高校野球の取材をしていたとき、強いチームには、ある共通点があるのに気付きました。
選手みんなが、「一つ先の塁を狙う」意識が強いのです。
例えば、打者がシングルヒットを打ちます。普通は一塁で止まりますが、相手の外野手がお手玉するなど、少しでも隙をみせれば果敢に二塁を狙います。ヒットを打って「やったー」と喜んでいるのではなく、その先を考えているのですね。対戦相手からすると、常に緊張を強いられるので、やりにくいと思います。
麻雀も同じで、手が整ってきても満足せず、常に、少しでも点数が高くなるルートを意識すると、成績が向上します。
打点が高いプロ選手といえば、Mリーグ「セガサミーフェニックス」で活躍する近藤誠一選手でしょう。
Mリーグ2020レギュラーシーズンのデータを見ると、近藤選手の平均打点は8066.66点。全選手の中で1位です。5000点台や6000点台の選手も多い中、群を抜いています。
その思考がよくわかるのが、近藤選手の「麻雀の匠」の第7回です。
手が進み、次のようになります。
ツモ ドラ
3枚目のドラを引いた嬉しい場面。をアタマにしたピンフドラ3がはっきり見えますね。
が不要なので、他家に安全そうなを残してから切るプロも多いと思いますが、近藤選手はから切ります。
その心は、もしを引けば、をアタマにし、を2枚切れば、タンヤオもつくからです。満貫では満足せず、さらに一歩先を見ているわけです。
この後は、思わず声が出る結末が待っていますので、ぜひご覧ください。
この近藤選手の判断は、打点を求めるかわり、安全度を少し犠牲にしていますので、すべての人にとって正解かはわかりません。一流プロ選手の中でも、スタイルによって、異なる判断をする人もいそうです。
ただ、少しでも打点を高くする意識は、勝ちきるためには必要なものです。「どうも、自分の攻撃はパワー不足だなあ」と感じている方は、近藤選手の放送対局や牌譜を見ることをおすすめします。
では、打点アップが期待できる、よく遭遇する場面を紹介していきましょう。
1)タンヤオに近づける
ツモ
を残してを切ると、タンヤオになることが期待できます。
2)サンショク(三色同巡)に近づける
ツモ
を切ります。次にを引けば、456のサンショクが期待できます。また、345のサンショクになる可能性もあります。サンショクは難しい役ですが、メンゼンでできると2ハンで、強いパワーを持っています。
3)イーぺーコーに近づける
ツモ
を切ると、ピンズは になります。次にかを引けばイーぺーコーができます。
4)イッツー(一気通貫)に近づける
ツモ
を切ると、次にを引くとイッツーができます。これは比較的わかりやすいですね。この形ですと先にが入った時には三面張でリーチすることになるので、先にを切らないという意識をしておきましょう。
5) チャンタや純チャンに近づける
ツモ
チャンタになりそうな手です。を切ると、次にを引いたとき、可能性がぐっと大きくなります。があるルールだと、チャンタを狙う場面は多くないですが、メンゼンでできると2ハンなので、大物手につながりやすい役です。
6)ドラに近づける
ツモ ドラ
を切ると、ドラを使えるチャンスが生まれます。
があるルールだと、一般に、牌を真ん中に寄せていくと、これら赤牌のドラを使えるようになります。
7) カンを意識する
ツモ
カンチャン待ちのテンパイで、リーチをかけていない場面だとします。もし、場にが切られていて、はまだ見えていない場合、を残してのどれかを切る手があります。もし4枚目のを引けば、カンをして打点が増えるチャンスがあるからです。
同じ牌を4枚引く可能性は大きくはないですが、カンドラや、リーチ後のカンウラのドラが期待できます。まれに、カンした4枚の牌がすべてドラになり、一気に跳満や倍満に育つこともあります。
カンすると、他家の3人の手にもドラが増えてしまうリスクがありますが、自分が高打点が欲しいときには、有効な手段です。
なお、自分がポンした牌も、4枚目を引けば加カンすることができます。ポンした牌は、右手前に置いて視界から消えがちになるので、4枚目を引いたときに、気付きにくいときがあります(私もつい先日、見落として痛い思いをしました)。ポンしたときは、4枚目を引く可能性があるのか、引いたときは加カンするかを考えておきましょう。
8) 裏ドラがのる可能性を増やす
ツモ
もし、場にが4枚とも切られており、は1枚も見えていないとすると、を残して、を2枚落とすことを考えます。将来リーチをかけてアガれた時、が裏ドラになる可能性がないのに対し、は裏ドラになることが期待できるからです。
アタマが裏ドラになると、一気に2ハンあがりますから、その可能性は常に確認しましょう。
9) 符ハネを意識する
少し応用編ですが、30符から40符になるだけでも、その効果は軽視できません。例えば、子の30符3ハンは3900点ですが、40符になると5200点で、1300点も違います。例えば、次のような場面を考えます。
ツモ ポン
を残し、かを切ると、打点アップのチャンスです。
とをポンしているので、それぞれ4符で、合計8符あります。さらにもポンできると、合計12符になって、副底の20符+12符=32符。つまり40符3ハンにアップグレードします。
一方、かをポンしても2符しかつかないので、30符のままですね。
さて、偉そうに書いてきましたが、先日、先輩選手たちとの対局で、恥ずかしいミスをしたので、自戒をこめて紹介しましょう。
ツモ
三面張の絶好のテンパイですね。
が、私はここからを切ってしまったのでした。
という形が頭の中にあり、そこに余っているを手拍子で切ったわけですが、この形だと、正解は当然切りです。
タンヤオになりますし、を引けばイーぺーコーですからね。
結局をツモったのですが、私の手を見た3人は「なんでそこからを切るんだ…?」とけげんそうな表情をして、いたたまれない気分になったのでした。。。反面教師にして頂ければ幸いです。
自戒は、、、ではなく次回は、「トイツの数をチェックしよう」というテーマでお届けします。