2013年にイギリスで開催された「G8認知症サミット」後、日本の認知症対策は「国家戦略」と位置づけられ、2016年度から全国で1万人規模の住民を対象とした健康や生活習慣の追跡調査が実施されている。
65歳以上の4人に1人は認知症または予備軍とされる昨今、今号の教室アンケート調査レポートでは「教室に通い始めた目的」と「マージャンを始めてから起きた日常変化」について考察してみる。※アンケートは2017年3月、都内近郊12教室で実施。回収715名。
国家戦略でもある認知症対策〝予防〟こそが最大の施策
健康麻将全国会が行ったアンケート調査によると「教室に通い始めた目的」では「認知症予防」が目的と回答した生徒さんが26.7%と全体の4分の1を占める結果が出た。
マージャンを認知症予防に役立てようと介護予防事業に取り入れている自治体もあるが、関連性に関しては、明快な研究結果は出ていないのが現状だ。
そこで佐賀県佐賀市で、国立大学法人佐賀大学と連携し「介護予防」の観点から、マージャンと脳の関係性を調査しているNPO法人・活気会の東内順子さんに話を聞いた。
「私たちはマージャン教室に通い始める前と通った後(週1回全20回・5カ月後)の2回、佐賀大学が行う認知機能検査をサポートし、2004年からこれまでに約900人のデータ収集に協力してきました」
東内さんは、佐賀県立病院好生館(現・佐賀県医療センター好生館)の元看護部長で、定年後も福祉の面から県民に何か貢献できないかと模索していた時に、マージャン教室の存在を新聞記事で知ったという。
「生徒さんの笑顔がとても楽しそうだったんです。これは介護予防につながるかもしれないと直感が働き、主催していた品川区役所(東京都)を訪ねました」と振り返る。
「私はマージャンをやったことがなかったんでわからなかったのですが、担当者からはマージャンに悪いイメージを持っている人もいるので、行政が募集し、行政の場所を利用した教室展開なら、安心して参加してくれますよ」とアドバイスをもらったという。
記事に出ていたマージャン教室も実際に見学した東内さんは、国が推奨する地域ネットワークを構築する手段として、マージャンは適切だと確信した。そしてすぐにNPO法人・活気会の活動に取り入れ、佐賀県内の公民館でマージャン教室をスタートさせた。
「デイサービスに行くのはプライドが許さない男性でも、マージャンとなれば前日から体調を整えて通って来たりなど、生活習慣の軸となる好影響が出ました」
こうした事例のように、楽しみながら認知症予防につながることに、学術的な根拠があれば、もっとマージャンが広まるのではないかと考え、データ分析を依頼したと語る。
東内さんの研究テーマには、健康麻将全国会代表の金澤喜重氏も大きな期待を寄せている。
「教室に通っている生徒さんは、最初から認知症予防が目的という方よりも、定年後や、子供が成人後に生まれる自由な時間をどう創造するのか。参加してみたら友達ができるのと同時に、認知症予防にもいいかもという実感があるのかもしれません。今後、東内さんが取り組んでいるデータ分析発表が、様々な分野でマージャンを推奨していくきっかけになる可能性は高いと感じています」
実際、アンケートにも以下のような意見があった。「瞬時に頭を回転させる集中力が養われた」(70代・女性)「生活にリズムが生まれた」(60代・女性)「皆様に月に何回かお会いできるのがうれしい」(70代・女性)。
現代の医学を駆使しても、認知症を防ぐことはできない。しかし生活習慣からの〝予防〟は誰にでも出来るのではないだろうか。
⬛︎取材:福山純生(雀聖アワー)