今週、eスポーツのプロ、ぴぽにあ選手とお会いする機会がありました。
活躍する舞台は「ぷよぷよ」。1991年の発売以来、30年以上、多くの方に親しまれているパズルゲームが、近年、2人で対戦するeスポーツとしても盛り上がっているのです。一度、YouTubeで「ぴぽにあ」で検索してみてください。
1日十数時間練習する時があったり、大会前には肉を食べたり、トッププロとして活躍を続けるための工夫をうかがうとともに、「ぷよぷよ」と麻雀の共通点も多く教えていただきました。
一つは、不確実性があり、運に左右されること。
このゲームは、カラフルな「ぷよ」が落ちてくるのを組み合わせて消します。うまく積めれば、一気にいくつも連続で消せる「大連鎖」ができて、勝利に近づきます。ただ、どの色の「ぷよ」が落ちてくるかはランダムです。そのため、「ツモ」という用語が使われ、イメージ通りの色が落ちてくることを「神ツモ」と言うそうです。
そして、どんなツモが来ても、ある程度対応できるよう積むことを「受けを広くする」といいます。これも麻雀と同じですね。
つまり「ぷよぷよ」の基本戦術の一つは、「将来どんなツモかは不確実だが、平均すると勝率が高そうな積み方をする」ことです。やはり、期待値を重視する麻雀と共通しています。
二つ目は、ライバルとの駆け引きです。
プレー中は、対戦相手の状況も同じ画面で見られるので、自分の「ぷよ」を積むと同時に、相手の状態も分かります。「ぷよぷよ」では、相手に「おじゃまぷよ」を落として邪魔する攻撃手段があります。そのため、途中で攻撃して相手の狙いを封じることもできますし、攻撃されることを予測し対応することもできます。
これも、他家の切り方や鳴き方に対応する麻雀と似ていますね。
多くの人々に長く愛されるゲームには、駆け引きのバランスの面白さがあると感じます。
この連載では、一般的なセオリーを紹介していますが、どんなセオリーにも、その裏をかく戦術があります。
例えば、「スジは比較的安全」ということは広く知られているため、あえてスジで待つことがあります。
卓上でヨシ!麻雀暗記ノート 第48回 ノーチャンスとワンチャンス
第48回で紹介したワンチャンスやノーチャンスを頼る人が多ければ、あえてその牌で待つことが有効なときもあります。例えば、が4枚河に見えているときに、やのタンキ待ちでリーチをかける、などですね。
卓上でヨシ!麻雀暗記ノート 第56回 高そうな他家の仕掛けに振り込まない
同様に、前回紹介した「高そうな他家の仕掛けに振り込まない」セオリーにも、それを利用する戦術があります。
「高そうな仕掛けに見せて、他家の手を止める」のです。
前回も紹介した矢島亨プロの「高打点鳴き麻雀」(マイナビ)には、第19回雀王決定戦で、堀慎吾プロが行った仕掛けが紹介されています(p160「ドラを鳴いてプレッシャーをかけろ」)。
東3局の4巡目で、西家の堀プロが、この手からドラのをポンします。
普通は、ここでオタ風のをポンしても、役が確定しないので、鳴かないことも多そうですね。トイツが多いので、鳴かずにチートイツドラ2を狙う方法もあります
ポンすると、トイトイを狙うか、無理やりピンズかソーズのホンイツを狙うかしかありません。
しかし、ドラをポンして満貫が確定した人に、他家が簡単に手を進めさせるとは思えません。
が、堀選手にとっては、それこそが狙いでした。他家が3人ともオリれば、失点する可能性はなくなるからです。そのうえで自分がテンパイすれば、1人テンパイで、テンパイ料3000点を加点できます。そして、実際にその通りになりました。
もちろん、をポンした後、神ツモが続いてアガれれば最高ですし、そうでなくても十分、という思考なのです。
また、この時点で堀選手はトップ目でした。つまり、親をオリさせれば、親が流れて局が進むことも嬉しいんですね。
もし劣勢であれば、鳴かずにチートイツドラ2を目指し、逆転を狙う手もあったかもしれません。
2022年1月に出版されて話題の、園田賢プロの「魔術の麻雀」(彩図社)にも、必ずしもアガリを目指さない仕掛けの例が多く紹介されています。
Mリーグの一戦で、西家の園田プロは、1巡目にこの手からをポンします(p94から引用)。
マンズとピンズの形が悪くないため、鳴かずにメンゼンで進める人も多そうですが、園田プロは「このあともも鳴きやすく、もし3つポンできれば他家に威圧感を与えて止められる」と考え、仕掛けたのでした。
そして、実際に
ポン ポン ポン
となります。まだアガリには遠いですが、他家には分かりません。
こうなると他家から見ると、ホンイツ、トイトイ、ホンロウなどの可能性があるので、一九字牌やソーズを全部切りにくくなるんですね。
また、この時園田プロが、2200点持ちのラス目だったこともポイントです。ラス目の人が、西のみの安い手でアガるとは考えにくいですし、ラス目に振り込むと自分がラスに近づいてしまいます。自分の手が良形高打点なら勝負する価値がありますが、そうでなければ、割に合わないですよね。
他家3人の動きを封じれば、こんなに楽なことはありません。悠々と自分のツモを繰り返せばよいだけです。1人テンパイでも3000点ですし、アガれる可能性も高まります。園田プロはこの局、、ホンイツ、トイトイ、ハイテイをツモって跳満に仕上げています。
鳴くか鳴かないかは、鳴くときにどう鳴くかは、打ち手の個性が際立つポイントの一つです。Mリーグのレギュラーシーズンを3年分まとめたデータでは、園田プロの副露率が31%を越える一方、黒沢咲プロの副露率は10%強で、実に3倍もの開きがあります。
【Mリーグ個人副露データ】副露率は園田、小林、石橋が上位、雷電の選手はチームカラー通りの副露率の低さに!【データから見るMリーグ #22】
このような選手の個性を踏まえながら放送対局を見て、「普段よく鳴く人だけど、ここはメンゼンで行くのか」「めったに鳴かない人がチーしたけれど、どういう狙いだろう?」なとと考えるのも面白いと思います。
次回は、「序盤から守り気味に打つ方法」をご紹介します。