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卓上でヨシ!麻雀暗記ノート 第45回 オリるときは徹底的に

卓上でヨシ!麻雀暗記ノート 第45回 オリるときは徹底的に

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今回お伝えしたいことは、引くと決めたら徹底的にオリましょう、ということです。いわゆるベタオリですね。

押し引きは「押し」「引き」の2択というより、グラデーションがあります。
1    何があっても押す。ドラや明らかな危険牌も切りとばす
 (すべて突っ張ることから、「全ツッパ」と呼ぶ状態です)
2    ほぼ押すが、ドラや、明らかな危険牌は切らない
3    様子見。まあまあ安全そうな牌を切りながら反撃機を待つ
4    引く。振り込まないことが最優先(ベタオリ)
のような感じです。

上のうち、いったん4のベタオリを決めたら、未練は断ち切りましょう。育てた手を崩すのは大変つらいですが、見切ることも大切です。

ベタオリするときは、自分の手のなかで、安全度が高い牌から順番に切ります。
100%安全なのは「現物(げんぶつ)」「リーチ後に他家が切って当たらなかった牌」「今切られたばかりの牌」です。

「現物」は、相手が河に切っている牌そのものです。「自分が切った牌ではロンできない」というフリテンのルールがあるので、放銃することはありません。

また「自分がリーチした後に、アガリ牌が出て見逃したときは、再びアガリ牌が出てもロンできない」というフリテンのルールもあるので、リーチ後に通った牌も安全です。

「今切られたばかりの牌」は、同巡内フリテンのルール(アガリ牌が出て見逃したときは、次の自分の打牌までロンできない)があるので安全です。

対面が次のような仕掛けをしているとしましょう。河にはピンズやソーズが並んでいます。マンズのホンイツが濃厚ですね。

[牌背][牌背][牌背][牌背][牌背][牌背][牌背] [一][一][一] [発][発][発]  ドラ[七]

ドラが[七]で、打点が高いかもしれず、振り込みたくはありません。
字牌とマンズはすべて切りにくい状態です。

ここで、上家が[八]を切って、通りました。

すると、今だけは[八]は安全牌になります。同巡内フリテンのルールがあるので、上家の[八]がロンされなければ、自分の[八]も当たりません。

ただ、直後に対面が牌を入れ替えたら、もう[八]は安全牌とはいえません。手が変わって、[八]待ちになった可能性があるためです。

「現物」は終局まで安全ですが、「1巡だけの安全牌」は、一瞬きらめく宝石のような貴重品なので、見逃さないようにしましょう。

手元に「1巡だけの安全牌」と「現物」が両方あれば、前者を先に切ります。今切らないと、次巡以降は安全とは限らないからです。

このように、安全牌が複数あるときは、切る優先順位が大事です。

別の例を考えましょう。
上家が、次のように切ってリーチしてきました。

[西][北][一][⑦][⑨][4] リーチ

ベタオリを決めた自分の手には、幸い、[西][北][⑦]の現物があります。このようなケースでは、[⑦]を先に切ります。

敵はリーチ者だけでなく、他の2人も攻めてくる可能性があるためです。そうなっても、[西][北]は比較的安全です。一方、[⑦]は追っかけリーチ者に対して安全とは限りません。

あとあと安全そうな[西][北]を温存し、[⑦]を先に切った方が、防御力は上がります。追いかけリーチをする人は、「リーチ合戦になって放銃するリスクを考えても攻めた方が得」と考えているので、それなりの手が入っているケースがあります。

先制リーチをした人はリーチのみの安い手で、追いかけた人はドラがいっぱいの本手、というパターンも多いので、将来をみすえたベタオリが大切です。

また、ほかに100%安全な牌としては「国士無双が否定されているときの3枚切れの字牌」があります。

普通の手では、字牌が当たるパターンはシャンポン待ちかタンキ待ちですね。
例えば、既に[東]が自分から3枚見えていれば、シャンポン待ちもタンキ待ちもないので、[東]が当たることはありません。

唯一の例外は、国士無双です。相手が

[南][南][西][北][白][発][中][一][九][①][⑨][1][9]

でテンパイしていたら、4枚目の[東]で役満放銃になってしまいます。国士無双は、大三元と並んで振り込みやすい役満のトップ2なので、常に警戒しましょう。
(役満の中では四暗刻がもっともできやすいのですが、ほとんどの場合はツモって四暗刻です。放銃するのは四暗刻タンキ待ち、いわゆるスッタンだけですが、確率は低いです)

ただ、一九字牌のどれか1種類が、自分から4枚見えていたら、国士無双の可能性はありません。その場合は、3枚切れの字牌は100%安全となります。

思考の過程を言語化すると、

1    [東]を切って当たるとすれば、どういうケースがあるか?
2    普通は、シャンポン待ちかタンキ待ちがある
3    [東]は場に3枚切られている
4    よって、シャンポン待ちもタンキ待ちもない(結論1)
5    他には、わずかながら国士無双の可能性も考えられる
6 しかし、場に[中]が4枚切られている
7    よって、国士無双の可能性もない(結論2)
8    結論1と2をあわせると、[東]を切って放銃することはない

となります。

私が、子どもに麻雀をすすめる理由の一つは、このように筋道を立てる基礎訓練になるためです。

この力は、日頃の勉強や受験はもとより、将来、あらゆる仕事で使います。例えば医師は、患者の症状を診て、考えうる病気をいくつか思い浮かべ、「○○だからA病ではない」「残る可能性はB病かC病だ」「それを見極めるには□□の検査が必要だ」という思考をします。

子どもが楽しみながら論理的思考力を鍛えるにも、麻雀は最適な手段の一つだと思います。年末年始の時間があるときに、ご家族や親戚のみなさんで卓を囲むのもおすすめです。

次回は、100%安全な牌がない時の考え方を紹介します。

この記事のライター

藤田 明人
最高位戦日本プロ麻雀協会第43期後期(2018年入会)
兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、新聞社に入社。
記者を経て、教育事業部門で勤務。
麻雀が、幅広い世代の学びにつながることを研究しています。

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