第三章 フーロ
(2)「鳴かないと間に合わない」。鳴くべきかどうかの理由としてよく使われる言葉です。確かに、4面子1雀頭の候補が揃っていて、鳴いても手役が残る手牌であれば、シャンテン数が進む牌は全て鳴くのがアガリ率を最も上げる選択です。しかし、テンパイまで遠い手ほど、「鳴いても間に合わない」ことが多く、「降りたいけれど安牌が少なくて降りるのが難しい」ことになってしまう場合もあります。
また、テンパイまで遠ければそれだけシャンテン数が進むツモも多いので、「鳴かなくても間に合い、しかも鳴いた場合よりテンパイ時の待ちや打点で勝る」こともあります。どうせ鳴くことになるからという理由で手が進む牌は何でも鳴きがちな人も、「鳴いた時と鳴かなかった時の比較」であることを今一度意識されることをお勧めします。
ただ、「すぐリーチがかかったら困るなら鳴かない」というような、都合が悪いことが起こることを前提にしてしまうのも今度は引き過ぎになりがち。「中盤以降、あと1枚引けば、その後はリーチがかかっても当分押し続けて悪くない」程度の手牌になるようなら、鳴くことで降りるのが難しくなっても鳴くというのを私は目安にしています。
(3)後の項目で、「ポンテン、チーテンを取らないケース」としてフォローがありますが、メンゼン手であればリーチで更に高打点が狙えるので、「リャンメンから鳴くくらいならスルーして当分はメンゼンテンパイを目指す、次巡以降も鳴ける牌が出た場合はその時また考える」方がよい場合は珍しくないので、「ポンテン、チーテンは必ず取れ」というには、見出しの分かりやすさを重視しているとしてもいささか言い過ぎに思えます。
このあたりの基準については、「もっと勝つための現代麻雀技術論」第94回から第99回を中心に取り上げております。私は問題の牌姿については、リャンメン+カンチャンの方は6巡目ならリャンメンを鳴くかは微妙なところ、スルーするなら次にリャンメンが鳴ける場合は鳴き、リャンメンが3メンチャンになった方については3メンチャン側からはスルー、10巡目くらいなら鳴くというところでしょうか。
勿論これはメンゼンテンパイならリーチで点数を上乗せできるというメリットがあるからであり、既に鳴いている場合、点数状況的に打点を上げるメリットが薄い場合は良形からでも鳴きます。以前は打点が関係ない場合でさえ、リャンメンからは鳴かないという主張が珍しくなかったこともあるので、このような仕掛けに抵抗がある方も多いと思われます。どんな手牌、局面の時に、「良形からは鳴かない」のか、あくまで損得を追求したうえで判断していきたいですね。
本記事に関するご紹介
ツキ、流れ、勢いといったあいまいな表現を嫌ってきた著者の明晰な頭脳で、麻雀を論理的に限界まで語りつくされてます。