最高位戦日本プロ麻雀協会の代表は、新津潔プロです。
20年以上代表を務める大先輩ですが、行動やファッションが若々しく、年齢を感じさせません。また、気さくで優しく、その人柄は多くの人に親しまれています。「麻雀ウオッチ」のインタビュー記事では、麻雀に対する考えをじっくり読めますので、ぜひご覧ください。
その新津プロの著書に、「麻雀 押し引きの戦術」という本があります。
読書家としても知られる新津さんだけに、味わい深い文章で、丁寧に攻守のバランスが解説された1冊です。
ドラの大切なポイントも書かれているので、ご紹介しましょう。
それは、他家にドラがどう分配されているか。
そして、ドラを2枚以上持っている人は攻めてきやすい、ということです(P22~23)。
赤ありルールだとドラは7枚、赤なしだと4枚あります。巡目が進んでも、自分の手に1枚もなく、切られてもいないとしたら…。他家の手に多くあることになりますね。
赤ありで、局の最終盤、自分からドラがまったく見えていないとしたら、どうでしょう。
王牌にドラが眠っていることもありますが、ほとんどの場合、他の3人はあわせて6~7枚のドラを持っています。下家が2枚、対面が3枚、上家が2枚、というような分配が考えられます。4枚以上抱える人がいるかもしれません。
ドラが多い人は、テンパイしてもリーチをかけず、ダマで待っていることもよくあります。打点があれば「アガりやすいダマにして確実に加点しよう」と考えるときも多いからです。
他家の打点は総じて高く、かつ、テンパイしているかもわかりにくい。地雷原を歩くような危険な状態ですね。他家のリーチがかかっていなくても、中途半端に、安全ではない牌は切らない方が良さそうです。
一方、自分にドラが2~3枚あり、かつ場にも切られているとします。残りのドラは少なく、不意に振り込んでも、ダメージは小さくてすむことが多そうです。
前回も書きましたが、ドラは、1枚で1つ役がつく強いパワーをもっています。ピンフヤタンヤオは、14枚全部を使ってある条件を満たし、ようやく1ハンなのに、ドラは1枚で1ハンです。ドラの所在は、極めて重要な情報なのです。
「自分になければ他家にある」「自分に多くあれば、他家には少ない」ことを常に意識しましょう。
ドラは、平均するとどの程度来るのでしょうか。計算してみましょう。
麻雀牌は136枚あり、配牌は4人に13枚ずつ、合計52枚。52÷136で、全体の38%の牌が最初に配られることになります。
赤がある場合は、平均すると7枚の38%、約2.68枚のドラが配られる計算です。
1人あたりにすると、2.68÷4で、0.67枚ですね。
同じように、6巡目(捨て牌の1列目終了時)、12巡目(2列目終了時)の時点で、ドラをどの程度手にするのか、計算してみます(鳴きは考慮しません)。
赤あり | 赤なし | |
表ドラの枚数 | 7枚 | 4枚 |
配牌時に4人に配られる合計枚数の平均 | 2.68枚 | 1.53枚 |
1人当たりの平均枚数 | 0.67枚 | 0.38枚 |
6巡目までに4人が手にする合計枚数の平均 | 3.91枚 | 2.24枚 |
1人当たりの平均枚数 | 0.98枚 | 0.56枚 |
12巡目までに4人が手にする合計枚数の平均 | 5.15枚 | 2.94枚 |
1人当たりの平均枚数 | 1.29枚 | 0.74枚 |
赤ありでは、平均して、6巡目の時点で3.91枚、ほぼ4枚のドラが誰かの手にわたり、残り約3枚が山の中にある計算です。
捨て牌の1列目が終わって、自分に1枚もないと、ドラについてはかなり不利な状態です。この時点で、他家の誰かが、2枚以上持っている可能性が高いですね。
逆に、序盤~中盤で自分にドラが2枚以上あると、相当有利だといえます。
新津さんの著書では、赤なし(ドラ4枚)でヤマに1枚残っている時に、自分(南家)に1枚ある場合、1枚もない場合にわけて、他家がどう持っているかが図表で解説されています。
自分に1枚あるかないかで、他家のドラ枚数がかなり変わることが分かると思います。自分が0枚なら、ほとんどの場合、2枚以上持っている怖い他家がいるのです。
わすか1枚の差で、押し引きの判断が変わることもあるーーそれぐらい、ドラはキー牌なのだと覚えておきましょう。
次回は、その大切なドラを手放す場合と、裏ドラのお話です。