将棋棋士には麻雀を好んで打つ人が多い。将棋も麻雀も、大きく分類すれば同じボードゲームである。己の頭脳を駆使して手持ちの札を構築し、時には手札を犠牲にする様は、将棋も麻雀も同じと言えるであろう。そんな将棋と麻雀の両方を愛する代表格の1人と言えるのが、広瀬章人だ。竜王を獲得したこともあるトップ棋士の彼であるが、今や将棋と麻雀と、両方のイメージを持たれているのは興味深い。果たして広瀬の麻雀愛や、その実力はいかほどであろうか。
目次
広瀬章人の基本情報・プロフィールデータ
名前 |
広瀬章人(ひろせあきひと) |
異名 |
穴熊王子、振り穴王子 |
生年月日 |
1987年1月18日 |
職業 |
将棋棋士 |
出身地 |
北海道札幌市 |
趣味・特技 |
麻雀、フットサル、サッカー観戦 |
主なタイトル |
第1回囲碁・将棋チャンネル杯麻雀王決定戦2位 |
経歴
1998年:6級で奨励会入り
2005年:四段に昇段、プロデビュー
2009年:新人王戦に優勝
2010年:初タイトルとなる王位を獲得
2018年:竜王を獲得
2018年に獲得した竜王は、将棋界のスーパースター・羽生善治から奪ったものである。これにより、羽生が27年ぶりに無冠となったのは大きなニュースとなった。また、サッカー好きと聞いて意外に感じる人も多いだろう。小学生時代はサッカーを習い、今でもフットサルを嗜む。好きな選手は元フランス代表のティエリ・アンリ、好きなチームはそのアンリが所属していたアーセナル(イングランド)だ。2016年に一般女性と結婚、2020年に第一子となる長男が生まれたことをブログで発表している。
広瀬章人の活動
2020年度までに、広瀬はタイトルを2期(王位と竜王を1期ずつ)獲得。順位戦A級8期、竜王戦1組以上3期も合わせると、紛れもなく広瀬は現在のトップ棋士の一人である。かつては四間飛車穴熊で勝ち星を重ね、「穴熊王子」や「振り穴王子」の異名が付けられた。しかし、現在では棋風が変化して、必ずしも振り飛車というわけではなくなった。矢倉や現在主流となっている角換わりなども指しこなし、居飛車も振り飛車もできるオールラウンダーとなった。最近の対局で印象的なのは、やはり王将戦の挑戦を決めた藤井聡太七段(当時)との対局であろう。形勢が二転三転する展開となり、残り時間を失った藤井が最後に頓死するという壮絶な大一番となった。その対局は2019年度の将棋大賞名局賞特別賞を受賞している。
広瀬章人のおすすめ動画
おすすめ動画①第1回 囲碁・将棋チャンネル杯 麻雀王決定戦#5
囲碁と将棋の棋士4名ずつが集まり、麻雀の実力ナンバーワンを争った大会。この動画は、将棋棋士4名による予選全4回戦の内の初戦である。広瀬竜王、鈴木大介九段、糸谷哲郎八段、青嶋未来五段(タイトルと段位は収録当時のもの)が出場したこの対局は、広瀬と鈴木が一時ともに5万点を超えるマッチレースとなった。実況が梶本琢程プロ、解説が馬場裕一プロと石田亜沙己プロ(2人は番組の進行も担当)というのも、麻雀ファンにはたまらない組み合わせだ。
おすすめ動画②「鈴木最強位の元へ一歩前進」広瀬章人
広瀬が麻雀最強戦に出場した際の、決勝卓に望む前に収録したインタビューがYouTubeのアーカイブに残っている。かの米長邦雄永世棋聖は、生前に「3人の兄は頭が悪いから東大に入ったが、私は頭が良いので将棋の棋士になった」などという言葉を残した。それを踏まえたと思えるインタビューを、東大卒の最強戦実行委員長・金本晃氏が行ったのは興味深い。また、予選卓には同じく東大出身のQuizKnock須貝駿貴もいた。さすが将棋の棋士と思わせる戦略家ぶりが、短いインタビューの中でも窺える。
広瀬章人と麻雀
広瀬の麻雀愛は、将棋ファンだけでなく麻雀ファンにも知れ渡っている。麻雀最強戦に2年連続で出場するなど、もはや麻雀界からお墨付きをもらったと言っていいだろう。麻雀のルールを覚えたのは高校時代で、ゲームセンターで麻雀格闘倶楽部をやったのがきっかけとなった。早稲田大学に進学すると、ますます麻雀に熱を上げていたようだ。大学の仲間だけでなく、棋士仲間とも打っていたとなると、もはやどちらが本業かわからなくなるほどだ。しかし、初めて将棋のタイトルを獲ったのが大学生時代だというのだから恐れ入る。
広瀬章人の麻雀の実力・強さ
