見た目枚数は少ないけれどきっと山に残っていると確信したリーチが空振り。おかしいなと思って確認したところアガリ牌は全部王牌。麻雀を長く打っていれば珍しくないことですが、その度に、「王牌なんて無ければいいのに」「そもそも何の為にあるのか分からない」という気分にさせられる方もいるのではないでしょうか。
王牌が存在する理由については、実は明確には分かっていないようです。名前からして、「王様の手牌として14枚残してある」という説がしっくりくるとはいえ特に根拠があるわけではないようです。そもそも「王牌は常に14枚残し」というのも特に合理的な理由があるわけではなく、以前はカンが起こるたびに王牌の枚数が増えるルール(増え方も様々)で遊ばれることもあったようです。
私はカンが4回まで出来るので嶺上牌が4枚。ドラ表示牌が最大で5枚までめくれるので、表と裏を合わせて10枚。合わせて14枚だから合理的なのではと思ってしまいましたが、そもそも中国古典の麻雀から王牌は14枚で、当時カンドラはおろかドラ自体が存在しませんでした。(ドラが採用されるようになったのは昭和20年以降の日本での話。第1回の話に戻りますが、現在ではリーチ同様当たり前に受け入れられているドラも実は日本発祥のものだったのです。)
王牌は中国古典の麻雀から存在しましたが、現在の中国麻将には存在しません。日本麻雀についても、王牌を廃止しようという動きがありました。提唱者はリーチ麻雀を定着させた天野大三氏。
「最後の1枚までツモったほうがフェアでスマートなゲームになる」。確かにその通りだと思いますが、王牌廃止論は結局受け入れられることはありませんでした。原因はおそらく提唱時期でありましょう。リーチ麻雀の提唱は報知ルール、昭和27年のことでしたが、こちらは新報知ルールが発表された昭和53年の話。昭和53年ともなれば、裏ドラ、カンドラ有りのルールが一般的になっています。麻雀に限らず点数を競うゲームは時代を経るにつれ得点がインフレ化することが多いですが、その逆はなかなか受け入れられないものです。王牌の14枚が嶺上牌とドラ牌に対応しているのは結果論とはいえ、王牌にもゲーム進行上十分役割がある以上、廃止するというのも違和感があったというのもありそうです。
もし王牌廃止論が、新報知ルールが発表された昭和53年ではなく、報知ルールが発表された昭和27年の時点で提唱されていたら、現行の麻雀ルールに王牌を用いないものになっていたのか、それともなおのこと反発が強まり、リーチ麻雀自体も普及していなかったのか。たらればを言っても仕方が無いですが、やっぱり気になってしまうのであります。