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極限の場面での二択。安達瑠理華という大輪の華――【麻雀ウォッチ プリンセスリーグ2019 プレーオフ1st】

極限の場面での二択。安達瑠理華という大輪の華――【麻雀ウォッチ プリンセスリーグ2019 プレーオフ1st】

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「今日はすごく楽しみだなっていう気持ちで目が覚めました」

最高位戦日本プロ麻雀協会所属、「闘華飛翔」安達瑠理華。番組冒頭で彼女が発したコメントは、個人的には意外だった。

麻雀ウォッチ プリンセスリーグ2019のプレーオフ1st。半荘2戦の上位1名のみが2ndへと駒を進めるサバイバルレースだ。

守備寄りの雀風の安達は、リーグ戦やトーナメント戦においては、これまでのキャリアでもつねに安定した結果を残し続けてきた。その一方で、トップ抜けのルールはあまり相性が良くないという印象があった。放送では快活な立ち居振る舞いを崩すことのない彼女だが、実際のところは非常にセンシティブな人柄だと思う。対局前にナーバスになっているのではと危惧もしていたのだが、どうやらそれは取り越し苦労だったようだ。

「打つ回数を重ねてプリンセスリーグのルールに馴染んできたのと、このシステムが面白くて。私、予選ではけっこう負けていたのに通過できて、まだチャンスがあるということがうれしかったですね」

努力している姿をあまり人に見せたがらない安達ではあるが、麻雀にかける熱量は本物だ。実戦で気になった局面があったら、実力者へ欠かさず質問するという。聞き及んだ話では、深夜に小林剛プロに連絡をして、何時間も質問責めにしたこともあったそうだ(それにしっかり受け答えする小林プロもすさまじいのだが……)。

その熱をぶつけ、万全の準備をしてきた。対局前の発言から、そんな安達の心情を察することができた。

プレーオフ1stで対局したのはAブロック4位の松嶋桃、Cブロック4位の杉村えみ、そしてワイルドカードとして最後の切符を手にした愛内よしえ。対局者の中に親友の松嶋がいたことも、安達にとっては良い発奮材料だったという。

「私が半年くらい早くプロになっていて、初めて会ったのは最高位戦ペアマッチに出場した時。もう、私が一目惚れして(笑)。で、同卓した時に桃たん(松嶋)に声をかけてもらって、もう好きになっちゃいましたね」

プライベートで親交の厚い松嶋のことをそう評した安達だが、同卓経験は今回で3回目だという。親友と雌雄を決する場として、この上ない舞台だった。安達ならずとも熱がこもるというものだ。

初戦の東1局、安達はいつになく積極的だった。オタ風のから仕掛け、ソーズのホンイツへとまっしぐらに進む。2枚目の(ドラ表示牌に1枚)ならば鳴くのは必然と思う方もいるかもしれない。だが、仕掛けた後には役牌の、また河がいかにもソーズ模様のため、他家にケアされるリスクも付きまとう。少なくとも、以前の安達ならばを受け駒として残すか、メンホンチートイツを狙っていたように思う。だが、この場は半荘2戦でトップ抜けを目指すスプリントレース。開局早々に、安達はその気概を感じさせた。

そんな思いが結実するかのように、松嶋からを鳴くことにも成功した。

ん? この仕掛けに役牌を切っていくということは……

そう、親の松嶋には十分すぎるほどの勝負手が入っていた。メンタン赤、 待ちの本手で主導権を握りにかかる。安達もテンパイへとこぎつけて真っ向勝負を挑んだが――

先にをつかんでしまう。

裏ドラは乗らず、7700点の出アガリ。結果的に放銃となってしまった安達だが、解説の金太賢は、これを「普段の安達さんの雀風から、からは行かないと思っていました。トップを取るんだという姿勢が感じられる良い放銃」と評した。安達もまた「を鳴かずにメンホンチートイに仕上がれば高いんですけど、基本は仕上がらない手だと思うので。座してチャンスを待っていたらダメなんだなという思いでした。ああいう戦いの東1局から声が出せるかって、自分ではけっこう大事かなって思っています」と振り返った。

