戦術本レビューで『ウザク本3』のレビューを本日より開始しましたが、ウザク氏本人から章末の4コマ漫画のレビューも依頼されたので、こちらで取り上げることにいたします。
第1章
メンツオーバーという言葉。オーバーしているのはメンツではなくターツなのだから、ターツオーバーが正しいのではないかと違和感を覚えたものです。
しかし日本語には、「お湯が沸く」「ご飯が炊ける」という表現もあります。正確には「水が沸く」「米が炊ける」ですが、未完成品を完成させるという変化に注目するか、完成した結果に注目するかの違いなのでどちらも誤りではありません。麻雀用語としては他に、「くっつきテンパイ(くっつき1シャンテン)」という表現があります。
平場が本来「0本場」の意味を指していたというのは私も最近になってから知りました。現在のルールはリーチ麻雀が普及した頃に比べると点数がかなりインフレしていることは以前取り上げましたが、リーチ棒が1000点になったのもリーチが導入されてからしばらく経った後の話で、当初はリーチ棒100点、ノーテン罰符が300点、積み棒が300点だったそうです。
それからリーチ棒とノーテン罰符は点数のインフレ化にともない10倍になりましたが、積み棒だけは何故か300点のまま。積み棒がゲームに与える影響がかなり小さくなった以上、0本場をわざわざ「平場」と呼ぶ必要性が薄くなり、いつしか「平場」の意味が「点棒があまり動いていない場」を指すように変わっていったものと思われます。
麻雀用語の統一は私も望むところですが、そもそも言葉というのは複数の意味を持つのが普通です。意味が複数あっても、文脈から何を指しているのかが互いに共有出来ていれば特に問題ありません。上二つのようなケースについては、あえて統一する必要性も薄いと考えます。
しかし、麻雀用語としてかなり浸透しているにも関わらず、意味が多義的なうえに麻雀打ちの間で共有されていない言葉もあります。その最たるものが、本書のタイトルにもある、「牌効率」でしょう。本書における「牌効率」の意味合いは巻末で説明されています。麻雀用語としてかなり浸透している言葉が出てきた方が受け入れられやすいので、意味を説明したうえで「牌効率」という言葉を用いるというのも一つの手です。
ただ、麻雀界は誰にとっても広く、集団を超えたつながりが希薄な世界。麻雀本としてはベストセラーになっても、その本で用いられている麻雀用語の定義が全体に浸透することは考えにくいです。むしろその本の読者と非読者の間でなおのこと見解が分かれる恐れもあります。
よって個人的には、意味が多義的かつ共有されていない言葉は用いず、代わりに見解が分かれにくく、読者にあまり違和感のない言葉で説明できる方が望ましいと考えます。そのこともあり、『現麻本』では牌効率という言葉を使わず、「手作り」で統一しました。
牌効率という言葉が定着したのは、いかにも麻雀用語らしく、麻雀の奥深さを感じさせられる…くだけた表現をするなら、単に何となくカッコいいからに過ぎないような気もします。そう考えれば「ヤバい」を「ヤバた※えん」と表現するのと、あんまり変わらないのかもしれませんね。