麻雀中に表情に感情を出してよいかどうか——
この議論に正解はない。
しかし、心の底から滲み出る自然な表情は、観戦する者の心を打つ。
一視聴者として、私はもっと多くの表情を見てみたいと思う。
そして、シンデレラファイトで最も表情豊かな選手といえば、羽月ではないだろうか。
まずは、BEST16_GroupA#2の舞台に立った4人の選手たちを紹介したい。
齊藤しょあ
初出場ながら雀魂予選を制し、シンデレラファイト常連の3人に挑む新星。
羽月
4年連続本戦出場の常連。初年度からSNSでシンデレラファイトの告知を毎回盛り上げる、大会の顔ともいえる存在。
木下遥
シンデレラファイトシーズン2で準優勝という輝かしい実績を持つ、折り紙付きの実力者。
安藤りな
北海道から参戦。プロ7年目、今年がラストイヤーという特別な想いを胸に挑む。
座順は以下の通り開幕した。
東:齊藤しょあ
南:羽月
西:木下遥
北:安藤りな
ハラハラドキドキの東4局からみていきたい。
齊藤がまずをポン。
現状ラス目の羽月は、ドラ2枚の勝負手。を暗槓する。
その後すぐ、齊藤が
をポンし、
待ちの聴牌に構える。
他家から見ると、大三元の影がちらつく恐ろしい形だ。
三段目に差し掛かり、羽月の手にの暗刻が完成。
を切れば聴牌となるが、
で放銃すれば高打点は確実。羽月は
を切らず、一旦
を選択した。
羽月の最終ツモ番、が暗刻になり、またしても
を切れば聴牌となる。
ここの羽月の顔を見てほしい。
「いや〜〜、これいっちゃだめなの分かってるんだよ〜、まいったね」
そんな声が聞こえてくるような表情だった。視聴者は皆、感情移入せずにはいられない。苦渋の羽月。ここもで降りを選び抜いた。
結果は齊藤の一人聴牌。
齊藤の手牌が開かれたときの、羽月の苦しい顔もカメラは捉えている。
「いけたんかぁ、さすがに無理やけどな」の声が聞こえてきそうだ。
南1局1本場、2本場は羽月が放銃となり、迎えた南2局。
7800点のラス目である親の羽月は、なんとしても連荘したい。
好配牌だった木下が、6巡目にリーチ。待ちは。
羽月はなんとか聴牌だけでも取りたいが、羽月が欲しいはこの時点で山に残っていなかった。
結果は、木下がリーチ・ツモ・ピンフ・赤・ドラ1の2000・4000をアガり、羽月の連荘の夢は儚く散った。
南3局、箱下のマイナスで親番がない羽月は、高い手を作るしかない。
配牌はこちら。染め手で跳満以上の手を目指していく。
2巡目に出た自風のをポンしていくのだが、そのときの「いや〜鳴くしかないよなあ」という表情は、まさに羽月らしさの真骨頂だった。
羽月が高打点を組み立てている間に、安藤はを切っての役無し
待ちか、
を切っての一盃口の
待ちかを選べる形となる。
が3枚切れなのもあり、安藤は迷わず役ありのカン
待ちのダマテンにとる。
次巡、齊藤からのをロンし、一盃口・赤、2600のアガリとなった。
南4局、羽月の条件は三倍満ツモか齊藤からの倍満直撃という厳しいものだった。
齊藤は、跳満ツモでのトップを目指し、待ちでリーチ。
羽月も、倍満直撃を狙う混一色・七対子の一向聴まで手を育てた。
結果は、齊藤がをツモり、裏を乗せてリーチ・ツモ・ピンフ・ドラ2・裏2の3000・6000。3着から1着の大逆転となった。
最終結果は以下の通りとなった。
1位通過:齊藤しょあ
2位:安藤りな
3位:木下遥
脱落:羽月
1位通過の齊藤は、Best8への切符を手にした。2位の安藤と3位の木下は直後にある#3を戦うことになる。
そして、ラスとなった羽月——彼女の今年のシンデレラファイトは、ここで幕を下ろすこととなった。
退場したくないよね~いやするけどさ、の顔も観る者の胸を打つ。
シンデレラファイトの対局後はすぐに反省会があるが、こんなに明るい場になったことがあるだろうか。
かなり悔しいはずだが、しんみりした雰囲気にさせない。
関西人の鑑だ。
3人の子どもを育てながら休みをとらずに働き、対局のために関西から東京まで遠征する。
この夜も深夜バスで兵庫まで戻るという。
苦労も多いはずなのに、全く感じさせない底抜けの笑顔に癒やされる。
羽月は一緒に飲んだら絶対に楽しいはずなので、ぜひ会いに行ってほしい。
Day5結果レポート
#1,#3観戦記
小さな背中にいっぱい背負って 麻雀の神様に会いに行こう【シンデレラファイト シーズン4 BEST16GroupA #1 担当記者・中島由矩】
儚く散った二人の光【シンデレラファイト シーズン4 Best16 GroupA #3 担当記者・坪川義昭】