今回お伝えしたいことは、引くと決めたら徹底的にオリましょう、ということです。いわゆるベタオリですね。
押し引きは「押し」「引き」の2択というより、グラデーションがあります。
1 何があっても押す。ドラや明らかな危険牌も切りとばす
(すべて突っ張ることから、「全ツッパ」と呼ぶ状態です)
2 ほぼ押すが、ドラや、明らかな危険牌は切らない
3 様子見。まあまあ安全そうな牌を切りながら反撃機を待つ
4 引く。振り込まないことが最優先(ベタオリ)
のような感じです。
上のうち、いったん4のベタオリを決めたら、未練は断ち切りましょう。育てた手を崩すのは大変つらいですが、見切ることも大切です。
ベタオリするときは、自分の手のなかで、安全度が高い牌から順番に切ります。
100%安全なのは「現物(げんぶつ)」「リーチ後に他家が切って当たらなかった牌」「今切られたばかりの牌」です。
「現物」は、相手が河に切っている牌そのものです。「自分が切った牌ではロンできない」というフリテンのルールがあるので、放銃することはありません。
また「自分がリーチした後に、アガリ牌が出て見逃したときは、再びアガリ牌が出てもロンできない」というフリテンのルールもあるので、リーチ後に通った牌も安全です。
「今切られたばかりの牌」は、同巡内フリテンのルール(アガリ牌が出て見逃したときは、次の自分の打牌までロンできない)があるので安全です。
対面が次のような仕掛けをしているとしましょう。河にはピンズやソーズが並んでいます。マンズのホンイツが濃厚ですね。
ドラ
ドラがで、打点が高いかもしれず、振り込みたくはありません。
字牌とマンズはすべて切りにくい状態です。
ここで、上家がを切って、通りました。
すると、今だけはは安全牌になります。同巡内フリテンのルールがあるので、上家のがロンされなければ、自分のも当たりません。
ただ、直後に対面が牌を入れ替えたら、もうは安全牌とはいえません。手が変わって、待ちになった可能性があるためです。
「現物」は終局まで安全ですが、「1巡だけの安全牌」は、一瞬きらめく宝石のような貴重品なので、見逃さないようにしましょう。
手元に「1巡だけの安全牌」と「現物」が両方あれば、前者を先に切ります。今切らないと、次巡以降は安全とは限らないからです。
このように、安全牌が複数あるときは、切る優先順位が大事です。
別の例を考えましょう。
上家が、次のように切ってリーチしてきました。
リーチ
ベタオリを決めた自分の手には、幸い、の現物があります。このようなケースでは、を先に切ります。
敵はリーチ者だけでなく、他の2人も攻めてくる可能性があるためです。そうなっても、は比較的安全です。一方、は追っかけリーチ者に対して安全とは限りません。
あとあと安全そうなを温存し、を先に切った方が、防御力は上がります。追いかけリーチをする人は、「リーチ合戦になって放銃するリスクを考えても攻めた方が得」と考えているので、それなりの手が入っているケースがあります。
先制リーチをした人はリーチのみの安い手で、追いかけた人はドラがいっぱいの本手、というパターンも多いので、将来をみすえたベタオリが大切です。
また、ほかに100%安全な牌としては「国士無双が否定されているときの3枚切れの字牌」があります。
普通の手では、字牌が当たるパターンはシャンポン待ちかタンキ待ちですね。
例えば、既にが自分から3枚見えていれば、シャンポン待ちもタンキ待ちもないので、が当たることはありません。
唯一の例外は、国士無双です。相手が
でテンパイしていたら、4枚目ので役満放銃になってしまいます。国士無双は、大三元と並んで振り込みやすい役満のトップ2なので、常に警戒しましょう。
(役満の中では四暗刻がもっともできやすいのですが、ほとんどの場合はツモって四暗刻です。放銃するのは四暗刻タンキ待ち、いわゆるスッタンだけですが、確率は低いです)
ただ、一九字牌のどれか1種類が、自分から4枚見えていたら、国士無双の可能性はありません。その場合は、3枚切れの字牌は100%安全となります。
思考の過程を言語化すると、
1 を切って当たるとすれば、どういうケースがあるか?
2 普通は、シャンポン待ちかタンキ待ちがある
3 は場に3枚切られている
4 よって、シャンポン待ちもタンキ待ちもない(結論1)
5 他には、わずかながら国士無双の可能性も考えられる
6 しかし、場にが4枚切られている
7 よって、国士無双の可能性もない(結論2)
8 結論1と2をあわせると、を切って放銃することはない
となります。
私が、子どもに麻雀をすすめる理由の一つは、このように筋道を立てる基礎訓練になるためです。
この力は、日頃の勉強や受験はもとより、将来、あらゆる仕事で使います。例えば医師は、患者の症状を診て、考えうる病気をいくつか思い浮かべ、「○○だからA病ではない」「残る可能性はB病かC病だ」「それを見極めるには□□の検査が必要だ」という思考をします。
子どもが楽しみながら論理的思考力を鍛えるにも、麻雀は最適な手段の一つだと思います。年末年始の時間があるときに、ご家族や親戚のみなさんで卓を囲むのもおすすめです。
次回は、100%安全な牌がない時の考え方を紹介します。