当レビューは書籍の内容に関するネマタ氏が当書の回答に異論があるもの、追記事項があるもの、または更に掘り下げたい部分等を取り上げます。姿牌、局面については書籍を購入してご確認下さい。

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第2章　スタンダードな押し引き

3.浮き牌

①押し枚数とシャンテン数

はかなり通りやすい牌ですが、を押してリャンメンが出きて1シャンテンになったところで、無スジを押すのが得策と言えるかは微妙なところ。それならこの段階で先に安牌のアンコ落とし。アガリ目も残るのだからなおさら安牌から切った方がよいと考えられます。

聴牌するまでに押す牌の放銃率が「意外と認識されていない」とありますが、「どの程度の手なら押すか」という基準も確立していなかった頃はむしろ過大評価されていたように思われます。押し引き基準がある程度浸透したが故に、判断が微妙なケースにおいては、押す牌の放銃率を意識することの重要性も再評価されるようになったというところでしょうか。ワンランク上の押し引き判断を身につけたいのであれば避けて通れない道と言えます。

②後ポン

先行リーチ者に通ってない牌を切ってきた他家に対しては、「この牌を切って聴牌していないことがどの程度あるだろうか」を考えるようにします。そうすることでリーチの現物を切ったら別の他家に満貫放銃といった損失を防げる場合もあります。

ただし、単に無スジを押してきただけなら、①勝負に見合う1シャンテン②勝負に見合うかは怪しいが安牌が少ないのでやむなく押した③安牌が少ないので通った時の安牌水増しを意図したもの④手牌と合わせると比較的安全と分かる牌だった　このように聴牌以外から切られるケースも多くあります。必要以上に他家聴牌をケアすると、①のケースから聴牌した時に安牌に窮して振り込み、あるいは先行リーチに対するベタオリをミスして振り込んでしまうといったリスクを負う恐れもあります。

しかし、後からポンしてきたとなると、②③④のケースが否定されるので、今回のような①のケースでなければ聴牌である可能性が高いということ（終盤なら安牌豊富な他家の形テン狙い、ツモ番ずらしも有り得る）。場合によっては先行リーチ以上に仕掛けをケアすることもあるでしょう。

③後手のみなしシャンテン数

この牌図を見て、天鳳のサービス開始が始まって間もない頃に麻雀コミュニティで出題された問題を思い出しました。当時の私は、安牌を切っても1シャンテンに取れるなら何も悪いことはないと判断して打に相当する打牌を選びましたが、実戦慣れしている強豪雀士はいずれも打に相当する打牌を選択。最初は打牌意図が分からず、先にを引いて聴牌を逃すのが痛いのではと考えてしまいましたが、より先にを引くことの方がずっと多く、その時は聴牌だったとしてもを押すに見合わない手。それなら先にのトイツから落としていた方が、引きから押し返すに見合う聴牌に復帰しやすいので有力ということです。

今となっては「条件付き牌理」の考え方も、ある程度実力のある打ち手の中では「常識」となった感がありますが、Suphxが事も無げにシャンテン戻しを選んでいるのはかなりの衝撃。AIもついにここまで来たのかと改めて驚かされました。

世界最強麻雀AI Suphxの衝撃

世界最強の麻雀ＡＩを人間のトッププレイヤーが本格解説！

2019年6月、麻雀ＡＩで初めて天鳳十段に到達し話題をさらった「Suphx」（スーパーフェニックス）。

天下のMicrosoft社が麻雀という不完全情報ゲームに殴り込みをかけてきたのです。「Suphx」の強さはもはや人間のトップレベルに達しており、他のボードゲームがそうであるように、麻雀も「ＡＩから学ぶ」時代に突入しつつあります。

本書はその端緒となるもので、最強のＡＩである「Suphx」を人間界のトップといえる天鳳位を獲得したお知らせ氏が徹底的に解説するのものです。

お知らせ氏の筆致は処女作である『鬼打ち天鳳位の麻雀メカニズム』で証明されたように緻密にして正確無比。「Suphx」の打牌を咀嚼し、人間の知として昇華する上でこれ以上の適任はいないでしょう。

ぜひ本書で「Suphx」の強さの秘密と、麻雀というゲームの深淵を味わってください。

●目次
第1章　強くなること
第2章　スタンダードな押し引き
第3章　中盤のスリム化
第4章　序盤の方針

●著者プロフィール
1989年9月18日生まれ。
神奈川県横浜市出身。東京大学工学部卒。
第14代四麻天鳳位。
著書　「鬼打ち天鳳位の麻雀メカニズム」（マイナビ出版）

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