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ネマタの手組の達人 第20回

ネマタの手組の達人 第20回

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東1局東家6巡目 ドラ

何切るで迷う定番と言えば、「切りたい牌がドラ」問題。シャンテン数に着目すれば、パターン化しづらく、明確な不要牌が無いことが多い2シャンテンが難しい問題になりやすい。また、アタマが無い手牌は、アタマとメンツ、両方の出来やすさが問われることから迷う手牌になりやすいと言えます。今回の手牌はこの3要素を全て兼ね備えた問題です。

回答の過半数がドラ切り。ドラ切りならロスがドラツモのみ。ドラの代わりにイーペーコーが残るから打点もカバーできるという理由で切りで良いと考えた方が多かったようです。

しかし、注意すべきは今回の手牌が、「アタマ無し2シャンテン」であるということ。アガリにまで手数がかかり、受け入れ枚数全体が多いことから、2シャンテンなら1シャンテンの時ほどは、「受け入れを狭めたためにアガリを逃す」ことが少ないのです。

アタマが無いこともドラを残しやすい要因。アタマとターツが両方揃っている手牌であれば、ドラにくっついても1翻アップ止まりになりやすいうえに、くっついたところでシャンテンは進みません。しかしアタマが無い場合は、ドラ重なりでシャンテンが進み、打点は2翻アップ。ドラ重なりで手が進む2シャンテンとなれば、基本的にドラは残すに越したことはないと言えるでしょう。第8回の手牌からドラを切ることとの違いを御確認下さい。

ドラを残すとなれば打か打の比較。これも一見ロスが少ない打が良く見えますが受け入れ枚数差は2枚。どちらかと言えば枚数より受け入れの質に着目するところです。イーペーコーが完成する打ツモと、ドラメンツが完成する打ツモ。イーペーコーもドラも1翻と聞くと一見同じように見えますが…

A

B

手牌Aからを切ると、受け入れこそ8種28枚ですが良形テンパイになるのは4種12枚。しかもツモを切ることになります。ツモで良形テンパイ4種16枚になるうえにタンヤオや高め三色がつく変化もありますが、先にテンパイすることが多い1シャンテンの手変わりなので評価はさほど高くありません。

一方手牌Bの形からは打とする手があります。良形テンパイになる受け入れが6種20枚。ドラからツモればリーチツモで跳満に届くので打点面でも有利。どちらも同じアタマ無し1シャンテン、ドラもイーペーコーも同じ1翻ですが、両者の差は意外にも大きい。マンズが最後まで残った場合も、1枚使いカンと、ドラそばとはいえスジ待ちになるペンではアガリ率に差が出ます。

「ツモアガリ確率計算機」によると、何と打のほぼ下位互換である打ですら、得点期待値で打や打に上回るという結果になりました。

何切る問題で議論になると、「◯◯切りだけは有り得ない」という発言を目にすることがよくありますが、私はこの手の発言をなるべく慎むようにしています。これは何も、「何切るに正解は無いから」「その打牌を選んだ人を否定することになるから」というわけではありません。麻雀は性質上、打牌のいずれかが正解となるゲームでありますし、「◯◯切りだけは有り得ない」という発言自体はあくまで打牌批判であって、人格批判には該当しないと考えます。

その理由は、ミスであることは明確でも、その打牌によってどの程度損するのか。更に言えば、そのミスをした人がどの程度の実力であるかを、人間の直観で推し量るのは極めて難しいためです。今回のように、特定打牌の下位互換が、一見最有力に見える打牌より勝るということさえ案外珍しくはないものです。

実は今回の手牌、私も初見では先入観から打か打で、打は有り得ないとまではいかなくても損ではないかと考えてしまいました。見た目で何となくではなく、一手先の形を評価することを怠ってはならないことを改めて痛感させられました。

次回の問題

 ドラ

この記事のライター

ネマタ
浄土真宗本願寺派の僧侶。麻雀戦術サイト「現代麻雀技術論」の著者。
同サイトは日本麻雀ブログ大賞2009で1位に。
1984年佐賀県生まれ。
東京大学文学部中退。

著書:「勝つための現代麻雀技術論」「もっと勝つための現代麻雀技術論 実戦編

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