同じメンバーでかなり長い時間一緒にいることが多いので、コミュ力も磨かれたと思いますね」とまさにチーム戦には持ってこいの人材だ。

◆取材構成:福山純生(雀聖アワー)
下石戟(しもいし・げき)プロフィール
1987年3月20日、滋賀県生まれ。B型。日本プロ麻雀協会、BEAST X所属。主な獲得タイトルは第6回オータムチャレンジカップ、第15期RMUクラウン他。趣味は麻雀動画とお笑い動画鑑賞
▼Youtubeチャンネル「下石戟です^_^」はこちら
| 年 | 年齢 | 主な出来事 |
|---|---|---|
| 1987 | 0歳 | 滋賀県で3妹弟の長男として生まれる |
| 1993 | 6歳 | 小学校ではサッカークラブに所属 |
| 1999 | 13歳 | 中学校ではサッカークラブに所属 |
| 2002 | 16歳 | 高校では軟式テニス部に所属 |
| 2005 | 19歳 | 大学に進学し、環境を学ぶ |
| 2009 | 21歳 | 日本プロ麻雀協会にプロ入り 第6回オータムチャレンジカップ 優勝 |
| 2023 | 36歳 | 第15期RMUクラウン 優勝 |
| 2025 | 38歳 | BEAST Xメンバー入れ替えオーディション優勝、BEAST Xからドラフト指名を受ける |



