将棋の棋士らしく、広瀬は麻雀も理詰めで打牌を決めている。攻守にバランスを取り、鳴きはあまり使わず、門前で構えることを主とするスタイルを持っている。しかし、時折勝負師の顔が垣間見えるのが面白いところ。1000点クラスのノミ手でも、勝負所と感じれば押していく。逆に国士無双2シャンテンの配牌でも、リードを持つ状況なら無理に狙わない。麻雀界ではおそらく一二を争う雀力であろう。本業を疎かにできないので麻雀の大会出場は限られるが、いつか目立つ戦績を挙げてもおかしくない。
広瀬章人の対局時の様子
麻雀最強戦2020 著名人超頭脳決戦
予選卓には、将棋・囲碁・クイズ・ポーカーを生業とする、いずれも知性を売りとする4人が集められた。東発から続けての満貫2発で広瀬がリードを奪うと、あとは危なげなく場を回し、見事に決勝卓進出を果たす。決勝は広瀬と、もう1人将棋界から香川愛生も進出。作家の宮内悠介と、QuizKnock・須貝駿貴の4人で争われた。オーラスでは上位3人に優勝の可能性が十分にある接戦となったが、最後は宮内が華麗に国士無双を決めてみせた。広瀬は惜しくも3着。わずかに運が向いていなかった。
麻雀最強戦2021 著名人最強決戦
前年に続き麻雀最強戦の著名人大会に出場した広瀬。鈴木大介とともに将棋界からの2人が、やべきょうすけ・本郷奏多の俳優2人を迎え討つ構図となった。棋士が有利に見えた組み合わせだが、そうはならないのが麻雀の面白いところ。やべが大明槓などで場を乱してペースを握り、先に2着以内を確実にすると、残る3人で決勝進出を争うことに。ラス親の広瀬は牌を伏せて終わらせられる着順にいたが、鈴木の豪腕がオーラスで唸りを上げた。広瀬は終始丁寧に打ち回していたが、やべと鈴木の勝負強さに屈した対局であった。
麻雀好きの著名人・芸能人一覧(2020/10/27更新)
SNSでの評価・評判
広瀬の麻雀好きは、特に将棋ファンにはおなじみとなっている。SNSにはそういったことを取り上げて面白がる投稿が目立つ。
いまだ無敗の広瀬章人八段…将棋好きの麻雀勢として本戦も応援してます、お疲れ様でした。
— ジュレーム? (@NKDKn_sTMKK) June 26, 2021
#ABEMAトーナメント
ABEMAで麻雀と将棋のチャンネルは隣り合っていることもあり、両方とも視聴する人はかなりいる。麻雀ファンからも広瀬は愛されているようだ。
今寝起き。黒沢羽生戦はアツい。
— 将棋観戦 (@shogiwatch) June 27, 2020
鈴木大介最強位と広瀬章人戦は麻雀で勝負するんですよね?(違います
鈴木大介と広瀬章人の組み合わせを聞いて、麻雀を思い浮かべるのはもはや定番となった。いっその事、将棋と麻雀の2種目で競う大会を開催してもらいたいと考えるファンもいるだろう。
青嶋未来五段「ちょっと微妙にイーシャンテンくらい」
— みっひー (@Jun_miffy) June 14, 2020
広瀬章人八段「半チャンだと思ってたら」
将棋なのに麻雀用語(笑)?️ pic.twitter.com/BTVIL1qpTH
このチームはドラフト会議のシステムで広瀬が人選したものだが、コンセプトはまさかの「麻雀が好きな人」であった。おかげで将棋番組なのに、麻雀用語が飛び交う事態に。麻雀好き3人のチーム名はズバリ「大三元」。
広瀬章人のニュース・こぼれ話
初の正立会人で緊張?
これまでタイトルホルダー・挑戦者両方の立場で多くのタイトル戦に挑んだ広瀬だが、この程初めての正立会人となった。舞台は第62期王位戦7番勝負第2局で、藤井聡太王位(棋聖との2冠)と豊島将之竜王・叡王が対決するという、将棋ファンならずとも注目のカードだ。その舞台で、広瀬は初めて封じ手を開封するという大役を務めたのだが、緊張のせいかうまくハサミを入れられなかった。親指がやっと入るような小さめのハサミだったことも災いしたのだろう。
第4回ABEMAトーナメントで超早指しの強さを見せつける
スリリングな超早指しの将棋が堪能できるABEMAトーナメントといえば、個人で3連覇している藤井聡太二冠のイメージも強いだろう。だが、広瀬もABEMAトーナメントでの成績は抜群だ。初登場の第3回では7局に出場して6勝1敗、第4回も6月までに放送した分では5戦5勝と、短期決戦への対応力を見せつけている。麻雀も、よほどの長考がない限りは1手に数秒しかかけない。麻雀で培われた判断の速さが、将棋の超早指し対局でも発揮できていると、広瀬を見て強く感じられる。