続く1本場は松嶋が1100オールをツモアガってさらなる加点に成功。さらに差が開いてしまった安達だが、ここで大きなチャンスが巡って来た。タンヤオ・赤ドラのカン待ちでテンパイしているところに引き。

ここでテンパイを崩す打とした。イーペーコーへの変化やマンズの伸びを考慮し、さらなる良形を目指す。うまく育てば跳満、倍満クラスのアガリも見込めるだろう。そして――

この引きも魅力的だ! 三色こそ崩れてしまうものの、赤ドラの本手を3メンチャンに託せるのはうれしすぎる。

これを愛内から討ち取り、一撃で原点付近にまで浮上した。

勢いに乗る安達は、東3局にもメンピン・イッツーの満貫を愛内から和了。松嶋を射程圏内へと捉えた。

東4局、安達が松嶋の捨てたドラのをポン。これをアガりきれば一気にトップ目へと立てるが――

当然、松嶋も十分な勝負手だからドラを切るのだ。ピンフ赤2の 待ちでリーチをかける。アガりきれば安達を一気に突き放せるが――

両者の本手を杉村が叩きつぶす! リーチ・タンヤオ・ピンフ、3900点を松嶋から出アガり、決定打を阻止することに成功した。

安達は南2局に杉村から5200をアガり、ついに松嶋をまくることに成功。とはいえ、残る2局のこの点棒状況は、まだまだ予断を許さない状況だ。そんな局面で、またしても安達にチャンスが巡って来た。ピンフ・赤ドラの 待ち。ここでは手堅くヤミテンを選択。安目のでは3900点止まりだが、他家からの出アガリでも8500差がつき、オーラスの松嶋には安達からの5200直撃か1600-3200以上のツモという比較的厳しい条件が課せられる。松嶋の捨牌が濃くなっている中であれば、これで十分としたのだろう。その判断は――

松嶋からの直撃という最高の結果へとたどり着いた。これが決定打となり、安達は見事に初戦トップを飾って見せた。

「初戦がトップで終わって、やったと喜んじゃったんですよね。戦いは、まだ終わってないのに。戦いの最中に歯を見せたというか、その自分に気付いて。もう一回気持ちを引き締めなきゃと思ったけど、精神状態は良くないとその時に思いました」

2戦勝負で初戦をものにしたことで、安達が一気に優位に立ったことは間違いない。ただ当人は同時に危機感を覚えていたようだった。そんな不安が的中するような展開が、2回戦に訪れる。

東1局、松嶋が2000-4000のツモアガりで会心のスタートを切る。初戦2着だった松嶋がリードすることは、安達にとって最も厳しい展開だ。松嶋がトップに立った場合、安達は7300点差以内の2着目に入らなければならない。

続く東2局、愛内からピンフ・イッツーの渾身のリーチが入る。2巡目にを切ってリャンメン固定しているところが、なんとも心憎い。

守備に定評のある安達も、手詰まりのこの手格好からでは以外に選ぶ牌がなさそうだ。安達にとって、あまりに痛すぎる満貫放銃――。

南入する頃には、安達と松嶋の点差は40000点近くにまで広がっていた。初戦のリードは潰え、退路は断たれた。安達はこの牌姿からをトイツ落としして、456の三色も見据えた門前手順で進行していく。

11巡目、松嶋もチートイツのでテンパイ。本手の安達は、を持ってきて止める余裕はないだろう。残された時間は、あまりにも少なかった。

そんな中、安達が待望のテンパイを入れた! タンヤオ・ピンフ・イーペーコー・赤のヤミテン満貫を、迷わずにリーチ! 松嶋との点差を考慮し、強気に跳満ツモを目指す。

そしてここに、後に引けない者がもう一人。最後の親番を迎えた愛内が、ペン待ちで追いかけリーチを放った。アガらなければ流局なのだ。どんな状況であろうと、愛内からしたら立ち向かう以外の選択肢はない。

