第三章 フーロ
(4)「アガリまで近いので、できれば高打点の手にしたいから1枚目はスルー」。「アガリまで遠いので、守備力を下げたくないから1枚目はスルー」。どちらもよく聞く言葉です。
前者については、「役牌アンコや、役牌トイツと何かのシャボでリーチが打てる可能性が残るうちはスルー有利」であれば、1枚目はスルーして2枚目は鳴くという選択が有効ですが、「勝つための現代麻雀技術論」講座22でも取り上げましたように、役牌ポンでテンパイに取れる完全1シャンテンという、メンゼンでかなりテンパイしやすい形でさえ、役牌をスルーした方が局収支で勝るケースはかなり早い巡目に限られます。
後者については、守備力の低下が気になるなら、役牌を鳴いたうえで安牌を残すように打った方が、少なくともスルーするよりはアガリ率で勝りますし、それでも守備力が不安なほどアガリに遠く安牌を抱えるのも難しい手牌、局面であれば、そもそも2枚目が出たところでスルーすべきですから、結局、役牌を2鳴きするのが最善であるケースというのは極めて限られていると言えます。
ただし、1枚目から鳴くべき手牌を何らかの理由でスルーしてしまった場合、鳴くのは一貫性がないからという理由で2枚目をスルーすることはありません。確かに今回は、「他家からみて安手と読まれやすい」ので、過去の出来事が影響していないわけではないですが、2枚目も鳴かなかった時点でアガリ率は大きく落ち、その分攻め込まれる可能性も上がる以上、昔の戦術書で書かれていたような、「舐められて攻め込まれやすくなる」から鳴かないというのはナンセンスな考えでしょう。
今回は役牌トイツという、鳴くと役有りが確定し、スルーした場合は最後の1枚を引かなければ役がつかない面子候補だったので、「2鳴きは有効でない」という結論になりましたが、「鳴くと他で役をつける必要があるが、2枚目もスルーしてしまうとそこを面子にすることが極めて困難になるのでアガリ自体が厳しくなる」場合は2鳴きも有り得ます。具体例を挙げると長くなるので、別の機会にまた取り上げようと思います。
(5)本で出てくる牌姿を便宜上手牌A,B,Cとします。手牌Aは3メンチャン+役牌同士のシャボの1シャンテン。メンゼンでテンパイした時も確実に役牌の1翻がつくので、役牌含みの完全1シャンテンよりスルー側がだいぶ有利になりますね。このような手牌にはなかなかならないとはいえ、大抵のケースで1鳴きが有利だからこそ、実戦では例外形を見落とさないようにしたいものです。
手牌Bはくっつき1シャンテン(面子候補不足)。そもそもスルーした場合はリーチがあるので打点的にはっきりスルー有利ですが、これくらいならアガリトップでもスルーした方があがりやすいでしょう。良形+悪形の2面子形1シャンテンの場合とは全然違いますね。だからこそ、「基本は4面子1雀頭」なのです。
手牌Cは打点差が非常に大きいケース。この手の鳴き判断については、「もっと勝つための現代麻雀技術論」でもいくつか取り上げていますので、そちらもご参照下さい。
本記事に関するご紹介
ツキ、流れ、勢いといったあいまいな表現を嫌ってきた著者の明晰な頭脳で、麻雀を論理的に限界まで語りつくされてます。