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ネマタの戦術本レビュー第146回「天才雀士3人に麻雀のことを聞いたらバカ勝ちできた。 著:ASAPIN その6」

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テーマ6「完全イーシャンテンどのくらい取るか」

 完全1シャンテンに取らずに浮き牌を残してリャンメン×2の1シャンテンに取る理由には以下のようなものが挙げられます。

・ 将来危険になりやすい牌を先に切る
・ 安全度の高い牌を残す
・ 高打点への手変わりを残す
・ よりアガリやすい手への手変わりを残す
・ 他家から出アガリしやすいように河を作る
・ 他家に鳴かせたくない牌を絞る

http://epsilon69399.blog20.fc2.com/blog-entry-298.html
http://epsilon69399.blog20.fc2.com/blog-entry-330.html
http://epsilon69399.blog20.fc2.com/blog-entry-331.html

 完全1シャンテンに受けない理由がある場合も完全1シャンテンに取るべきかどうかについて、現在ではシミュレートを用いた検証がされています。完全1シャンテンに受けない理由が1つだけの場合は、浮き牌を残す選択側に結構有利な条件がついている場合でも、精々微妙というところで浮き牌残しがはっきり有利になる領域は多くありません。

 特に条件を設けない場合、メンゼンで完全1シャンテンをリャンメン×2の1シャンテンにするとアガリ率は2割ほど落ちます(6巡目であれば完全1シャンテンのアガリ率約40%、リャンメン×2の1シャンテンなら約32%)。具体的なアガリ率に言及されることはこれまでもあまりなかったように思われますが、データで示されるとその差がはっきり分かります。

 ただし、完全1シャンテンに受けてトイツがコーツになってテンパイした時はドラが出ていく、先切りすれば安牌を残せるというように、浮き牌を残す理由が2つになると、今度はデータのうえでも浮き牌残しに分があることが分かります。

 完全1シャンテンについて、実はかなり大昔からその優秀性については知られていました。
http://www9.plala.or.jp/majan/bri4a.html 

 ただし主流にはならず、手変わりや安牌残し、あるいは迷彩といった理由で先切りの手筋ばかりが広まっていたようです。運の要素が強く競技として成立させるのが難しいこともあり、麻雀プロが実利よりも「魅せる麻雀」にこだわるようになり、観戦者もそれを求めるようになったという時代的背景がうかがえます。

 最近こそ完全1シャンテンに受けるのが基本有利であるという見解が主流になっていますが、具体的な検証がされているものは少なく、完全1シャンテン側にテンパイしやすさという目に見えてはっきり分かるメリットがあるため、完全1シャンテンを過大評価する傾向があるかもしれません。
 確かに、先ほど取り上げましたように、先切りをする理由が1つだけなら、完全1シャンテンに取らない方がよいケースは少なく、一昔前の戦術書であれば先切りが推奨されることが多かったので、基本は完全1シャンテンに取るものとして戦術を構成した方がよいと思います。

 しかし、完全1シャンテンに取らないだけの理由は数多くありますし、実戦ではトイツをコーツにする牌が山にあまり残っていないという理由も含め、完全1シャンテンに取らずに浮き牌を残すだけの要因が多岐に渡ることも珍しくありません。完全1シャンテン自体は非常に頻出する牌姿なので、いつ、何を引いたら完全1シャンテンに取らないかについては実戦中に考えておく癖がつけておきたいですね。セオリーをよく知り、そのうえで実戦ではいつセオリーを覆す選択をするかを考える。強者になるための条件と言えるかもしれません。

 

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この記事のライター

ネマタ
浄土真宗本願寺派の僧侶。麻雀戦術サイト「現代麻雀技術論」の著者。
同サイトは日本麻雀ブログ大賞2009で1位に。
1984年佐賀県生まれ。
東京大学文学部中退。

著書:「勝つための現代麻雀技術論」「もっと勝つための現代麻雀技術論 実戦編

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