このリーチを受けた松嶋は、をトイツ落としして撤退。彼女としては、さすがに無理をする状況ではない。を切ればテンパイを維持できるものの、安達は北家。場に1枚切れのを切ってテンパイキープをするのはリスクに見合わないとの判断だろう。

一方、杉村は安達と愛内の当たり牌を4枚も抱え込んでいた。をつかんだ時点でテンパイを崩し、を切りながら迂回。

をポンして単騎のテンパイで復活を果たした。これでアガリきれば2軒リーチではあるが――

ここから一手でも手変わりしようものなら、安達か愛内の当たり牌が飛び出す形でもあった。共通安牌はゼロ。杉村は――

安達が欲するを河に放った――

8000点のアガリで、安達は松嶋との点差をおよそ30000点にまで縮めた。

南2局1本場には杉村が愛内からチンイツ・赤の18300点をアガるという派手な展開も訪れ、勝ち抜けの行方はほぼ3者に絞られた。

オーラス時点でのトータルトップ目は松嶋。安達は先に述べたように7300点差の2着にまで食い込むこと、杉村は松嶋からの跳満直撃か倍満ツモ、愛内はダブル役満直撃という条件戦になった。

ラス親の安達としては、とにかくアガり続ければいいというシンプルな状況だ。まずは・赤1の1000オールをツモりアガり、ひとまず4000点の差を縮めることに成功。条件達成まで、残り20600点。とはいえ、このアガリ連荘ルールでそう何度もチャンスが訪れることはないだろう。

次局、テンパイ一番乗りを果たしたのは松嶋だった。役なしのカンテンパイから――

を引いて のフリテン3メンチャンへと変化。松嶋としては、リーチをかけて無防備になり、安達から直撃を受けたくないとの判断からツモアガリに賭けたのだろう。

もう、いつ決着してもおかしくない局面だが、安達はまだターツオーバーという状況だ。純チャン三色という一発逆転の手が見えるが――

もはや悠長に手作りをしている時間はなさそうだ。雀頭固定の切りをチョイスし、最短でのテンパイを目指す。この局面、安達としては一刻も早くリーチをかけて松嶋を下ろし、なおかつアガリ切れる待ち取りにしたいところ。なにしろプリンセスリーグはアガリ連荘ルール。流局、即ゲームオーバーなのだから。

果たして、安達は11巡目に1シャンテンにまでこぎつけた。ドラ含みのリャンメンターツは当然除外するとして、カンとペン、どちらかのターツを外す場面だ。関連牌はが1枚飛び、が3枚、が2枚捨てられている。

安達の選択は――

カン外し! 愛内はダブル役満条件のため場況が不明瞭ではあるが、いずれにせよを使ったダブル役満ほぼ否定されており(ダブル役満は純粋な複合形のみ)、松嶋と杉村ともにピンズの上の切り出しが早めだ。

「ただ、フラットな状態ならペンの方がいいなって思うんですけど、倍満ツモ条件の杉村さんが、私目線からが4枚見えた後にで長考したんです。これはをトイツ以上で持たれている可能性があると考え、それで悩んでいました」

あらゆる条件を加味しつつ、安達が選んだターツ。彼女はその慧眼で――

最高の牌をつかみ取った!

見事な打ち回しで一切の無駄なく最終形にたどり着いた安達。闘華飛翔。自身のキャッチフレーズ通り、大輪の花を咲かせる予感を漂わせたが――

その華が咲き誇ることはなかった――。

松嶋の安堵の表情が、この戦いの際どさを鮮明に物語っていたように思う。

「悔しかった。でも、桃たんが次の半荘(プレーオフ2nd)を打っているのを見た時は、がんばれーっていう気持ちになってましたね」

華は散ってもつぼみはほころぶ。この敗戦を糧にして、安達瑠理華という大輪の花が、次こそ咲き誇ることだろう。

この記事のライター

新井等(スリアロ九号機)
麻雀スリアロチャンネルの中の人。
ナンバリングは九号機。
スリアロでのポジションをラーメンに例えると、味玉くらい。
お酒があれば、だいたい機嫌が良い人です。

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